日本の就労人口の約7割を占める中小企業。「制度が整わない」「前例がない」などの理由で、大企業に比べて育児休業の取得など仕事と家庭の両立に向けた取り組みが進まないといわれる。しかし、規模の小ささを逆手に、柔軟に制度を運用し働きやすい職場づくりに取り組む企業も少なくない。中小企業ならではのワークライフバランスにおける創意工夫を探った。(横山由紀子)
◆スムーズに職場復帰
食品パッケージなど多層フィルムの製造・販売を手がける「クリロン化成」(大阪市東淀川区、従業員132人)は、実務の中核である係長クラスに女性を積極的に登用、係長級以上の管理職53人のうち約23%が女性だ。厚生労働省によると、全国の管理職全体に占める女性の割合は8%(平成21年度)で、同社はその約3倍に上る。栗原清一社長は「優秀な女性を積極的に活用していくことが企業の利益につながる」と、その意図を説明する。
ただ、女性を積極的に登用するとなると、出産や育児への支援も欠かせない。そこで、同社は育児休業制度を整備したうえ、産休・育休取得の際には、職場で「職務分担表」を作成。専門業務は同じ部署の従業員に振り分け、単純作業はパートや他部署でカバーし合い、仕事の引き継ぎ漏れがないようにした。実際、社員5人の福岡市の事業所では、事務職2人のうち1人の女性社員が産休・育休を取得したため、「分担表」に従って、入社1年目の事務職と営業職の社員2人が職務を引き継いだ。1年後、女性社員はスムーズに職場復帰。職務を分担した若い社員のスキルアップにもつながったという。
◆効率良い働き方
社会的弱者が働きやすい環境を追求する会社もある。システム開発の有限会社「奥進システム」(大阪市中央区)は、社員6人のうち5人はシングルマザーや障害者。月曜日は全社員が出勤して会議を行うが、火・木曜日を在宅勤務日とし、時間や場所の制約を受けず効率良い働き方が選択できる。
奥脇学社長は「女性や障害者が働きやすい会社を目指している。過酷労働のイメージがあるIT業界だが、工夫次第で社員の幸せを築いていきたい。社員数が少なく特殊な状況にあるからこそ、フレキシブルに対応できる。日本の労務環境を変えていきたい」。
この2社はいずれも、働きがいのある大阪の中小企業を表彰する「ハッピーキャリア企業表彰」の今年度の受賞企業だ。主催は、NPO法人「女性と仕事研究所」と育児休業者のための職場復帰を支援する企業「wiwiw」。社長で、立教大学大学院特任教授の山極清子さんは「組織が小さな分、トップの意向が制度改革に反映されやすく、少ない人材を無駄にはできない中小企業こそ、女性の働きやすさやワークライフバランスを図りやすい。日本企業の多くを占める中小企業から職場環境を整え、世の中を変えていってほしい」と話している。
■中小企業における女性の職場環境
厚生労働省の調査によると、育休制度の規定がある企業は、500人以上の事業所で100%なのに対し、499~100人規模で97.6%、99~30人で88.1%(平成22年度)。一方、管理職(係長級以上)全体に占める女性の割合は、21年度の調査では、299~100人で7.7%、99~30人で12.3%、29~10人で19.8%と、規模が小さいほど女性の登用が進んでいる。