66
新宿西口交番前は、待ち合わせの若者で溢れていた。
待ち合わせの時間まで、あと35分。
この前のように、栞は早く来るかもしれない。
俺の胸は、高鳴った。
早く、栞に逢いたい。
しかし、待ち合わせの時間を過ぎても、栞は現れなかった。
30分を過ぎて、さすがに不安になる。
何かあったのだろうか?
栞の家に電話しても、ただ呼び出し音が鳴るばかりだ。
時間ばかりが、ただ過ぎていく。
俺の留守電もチェックするが、やはり何もメッセージはない。
俺は、それでも栞を待ち続けていた。
ロレックスの針は、午後5時を指す。
もう栞が来ないことは、分かっていた。
たぶん、特別何かが起こったというわけではないのだろう。
そんな気は、していた。
それでも俺は、栞を待ち続ける。
それは、自分の罪に対する贖罪の気持ちからか。
それとも、ただの意地だったのか…。
その日、ついに栞は来なかった。
俺は、割り切れない気持ちだった。
最後の最後で、やはり女はみんな、俺から離れて行ってしまうのだろうか?
新宿の街が、涙ににじんで見えた。
そして俺は、このときから、少しずつ狂い始めていたのかもしれない。
67
俺は、すべてに裏切られたような気持ちになっていた。
しかし、決して栞を責めることはできない。
この結末は、仕方ないことだと理解していた。
しかし、このどうしようもない気持ちは、どうにもやり場がなかったのだ。
それからの俺は、独りで過ごしていた。
仕事はちゃんとやるが、それ以外には何もやる気が起きない。
ただ、無気力に時を過ごす。
そんな日々が続いた。
そんなある日、栞から手紙が届いた。
俺は、その手紙を読むべきか、そのまま捨てるべきか悩んだ。
もう忘れてしまったほうが、楽なのかもしれない。
どうせ、もう栞とは二度と逢うことはないのだ。
そんな風に考えられるようになって、少し気が楽になった。
そして俺は、ついに栞からの手紙の封を切る。
栞からの手紙…。
俺は、自分の不甲斐なさと、力のなさに愕然とする。
人の心は、一体なんなのか?
それは、決して理解できないものなのか?
それは、自分自身でさえも、そうなのだ。
自分の気持ちでさえ、分からないものなのだ。
俺は、沙樹に振られて以来の激しい涙を流していた。
それは、女に対する絶望感からだったのかもしれない。