68


栞からの手紙には、俺にとって辛すぎることしか書いてなかった。



栞は、生理も止まるほどに体調を崩していたという。


そして、病院での本格的治療を始めることになったようだ。


そして何よりもキツかったのは、栞が俺のことを、本当は好きではないと書いたことだった。


俺は、その事実に愕然とする。


先輩が忘れられず、その代わりを俺に求めていただけだったのか?


俺は、唯一信じられる存在であった栞にも、裏切られてしまったのだ。


俺にはもう、何もなかった。


大切にしようと思った、沙樹子も失おうとしている。


沙樹に対する、後ろめたさもあった。



俺はもう、ボロボロだった。


俺は、狭いソファーに寝転がって栞の手紙を見つめる。


そして、それを破き始めた。


クリスタルの灰皿の中で、その手紙を燃やす。



灰になっていく栞の手紙を見ながら、俺はまた、昔の俺に戻っていた。


そう。


恭子に捨てられた、あの頃の俺に…。


ただ無気力に時を過ごすだけの、俺に…。


ただ少し違っていたのは、女への復讐心のような感情が芽生えていたことだ。



俺は、もう誰も愛さない。


誰も、信用しない。


信じようとするならば、己の感情のみだ。


俺は、ずっと思い出さないようにしていた恭子とのことを思い出しながら、冷淡になっていった。


そして俺は、恭子に逢ってみようと考えた。


俺は、いままでの俺とは違ってしまっていたのだ。


69


俺は、久しぶりに恭子に電話をかける。


およそ一年ぶりのことだ。


俺は、電話の呼び出し音を聞きながら、恭子のことを考える。



恭子と初めて出逢ったのは、学生時代のことだ。


もう6年にもなるのか…。


サークルの後輩として現れた恭子に、俺は最初、特別興味はなかった。


まぁ、かわいくないわけではないが、どちらかといえば地味すぎる感じの子だ。


正直、タイプではない。


まぁ、どうでもいいヤツだった。


しかし、恭子のほうは、そうではなかったようだ。


飲み会の度に俺にまとわりつき、俺のアパートに泊まっていく。


俺は恭子に、別段女としての興味がなかった。


しかし、ある夜のことだった。


いつもなら、何人かいるはずの俺の部屋に、初めて恭子とふたりきりになった。


恭子はいつものように、酔っ払っていた。


「ねぇ先輩…。あたしとシタくない?」と、恭子は言った。


「いや、別に…」と、俺はとぼける。


しかし、若い男には毒な言葉だ。


「先輩。たかがセックスだよ。意気地がないんだね…」


俺は、その言葉にキレた。


そしてその夜、俺は恭子を抱いた。


しかし、恭子はそれが、実は初めてのことだったのだ…。