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栞は電話に出ない。


何回かけても同じだ。


俺は、栞からの手紙をもう一度読み返してみる。



お兄ちゃん、ごめんなさい。


栞は、もうダメかもしれません。


あれから、何も食べられなくなってしまいました。


食べようとしても、戻してしまって。


でもね、これはわたし自身の問題で、わたし自身が解決しなければならないことだと分かっています。


先輩もそうだし、お兄ちゃんもそう。


結局、栞を愛してはくれなかったんだから…。


でもね、お兄ちゃん、逢いたいよ…。



栞は、壊れかけている。


そしてそれは、俺のせいだ。


俺と栞の気持ちは、同じ方向を向いていたのに…。


そして俺は、決意したのだ。


栞を救いたい。



栞と連絡が取れたのは、次の日のことだった。


栞は、明らかに元気がないが、それでも俺からの電話を喜んでくれる。



そして、俺たちはもう一度逢うことを約束した。


次の土曜日に、新宿西口交番前に午後1時。


電話の最後に、栞はこう言った。


「お兄ちゃん…どこか遠くへ連れて行って…」


65


その日が来るのが、待ち遠しかった。


本当に。


久しぶりに栞に逢える。


俺は、その土曜日、いつもより早めに目を覚ました。


季節の変化は、シャワーの設定温度で感じられる。


41℃。


いつの間にか、秋も深まっていた。


俺は、リーバイス502のジーンズに、薄手のシングルライダースの革ジャケットを合わせる。


もちろん色は、ブラックだ。


ロレックスデイトジャストの針は、午前10時28分を示していた。


今日は、長いドライブになるかもしれない。


俺は、今日はワークブーツではなく、軽いエコーのハーフブーツを履く。


ヒールの巻き上がりが、いい感じだ。



駐車場までは、歩いて2分の距離だ。


俺は、歩きながら栞のことを考える。


栞の体調が、本当に心配だった。


俺と電話で話すようになってからは、多少食事もとれるようになったというが…。


本当に、大丈夫なのだろうか?


とにかく、すべては栞に逢ってからの話だ。


俺の気持ちを、今度こそちゃんと伝えよう。


いままで封印してきた、栞への気持ちを。



午後0時26分。


俺は、新宿西口の地下駐車場にポルシェを止めた。


今日、俺は栞のすべてを受け止めるつもりだ。


俺は、そう決意して待ち合わせ場所へと向かった。