Illust short story
小学生達が毎週通うピアノ教室はお茶屋さんの二階。
商店街の一番端の。
でも一番人通りのにぎやかなところ。
その周辺はお茶の香りでいっぱい。
店頭に大きなお茶引きの臼があって、いつも動いてるから。
レッスンに来たときは、お茶屋さんの店内を通って二階へ上がる。
なので、お茶の香りをい~っぱい嗅いでいく。
そして体にお茶の香りを溜め込んで。
なぜなら
ピアノの先生はおばあちゃん先生で、
高校教師もされていて、とてもきびしい。
レッスン中も何度も間違えると、バシッと手を叩かれる。
レッスンの順番待ちをしながら、
待っている間もドキドキ
「練習して来なかったなあ」
「おこられるかなあ」
「また、マルもらえないだろうなあ」
緊張しながら待ってる。
それでも、体にいっぱい溜めて来たお茶の香りと
階下から漂ってくるお茶の香りで、
「どんなにか、どんなにか、癒されるんだよ。」
肩がすぅ~と楽になるし、頭がクリアになるし、
お茶ってほんとに癒される香りなんだなあ。
だから、ちょっときびしいピアノ教室、
お茶の香りに誘われて、練習してなくても
来ちゃうんだなあ~
私の場合、匂いというものがあまりない。
臭覚中枢?そんなのあるのか?
あったら、きっといかれてしまってる。
お茶屋さんの店頭の匂いは、記憶の中のいい思い出。
鰻屋、焼き肉屋など、食欲をそそる匂いもしない。
損してる。
でも、いいこともある。
くさいのもわからないから、いやな匂いで苦しまなくていい。
九月の始めに風邪をひいて、びっくりするほどのハナ詰まり。
これが治ったら、ひょっとしたら匂いもいっしょにもどるかもしれない。
と、淡い期待をしたが、まさかそんなことはなかった。