雨に濡れた森は母さんの髪の匂いがした。
昨日の夜のシャワーは激しくまだ葉からはポタリポタリと水が落ちている。
少年は石が一杯に敷かれた道を歩いていた。
月の光が石を照らし光っている。
ジャリジャリと石の音をさせながら少年は時々立ち止まり耳をすませる。
聴こえている。
それは笛の音色だった。
10/8 「宵闇の月」
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ドロドロに覆われた世界。
足下は油断した途端にズブズブと沈んでいく。
黒く真っ黒で歪んだ地面を這う虫たち。
どこまでも続く行進。
僕は、そう、ここから逃げ出そうとしていた。
リュックに荷物をまとめ靴の紐を縛った。
「お兄ちゃんどこに行くの?」
妹をひとり残すのは心が痛んだ。
「一緒に行こうか?」
10/17 「現実の世界」
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教室に戻ると筆入れがなくなっていた。
床にはシャーペンや消しゴム。
ひとつひとつ、ばらばらに転がっていた。
それを拾う私を誰も見ていない。
教室にはいつの間にか私しかいなくて、そして私だけがいなかった。
だけどその時カーテンが揺れて風が入ってきたんだ。
風は笑って私にペンをそっと渡した。
10/18 「風」