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俺の言葉に、陽子は驚いたようだ。


頬を赤らめ、困ったような顔をしている。


俺は、直感的に感じていた。


陽子は、見た目ほど遊んでいない。


俺は、そのことが嬉しかった。


男は、わがままだ。


自分がいくら遊んでいても、女にはそうして欲しくない。


そして、できることならば処女性を求めてしまうのだ。


俺は、何も知らない女を自分好みに育てるのが好きだ。


恭子とは、そんな感じだった。


そして、沙樹子ともそうだった。


しかし、気を付けないと、必ず女に逃げられてしまうパターンでもある。


俺は、もう失敗したくはない。


陽子は、相変わらずなんと答えたら良いのか迷っているようだ。


俺は、陽子をゆっくりと優しく抱きしめた。


「大丈夫。キミを大切にするから。俺だってキミが嫌がることなんてしないさ」


陽子が、ゆっくりと俺の目を見つめる。


そして陽子は、ついにゆっくりとうなずいた。


俺は、久しぶりに緊張していた。


胸が、ドキドキする。


俺の腕のなかに陽子がいる。


それだけで、どうしてこんなに幸せなんだろう?


俺は、その事実が怖かった。


そんな当たり前のことに、いまさら気付くなんて…。


97


俺と陽子は、店を出て要町に向かって歩く。


陽子の部屋は、池袋と要町のちょうど真ん中あたりにあるらしい。



俺たちは、どちらともなく自然に手をつないでいた。


歩調を合わせて歩く。


俺は、いつもは、かなり早足な男だ。


しかし今は、自然に陽子のペースに合わせてゆっくりと歩く。


そんな小さなことが、幸せに感じられた。


俺は今まで、もしかしたら本当の恋愛をしてこなかったのかもしれない…。


自分の気持ちに正直に、と言いながら、実は単に自己中心的に女に接してきただけなのかもしれないと感じていた。


並んで歩く陽子を見る。


陽子は、照れたように微笑み返してくれる。


その笑顔に、俺の胸は高鳴った。



横断歩道を渡ろうとしたとき、信号が赤に変わった。


歩いていた俺たちは、一緒に歩を止める。


俺は、右隣にいる陽子の方を向く。


小首を傾げる陽子が、たまらなく愛おしい。


俺はそのとき、もう一度愛することを始めてみよう、と決心した。


陽子を抱きしめる。


冷たい風が俺たちを包む。


しかし、今はそれさえも心地良い。


俺は、陽子の目を優しく見つめる。


陽子も、俺の目を見つめ返す。


俺たちの唇が初めて触れ合ったちょうどそのとき、信号が青に変わった。