初めてお会いしたのは、まだ事務所の養成所に通っていた92年の9月。30年前。
養成所に通いつつ、お仕事少しずつさせていただいていて…
生まれて初めてのお仕事が敏也さんとの出会いでした。
『たからげた』というNHKの人形劇で、主人公は野沢雅子さん演じる太郎。私は太郎の幼なじみの花ちゃんという女の子役。
そして、敏也さんは太郎に意地悪をして財産を独り占めしようとする悪役のおじいさん役でした。
初めてのお仕事でご一緒して、その後、長きに渡り『おじゃる丸』という作品でご一緒する日が来るとは…当時は思いもしなかった。
当たり前だけどね。
敏也さん演じるトミーは、物腰柔らかく、自分の好きなことには少年のような眼差しで没頭するところがある、お茶目なカズマのおじいちゃん。
学生時代からジャズをやっていて、子鬼くん達にも興味津々の好奇心旺盛な素敵なおじいちゃん。
最初にトミーさんの声を聞いた時から『うわぁ、ぴったり。すっごく素敵』と思ってました。
いつも私の左隣りに座ってらして、楽しくお話させてもらって…
お子さんが海外でダイビングショップを経営されていて、私も当時ダイビングをしていたのでよくお話を聞かせてもらったり…
年末年始はお子さんの住む海外で過ごされていて、よくお土産を買ってきてくれました。
ボールペンをよくいただきました。
仕事でも使ってました。
年賀状のやり取りはずっと続けていて、いつからか名前のところに『トミー』と書いてあって、それもなんだかすごく嬉しくて。
いつも優しい声で『ちなみちゃん。ちなみちゃん』て呼んでくれていた声が今もずっと残っていて。
敏也さんは、自分の演じるトミーはもちろん、おじゃる丸という作品をすごく大切に、愛して下さっているのがそばにいてとても伝わってきました。
コロナ禍の影響で、一緒にアフレコする機会が減ってしまったけど、すれ違いで会える時はいつもにこやかで。
24期の最終話の収録は、すれ違いだけどロビーで会えてご挨拶して…
それが敏也さんに会えた最後でした。
訃報を聞いた時も、なんだかよく分からなくて、こんなに早くお別れが来てしまったことに、なんだか心が追いつかなくて。
敏也さん
本当に本当に、お世話になりました。
敏也さんに出会えて、一緒にたくさんお仕事ができて、とても幸せでした。
敏也さんのいない左側は、ふと思い出すとやっぱり寂しいけど、これからもトミーおじいちゃんは作品の中で生き続けていきます。
おじゃる丸は今年で放送25年を迎えます。
これからもどうぞ見守ってて下さいね。
chin@