ビギナーズラックというものが、ギャンブルにのめり込むきっかけだとよく見聞きしますが、自分の場合、
取り立ててあげる程のビギナーズラックといったものはなかったような気がします。敢えてあげるなら、初めて馬券を当てたクリスマスの有馬記念、マヤノトップガンが勝った時の馬連でしょうか。
配当は40倍くらいついたと記憶しています。
ちなみに中学生の時のことです。外のぴりっとした冷気の中めずらしく雪が降り、発売されたばかりのドラゴンクエストシリーズの新作をカバンの中に携えていた自分は、世の中に腐るほどある不幸の影なんて微塵も知りませんでした。
しかしその馬券を当てたからといって、競馬にのめり込むということは一切なくて、場外馬券場というのは、汚ねーし、おっさんが一杯いてうるさいし、一度経験すれば十分だとしか思いません。
背伸びした少年の好奇心は一瞬にして収束したのです。
次に競馬に手を出したのは大学生の頃です。当時競馬のゲームが流行っていたのもあり、友達の付き合いで馬券を買いました。レース名は覚えてませんが、ナリタトップロードの単勝を5000円購入したと思います(馬券は外れました)。
学生が単勝を買う額としては、決して少なくない金額だと思いますが、躊躇なく買うあたりギャンブル依存性の素質があったのでしょうか。
しかしその時もやはり、地面に外れ馬券や誰かの吐いた痰や吸い殻が散らばるような場所がどうも好きになれず、ギャンブルはそれっきりでした。
しかし重度の依存性となるからには、当然続きがあります。
始めて継続して馬券を買い始めたのは、まだ新橋の場外馬券場があった頃のことです。自分は自由に遣うことができる範囲でWINSに数ヶ月のあいだ足繁く通っていました。あまり記憶にはありませんが大勝ちはしないが、負けはしないといった収支だったと思います。
以前は嫌いだった騒然とした鉄火場みたいな雰囲気もあまり気にならなくなり、むしろ楽しむことが出来るようになっていました(競馬場には普段は決して目にすることのできない興味深い人たちがごく少数いるのです)。
そんな折に、平場のよく知りもしない馬の単勝を5万円を買い、ハナ差で的中を逃すということを経験します。そして破れかぶれに万単位のお金を何レースかに注ぎこみました。
それをきっかけにして、お金を儲ける為に賭事をするには自分は研究不足だし、能力不足だ、それになにより割りに合わないと痛切に感じ、以来10年以上ギャンブルには見向きもしませんでした。
だから名高いディープインパクトの全盛期もよく知りません。どこかでその活躍を知っても、"ふーん"以外の感情は湧きませんでした。
本格的にギャンブルにのめり込むきっかけになったのは2013年のことです。自宅でネットを使って投票できるPATというシステムを知るに至り、日常のストレスのはけ口だとか、金儲けをしたいとか、そういう理由はほとんどない状態で、趣味として競馬をやろうとふと思い立ったのです。
趣味ですから賭け金も1点100円です。
しかし、100円といえども負けごこむと生活を圧迫し始めます。ベッドで寝転びながら馬券購入できる環境というのは堕落に拍車をかけ、あー、やっぱ競馬は向いてないなと実感するのにあまり時間はかかりません。
翌2014 年の10月のことでした。
自分が住んでいる地域だと新築の家を購入してもお釣りが来るくらいの馬券を的中させたのです。
今思えば、そんな大金当てなければ良かったとも思うし、当ててからの過ごし方には後悔の念しかありません。
ざっくりとではありますが、依存性に至る前段階までのギャンブルとの関わりはこんな感じです。
元より金銭感覚に疎く、将来設計も絵に描いた餅以前に絵も描いていない白紙といった甘い考えだったのを改めて思い出します……。
振り返ると溜息ばかりです。