本Illust short story

$かわいさナナメ13°




小学生達が毎週通うピアノ教室はお茶屋さんの二階。

商店街の一番端の。

でも一番人通りのにぎやかなところ。

その周辺はお茶の香りでいっぱい。

店頭に大きなお茶引きの臼があって、いつも動いてるから。


レッスンに来たときは、お茶屋さんの店内を通って二階へ上がる。

なので、お茶の香りをい~っぱい嗅いでいく。

そして体にお茶の香りを溜め込んで。


なぜなら

ピアノの先生はおばあちゃん先生で、

高校教師もされていて、とてもきびしい。

レッスン中も何度も間違えると、バシッと手を叩かれる。

レッスンの順番待ちをしながら、

待っている間もドキドキ

「練習して来なかったなあ」

「おこられるかなあ」

「また、マルもらえないだろうなあ」

緊張しながら待ってる。


それでも、体にいっぱい溜めて来たお茶の香りと

階下から漂ってくるお茶の香りで、

「どんなにか、どんなにか、癒されるんだよ。」

肩がすぅ~と楽になるし、頭がクリアになるし、

お茶ってほんとに癒される香りなんだなあ。

だから、ちょっときびしいピアノ教室、

お茶の香りに誘われて、練習してなくても

来ちゃうんだなあ~





私の場合、匂いというものがあまりない。

臭覚中枢?そんなのあるのか?

あったら、きっといかれてしまってる。

お茶屋さんの店頭の匂いは、記憶の中のいい思い出。

鰻屋、焼き肉屋など、食欲をそそる匂いもしない。

損してる。

でも、いいこともある。

くさいのもわからないから、いやな匂いで苦しまなくていい。

九月の始めに風邪をひいて、びっくりするほどのハナ詰まり。

これが治ったら、ひょっとしたら匂いもいっしょにもどるかもしれない。

と、淡い期待をしたが、まさかそんなことはなかった。