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俺は、沙樹子の肩に手を伸ばし、やさしく引き寄せる。


そして耳元で、こうささやいた。


「サッコ、待たせてごめん。早く逢いたかった。」


「わたしも…そうだよ」


「うん。うれしいよ。ちゃんと言うね。俺は、お前のことが、いま一番大切なんだ。ずっと一緒にいてくれないか?」


沙樹子は、ゆっくりと頷いた。



それから俺たちは、地下道を抜けて、北口駅前にあるイタリアンレストランに向かった。


地下に降りる階段は狭くて急だが、入口を入ると思ったよりも広い。


15


一番奥のテーブルに案内された俺たちは、これまでの時間を埋めるかのように、いろいろな話をした。


話している時間の多くは、俺だった。


彼女の留守電のメッセージを聞いて感じたこと、心配したこと、嬉しく思ったこと…。


そんなことを話しているうちに、カジュアルなイタリアンのコースは、とっくに終わっていた。


沙樹子はご機嫌で、ニコニコしながら俺の話を聞いている。


俺は、ロレックスをチラッと見る。


午後10時12分、か。


俺は、沙樹子を促して席を立つ。


「面白い店があるんだ。一緒に行こう」


沙樹子は、ちょっと不安げな顔をしたが、すぐに微笑んでこう言った。


「うん。連れていって」と。


勝負は、これからだ。


俺は彼女の手を取って、地上に向かった。