付き合い始めた頃はほんとしょっちゅう会ってました。
彼からもよく連絡がきてたし(とはいえ毎日メールや電話をするわけでもありませんでしたが)、数日間沈黙があってもどちらからともなく会いたくなってまた連絡をとって会う。
仕事終わりの遅い時間でも、会いたいと思ったら会う。
次の日が仕事でも、少しくらい無理してでも会う。
夢中だったんですね~。
最初はお互いがそんな感じでした。
それから数ヵ月経って、彼も仕事が忙しくなり始め、少しずつ彼からの連絡も、会う回数も減っていきました。
それでもわたしが連絡をすれば返事をくれるし、できるだけ時間を作って会いに来てくれました。
少し不安になることもあったけど、その頃はまだ、それで満足できてました。
それからまた数ヵ月。
彼の仕事の状況が激変。
彼はなんだかいつも上の空で、一緒に居ても難しい顔をして考え事をしていることが増えました。
それになんだかピリピリしていて、普段は言わないような、友人への愚痴なども頻繁に口にするように。
ネガティブな発言も多くて、でもなんて声をかけてあげたらいいのかわからなくて、ただただ話を聞いてあげることしかできませんでした。
ちょうど同じくらいの時期に、わたしの転職が決まりました。
広く言えば前職と同じ業界、でも転職先の分野はまったくと言っていいほど未知の世界で。
引き継ぎ業務や一時的な掛け持ち状態でバタバタしっぱなし、前職と転職先との板挟みになったりで肉体的にも精神的にも余裕がなく…。
期待もある反面、いろいろな不安感も押し寄せてきて、正直かなり参ってました。
わたしにとって、そういった気持ちを癒してくれる唯一の存在が彼だったのです。
その頃のわたしはとっても不安定でした。
彼からの連絡が減ったこと、会う回数が減ったこと、すぐにメールが返ってこないこと、すべてが言い様のない不安に変わりました。
ベッドに入って目を瞑れば、彼はわたしのことをほんとに好きなのか、もしかして別の女の子と会ってるんじゃないか、ほんとは元カノを引きずってるんじゃないか…あれこれと根拠のない疑念が頭の中を支配する。
会いたい、会いたい。
いま会わなきゃ彼がどこかに行っちゃう。
だんだん、絶対に週1回は会わなきゃ!と、自分の不安を解消するために躍起になっていきました。
たった1週間も彼からの連絡が待てないのです。
1週間も連絡が無い…
彼と会わなきゃ!連絡しなきゃ!
約束してるわけでもないのに、休日は彼から連絡がきたときのために空けておく、他の人からの誘いは基本的に断る。
いつの間にか、彼!彼!彼!の生活になっていました。
メールが返ってこないだけで仕事も手に付かない。
また疑う。
そして返事があったらひと安心。
会ってくれたら、良かった、彼はまだ離れて行ってない、とまたひと安心。
少しでも長く一緒に居たい。
たとえ睡眠時間を削ってでも彼と居たい。
そしてバイバイするとまたすぐに不安になる。
そのくせ、不安だ、寂しいだなんて絶対に言葉にしない。
年上の彼に見合う、落ち着いた女で居たいから。
余裕よ、全然気にしてないわ、と猫を被る。
でもほんとは焦っているからメールする。
今日会える?明日は?その次の日は?
被った猫の隙間から、不安定な心はダダ漏れだったことでしょう。
ある日、またわたしから連絡して彼が会いに来てくれました。
いつものように一緒に過ごしているつもり、でした。
たまには素直に甘えてみよう、なんて呑気な気持ちで、彼にベタベタしてみたら…
「…もう帰る」
え?どういうこと?
「なんか違うみたい」
なにが違うの?喜んでくれないの?
突然の出来事に驚いて、固まってしまったわたしを置いて彼は帰ろうとしました。
ハッと我に返って、彼を引き留めて、震える声で「どういうこと?」と聞きました。
彼は困ったように、それでも冷静に話し始めました。
「いまは一人になりたい。
仕事で成功したいから、仕事に集中したい。
そう考えてたら、でこのこと恋愛対象で見られなくなった。
俺のワガママです。ごめん」
理解するのに少し時間がかかりました。
ああ、フラれたんだと理解できたときには涙が溢れていました。
「何がダメだった?」と聞いたら「何もダメじゃないよ。でこのせいじゃない」と。
彼の優しさが、逆にとっても苦しかった。
ほんとは縋って縋って、嫌だ、別れたくないって言いたかったけど、わたしは仕事に一生懸命な彼が大好きだったんです。
だから、このときばかりはカッコつけて「応援してるから、わたしからは何も言えないよ」と別れを受け入れました。
「またみんなで集まることがあったら、そのときにでも」
彼はそう言って帰って行きました。
がんばって笑顔で見送って、ドアを閉めた瞬間に、ああ、終わってしまったんだな、と。
絶望を抱えて布団に潜りました。