⑨「嵐の終わりに」
線を引くと決めてから、
思っていたより、迷いはなかった。
むしろ――はっきりしていた。
これまでの私は、
子どもにとっての最善、
旦那さんにとっての最善を考えて、
先に動いていた。
でもある瞬間、ふと気づくようになった。
「あ、これ私の問題じゃない」
手を出しかけて、止まる。
言いかけて、飲み込む。
その感覚は、我慢ではなかった。
むしろ――自然な反応だった。
自分を守るような、
静かな防御反応。
線引きは、難しいものじゃなかった。
ただ、本来の位置に戻ることだった。
子どもは子どもの課題を、
旦那さんは旦那さんの課題を。
それぞれが、それぞれで向き合っていく。
うまくいかないこともある。
遠回りに見えることもある。
それでも私は、もう背負わない。
その代わりに、
自分の感覚を大事にする。
すると不思議と、
心が軽くなっていった。
気づけば――
あれほど強く吹いていた嵐が、
遠くに離れていた。
何もかもが変わったわけじゃない。
でも確かに、私は変わっていた。
ちゃんと立って、ちゃんと見ている。
ここまで来たんだと、
静かに思えた。

