先日、お寺の境内にあるカフェを訪れました。
メインの道から離れ、境内のいちばん奥にひっそりと佇む場所。
訪れた日は、あいにくのお天気でした。
それにもかかわらず、店内は多くの人で賑わっていました。
コーヒーやスイーツのおいしさも、もちろん魅力のひとつでしょう。
けれど、インテリアの仕事をしている私が心惹かれたのは、空間全体が醸し出す、何ともいえない心地よさでした。
何となく落ち着く。その「何となく」の正体
店内には、木や土壁など、自然素材がふんだんに使われています。
素材そのものが持つ表情や、年月を感じさせる佇まい。
華やかさを前面に押し出すのではなく、空間全体が穏やかに調和しているように感じました。
そして、ふと思ったのです。
「雰囲気」って、やっぱり大切だな、と。
私たちは、空間を評価するとき、つい目に見えるものに注目しがちです。
家具のデザイン、壁の色、照明器具、装飾品。
もちろん、どれも大切な要素です。
けれど、それぞれが素敵であれば、必ずしも心地よい空間になるとは限りません。
大切なのは、それらがどう組み合わさり、どんな空気感を生み出しているか。
そして、その場所に身を置いたとき、自分がどんな気持ちになるか、ということではないでしょうか。
空間は、五感を通して感じるもの
空間から受け取る情報は、視覚だけではありません。
素材の手触り、音の響き、漂う香り、光の柔らかさ。
さらには、そこで過ごす人の気配や、その場所が積み重ねてきた時間も、私たちの感じ方に影響しているように思います。
今回のお寺カフェでは、自然素材の持つ素朴さや、境内の奥という立地も含めて、独特の落ち着きが生まれていました。
もちろん、訪れる人それぞれに感じ方は違うでしょう。
それでも、わざわざ足を運びたくなる場所には、商品やサービスだけでは説明しきれない魅力があるのだと思います。
デザイナーにできること
では、空間をつくるデザイナーに何ができるのでしょうか。
単に流行の素材や家具を取り入れ、見た目を整えることだけではありません。
その場所が持っている魅力を見つけ、そこで過ごす人にどんな時間を届けたいのかを考え、それを空間として表現していくこと。
ときには、何かを足すよりも、素材そのものの魅力を生かすこと。
ときには、目立たせるよりも、全体の調和を優先すること。
そして、そこにいる人が何を感じ、どんなふうに過ごすのかを想像すること。
そうした積み重ねが、数字や言葉だけでは表現しにくい「心地よさ」につながるのではないかと思います。
美しいだけでは終わらせない空間へ
インテリアの仕事を長く続けてきましたが、日常の中には、今でも新しい気づきがあります。
今回のお寺カフェも、そのひとつ。
何気ないお出かけのつもりが、空間の役割やデザイナーの仕事について、改めて考える機会になりました。
美しいことは大切。
けれど、それだけでは終わらせない。
その場所にいる人が心地よく過ごせること。
また訪れたいと思えること。
その人にとって、何かしらの豊かさが生まれること。
そんな空間をつくるために、私に何ができるのか。
これからも、さまざまな場所で感じたことを、自分なりに考え、仕事に生かしていきたいと思います。
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