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俺は、だんだんと腹が立ってきた。
沙樹に対してもだが、自分に対しても、だ。
そのとき、横断歩道をマイシティの方から、微笑みながら沙樹が歩いてきた。
7年振りに見た沙樹は…。
とても、キレイだった。
昔とは違って、大人の女になっていた。
俺が想像していた以上だった。
「ごめんなさい、急に呼び出して。本当に久しぶりだね、ひろ」
「あぁ、久しぶり。とりあえずどこかに落ち着こうか」と、俺は沙樹を促す。
沙樹を連れて、新宿の街を歩く。
しかし、この状況は、いったい何なのだろう?
昨日の夜までは、想像もしない、絶対にありえないことだった。
俺は、少し動揺していた。
しかし、沙樹にそんな素振りを見せるわけには、いかなかった。
見せたくは、なかったのだ。
逢って10分後。
俺と沙樹は、ビルの8階にあるベトナム料理を食べさせるバーにいた。
「よく電話番号がわかったね」と、俺は最初の疑問を口にした。
「だって教えてくれたじゃない、手紙の返事で…」と、沙樹は意外なことを口にした。
「そっか…」
沙樹は頬杖をついて、微笑みながら、じっと俺の顔を見ている。
そうはしていても、なんだか寂しそうに見えた。
「何かあったんだろ?急に連絡くれるなんて、さ」
だいたい急に連絡してくる場合、何かあったとしか考えられない。
しかも7年振りに、突然に、だ。
「ううん。ひろに逢いたかったからだよ。いけない?」
「いけなかないけどさ。ちょっとびっくりしたよ」
沙樹は、カシスオレンジのグラスを持ち上げてこう言った。
「久しぶりの再会に乾杯!」
俺は、ジンジャーエールのグラスを重ねながら、沙樹の左手薬指に光るプラチナのリングを見つめていた。
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「そういえば、結婚したんだっけ?」と、俺は沙樹に聞く。
「うん、まあ、ね…」
沙樹は、そのことについては、急に口が重くなる。
あっ、これか…。
話したくないように見えることが、本当は一番話したいことだ。
そんなもんだ。
俺は、話の方向を少し変えてみた。
「いま、九州に住んでるんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど…今は…広島に戻ってる」
………。
どうやら、あまり話したくはないようだ。
「…で、今回は、どうして東京へ?」
「大学のときの友達の結婚式で…。だから…ひろに逢いに来たんだよ…」
ドキドキしていた。
そのとき俺は、沙樹の目に光るものを見た。
涙? 沙樹が泣いている?
沙樹は、俺の目を見て、ささやくようにこう言った。
「今夜は帰らないで…。そばにいて欲しいの…」
俺の脳裏には、沙樹子の笑い顔と、高校時代の沙樹の面影が、重なり合ってぐるぐる回っていた…。