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「ねぇ、陽子って血液型、何型?」と、俺はストレートに聞いてみた。


「内緒。うふふ。何型だと思う?」と、陽子がいたずらっぽく言う。


「でもさ。俺思うんだけど、たった4つのパターンに分類するのって無理あると思うんだよね」


陽子は、軽くうなずきながら、俺の話を聞いている。


「たぶん、みんな無意識のうちに、自分の血液型ぽい行動をしてるんじゃないかと思うんだよね。だから、なんとなく当てはまってしまうんじゃないかな?」


俺はそんなことを言いながら、自分自身が可笑しかった。


血液型なんて、ホントはどうでもいいようなことを気にしている…。


そんな呪縛に陥っているのが、俺なのだ。


俺は、ズバリ言った。


「O型だろ?陽子」


「残念でした!B型だよ~」と、陽子は楽しそうに言った。


マジかよ!


俺には、ショックな言葉だった。


世の中、そんなに上手くは回らないのだ、やっぱり…。


「ひろさんA型でしょ?分かりやすいもん」と、陽子は言った。


俺のガッカリした気持ちが、分かったらしい。


「ごめんなさい!ホントはあたし…O型だよ。今までA型の人と縁がなかったんだけど…」


陽子は、頭のいい子だ。


「やっと出逢えたかも…」


そう言って微笑む陽子に、俺の心は激しく揺れていた。


93


俺は、久しぶりに本気になりそうだった。


陽子は、名前の通り太陽のような子だ。


しかし…。


俺は、愛することをやめたのだ。


俺は、今までの女とのことを考えていた。


俺は、好きになりすぎてはいけないのだ。


好きになればなるほど、判断力が鈍る。


そして、悪循環が始まる。


その結果、女は逃げて行くのだ。


何事も、適度がいい。


そのためには、あえて好きになりすぎないほうがいいのだ。


しかし、俺はもう、どうしても陽子が欲しかった。


欲しくてたまらなかった。


感情をコントロールするのは、とても難しい。


しかし俺は、努めて冷静に事を進めることにした。


俺は、優しく陽子の目を見る。


じっと見つめる。


ひとつ大きく息を吐いて、陽子にこう告げた。


「キミのことをもっと知りたい。俺も…O型の女を捜していたんだ。だから…」


陽子は、顔を赤らめながらも、熱い視線を俺に向けていた。


落ちたな…。


俺は心のなかで、小さくガッツポーズをした。



俺たちは、ロイホを出て池袋に向かう。


陽子はその日、午後からマネキンのバイトがあるらしい。


俺は、陽子を家まで送った。


そして、そのままバイバイした。


陽子と、ちゃんと向き合ってみよう。


俺は、そのときそう思ったのかもしれない。