紅茶がなくなる前に、あたしだけドーナツを注文した。

上にちょこんと申し訳程度にクルミが乗っかってるやつ

〈いつ見てもいい食いっぷりだな〉

そう言って、組もうとした方の足の膝小僧を小さなテーブルの足に強くぶつけて
北川が顔をしかめた

はは

「ねぇ、あたしのこと、
カワイイと思う?」

〈はぁ?寝言は寝て言えよ〉

あたしはわざと、傷ついたふりをして見せた

そしたら

〈なんだよ、その顔〉

と、あわてている。

「なんか、すごいいやな感じがする」

〈何が〉

止まらない予感。

「北川は、あの人のこと好きなんだよね」

〈え?まぁ、そーだけど。なんだよ急に、〉

〈カワイイっつーか、いい女だなとは思うよ〉

「遅い。それひとつ前の質問」

〈すげー好きだけど
あの人は僕を見てないんだよ〉

「あれ、ほかの男のとこ行ったの?」

〈さぁな〉

〈世の中は知らなくてもいいことで溢れてる〉

なに、そのドラマ的なせりふ。

恥ずかしいなーばかじゃないの

ドーナツも紅茶も終わって北川と別れたあたしは

再び目黒駅を目指して歩きだした。