「えっ?」


彼女は、そんなことを言われるのは初めてだったらしい。


俺は、あえてもうそのことには触れずに、ベンチから立ち上がりながらこう言った。


「ライチ買いに行くぞ」


中華街を、もう一度ゆっくりと歩く。


もちろん、俺たちの手はつながっている。


俺は、ずっとこのまま手をつないでいたい、と思った。


そして、この彼女と心をつないでいたい、と願った。


俺は不安ではあったけれども、もう一度踏み出そうとしていた。


そう決心した。


彼女とは、大丈夫のような気がしたから。



横浜駅まで、彼女を送る。


その途中の車のなかで、俺はこう言った。


「次はゆっくり逢いたいな。いつの夜が空いてる?」



彼女を横浜駅で降ろした俺は、のんびりと自宅へ車を走らせる。


首都高横羽線から、環状線へ入る。


こんな車に乗っていると、よく挑発される。


またイキがった改造車が、後ろにピッタリ付けてきた。


俺は、ダブルアクセルで回転数を合わせ、ギヤを3速に叩き込む。


池袋線に入る頃には後ろの車は消えていた。


やれやれ、だ。


俺は、そんなふうに車を走らせながら、なんだかイヤな予感がしていた。


もちろん、さっきまで隣に座っていた彼女のことだ。


まさか、ね。


俺は沸々と湧き出して来た不安を振り払うように、スイッチをひねってリトラクタブルライトを立ち上げ、点灯させる。


今夜も、あの場所に行ってみるか…。


俺は板橋本町で首都高を降りて、池袋に向かうことにした。