2
100マイルのスピードで、順調にポルシェを走らせる。
初夏の風は気持ちいい。
とはいえ、さすがに今はウインドウを閉めているが。
「ねぇ。やっぱりちょっと速くない?ちょっと怖いよ」と、彼女は言った。
当たり前だ。
100マイルは、約160キロなのだから。
俺はオートクルーズを終わらせるために一瞬アクセルを踏み込み、4速へスムーズにシフトダウンする。
「このメーターってマイル表示なんだよね」と、俺は言った。
「えっ?マイルって?」と、彼女は不安そうにつぶやく。
真相を知った彼女は、「信じらんないっ!」とほっぺをふくらませる。
その仕草から、まだ彼女が何も知らないコドモなんだな、と俺は確信した。
あっという間に横浜に着いた俺たちは、車を降りて中華街を目指す。
彼女がライチを買いたい、というからだ。
中華街の入口で、俺は強引に彼女と手をつなぐ。
彼女は一瞬びっくりしたような顔をして、頬を赤らめる。
そんな彼女の顔も、なかなかいい。
恥ずかしがりながらも手を振りほどこうとしない彼女に、俺は、まずはひとつクリアだな、と感じた。
あえて古びた小さな店に連れて行き、飲茶をたのむ。
俺は美味しそうに蟹焼売を頬張る彼女を、じっと見つめる。
どうやら、今回は俺が本気になりそうな予感がしていた。
3
いくつかの店を見ながらライチにあたりをつけた俺たちは、とりあえず海を見るために山下公園に向かった。
ライチは冷凍されて売られているので、帰り際に買うことにしたのだ。
海風を感じながら、ベンチに腰を下ろす。
日曜日の昼下がりとなれば、さすがに周りはカップルだらけだ。
すぐに空いているベンチが見つかったことも、奇跡的だった。
俺たちは、ここで初めて自分たちのことをちゃんと話すことができた。
合コンでなんて、適当な話しかしないもんだ。
そして、電話でもあえてちゃんとした身の上話をしないようにしていた。
そういう話は、逢ってから話さないと意味が無い。
会社の仲間から誘われた合コンに顔を出すこと自体、実は俺にとってはかなり珍しいことだった。
合コンは、あまり好きではない。
所詮は、ただの暇つぶしだと思っていた。
俺はその頃、長く付き合った彼女にこっぴどく振られて、長い間、恋愛すること自体に興味をなくしていた。
そう。
いま隣にいる彼女に出逢うまでは。