タイトル「家族の裏切りと『逆ギレ』の心理〜高齢者の感情暴走にどう向き合うか〜」
先日、知人からとても胸の痛む、そして考えさせられる家族の相談を受けました。(※プライバシーに配慮し、内容はかなり抽象化しています)
内容は、80代の父親に「30年以上続く不倫」が発覚したというもの。
それだけでも70代のお母様やご家族にとっては計り知れないショックですが、さらに驚くべきは、その事実を諌められた父親の態度でした。
自分が100%悪いにも関わらず、謝るどころか逆ギレし、「こんなことになったのは妻のせいだ!」「お前たちの育て方が悪かった!」「親子の縁を切る、離婚だ!」と、家族に対して恫喝まがいの言葉を撒き散らしているそうです。
長年、身勝手な振る舞いに耐え忍んできたお母様や、間に入って傷つくお子さんのことを思うと、本当にやりきれない気持ちになります。
■ なぜ「自分が悪い」のに逆ギレするのか?
特養で作業療法士として日々高齢者の方々と接していると、こういった「自分の非を認められず、他責にして暴走する」ケースの背景にある心理や状態が見えてくることがあります。
今回のケースも、単なる「老害」や「身勝手」という言葉だけで片付けるのではなく、少し客観的な視点で紐解いてみます。
1. 自己愛憤怒(自己を守るための過剰防衛)
30年もの不倫という「絶対に言い逃れできない自分の非」を突きつけられた時、プライドが高い人は自分の心が崩壊するのを防ごうとします。その結果、「自分が悪いのではない、周りが悪いのだ」と極端な他責思考に陥り、相手を攻撃(恫喝)することで自分の立場を必死に守ろうとします。これは心理学で「防衛機制」と呼ばれるものです。
2. 前頭葉の機能低下による「感情のブレーキ」の故障
80歳代というご年齢を考えると、理性を司り、感情をコントロールする脳の「前頭葉」の機能が低下している可能性も大いにあります。「思い通りにならないなら縁を切る!」という極端な白黒思考(ゼロ百思考)は、感情のブレーキが効かなくなっているサインでもあります。最近よく耳にする「カスハラ(カスタマーハラスメント)」にも通じる、感情統制の難しさが表れています。
■ 被害者が自分を守るために一番大切なこと
このような状態に陥っている相手に対し、正論で立ち向かったり、「分からせよう」と話し合いを試みたりするのは、火に油を注ぐだけで非常に危険です。相手は事実を受け止める機能がフリーズしてしまっているからです。
ご家族に今一番必要なのは、
「物理的・心理的な境界線を引くこと」です。
恫喝まがいの言葉は、まともに受け止める必要はありません。それは相手の心の問題であり、お母様やお子さんの責任では決してないからです。
「離婚だ」と騒いでいるそうですが、法的な手続きやこれからの生活設計(そして避けて通れない介護の問題)については、感情的なやり取りを避け、弁護士や公的な窓口などの第三者を挟んで淡々と進めるのが最も安全で確実です。
知人のお母様が、これ以上心身をすり減らすことなく、残りの人生をご自身のペースで、心穏やかに笑顔で過ごせる環境が一日も早く整うことを、心から願ってやみません。
皆さんは、親や家族の「感情の暴走」に直面したとき、どのように心を守っていますか?