6
「えっ?」
彼女は、そんなことを言われるのは初めてだったらしい。
俺は、あえてもうそのことには触れずに、ベンチから立ち上がりながらこう言った。
「ライチ買いに行くぞ」
中華街を、もう一度ゆっくりと歩く。
もちろん、俺たちの手はつながっている。
俺は、ずっとこのまま手をつないでいたい、と思った。
そして、この彼女と心をつないでいたい、と願った。
俺は不安ではあったけれども、もう一度踏み出そうとしていた。
そう決心した。
彼女とは、大丈夫のような気がしたから。
横浜駅まで、彼女を送る。
その途中の車のなかで、俺はこう言った。
「次はゆっくり逢いたいな。いつの夜が空いてる?」
7
彼女を横浜駅で降ろした俺は、のんびりと自宅へ車を走らせる。
首都高横羽線から、環状線へ入る。
こんな車に乗っていると、よく挑発される。
またイキがった改造車が、後ろにピッタリ付けてきた。
俺は、ダブルアクセルで回転数を合わせ、ギヤを3速に叩き込む。
池袋線に入る頃には後ろの車は消えていた。
やれやれ、だ。
俺は、そんなふうに車を走らせながら、なんだかイヤな予感がしていた。
もちろん、さっきまで隣に座っていた彼女のことだ。
まさか、ね。
俺は沸々と湧き出して来た不安を振り払うように、スイッチをひねってリトラクタブルライトを立ち上げ、点灯させる。
今夜も、あの場所に行ってみるか…。
俺は板橋本町で首都高を降りて、池袋に向かうことにした。