100マイルのスピードで、順調にポルシェを走らせる。


初夏の風は気持ちいい。


とはいえ、さすがに今はウインドウを閉めているが。


「ねぇ。やっぱりちょっと速くない?ちょっと怖いよ」と、彼女は言った。


当たり前だ。


100マイルは、約160キロなのだから。


俺はオートクルーズを終わらせるために一瞬アクセルを踏み込み、4速へスムーズにシフトダウンする。


「このメーターってマイル表示なんだよね」と、俺は言った。


「えっ?マイルって?」と、彼女は不安そうにつぶやく。


真相を知った彼女は、「信じらんないっ!」とほっぺをふくらませる。


その仕草から、まだ彼女が何も知らないコドモなんだな、と俺は確信した。


あっという間に横浜に着いた俺たちは、車を降りて中華街を目指す。


彼女がライチを買いたい、というからだ。


中華街の入口で、俺は強引に彼女と手をつなぐ。


彼女は一瞬びっくりしたような顔をして、頬を赤らめる。


そんな彼女の顔も、なかなかいい。


恥ずかしがりながらも手を振りほどこうとしない彼女に、俺は、まずはひとつクリアだな、と感じた。


あえて古びた小さな店に連れて行き、飲茶をたのむ。


俺は美味しそうに蟹焼売を頬張る彼女を、じっと見つめる。


どうやら、今回は俺が本気になりそうな予感がしていた。



いくつかの店を見ながらライチにあたりをつけた俺たちは、とりあえず海を見るために山下公園に向かった。


ライチは冷凍されて売られているので、帰り際に買うことにしたのだ。


海風を感じながら、ベンチに腰を下ろす。


日曜日の昼下がりとなれば、さすがに周りはカップルだらけだ。


すぐに空いているベンチが見つかったことも、奇跡的だった。


俺たちは、ここで初めて自分たちのことをちゃんと話すことができた。


合コンでなんて、適当な話しかしないもんだ。


そして、電話でもあえてちゃんとした身の上話をしないようにしていた。


そういう話は、逢ってから話さないと意味が無い。


会社の仲間から誘われた合コンに顔を出すこと自体、実は俺にとってはかなり珍しいことだった。


合コンは、あまり好きではない。


所詮は、ただの暇つぶしだと思っていた。


俺はその頃、長く付き合った彼女にこっぴどく振られて、長い間、恋愛すること自体に興味をなくしていた。


そう。


いま隣にいる彼女に出逢うまでは。