拓也はバイクは山のふもとに置いていた。研究所からは5分ほどかかるがその道も悪いものではなかった。緑が広がる(今は冬だから枯木だが)自然は拓也に力をくれている様にも思えた。
そして彼はこう見えて花が好きであった。
理由は彼の姉が花が好きであり、その影響であった。
毎日毎日アレジメントが変わるほど彼の姉は花が好きであった。
山を下っていく途中、人影が見えた。別に悪いことではないがこの山に人が来るということが珍しい。
「もしかして実か?」
人影を確認するが実よりもう少し細い気がした。
影が明らかになっていく。あちらは気づかずに歩いてくる。
「2人いるのか・・・・?」
大きな木の影に隠れて様子を伺う拓也。
キャッキャと男女の声がする。ただのカップルか何かだろうか。
「春はここら辺は桜がいっぱい咲いてたりするんですけどね。今は冬なんでこうね・・・・。」
男の声が聞こえる。聞いたことある声であった。
「この声は隆か。」
声が記憶と一致した。木から抜け出し、声の聞こえた方へと向かう。
「隆。何をやってるんだ。お前は。」
歩いた先には普段着であろう男とスカートを履いており長い髪が目立つ女がいた。
「お、拓也か。お前こそ何やってるのさ。」
陽気に答える隆。
「いや、俺は・・・・。そんなことより横の女性は誰なんだ?」
隆と拓也、二人の会話をそっちのけとまでは言わないが構わずに背を向け、花や木を見ている女性。
「あぁ!紹介しとくよ!この人は俺の彼女の・・・・」
女性はこちらを振り返る。
長い髪。スラッとしたスタイル。拓也はどこか懐かしい感覚、既見感があった。
(なんなんだ、この感覚は・・・・。)
拓也のざわついた心情とは関係なく、女性は振り返る。
「俺の彼女の風香さんだ!よろしく頼む!」
隆の紹介なんて耳に入らなかった。拓也はその女を知っていた。知らないハズがなかった。
「姉さん・・・・?」
拓也は不思議とそんな言葉を言っていた。
「お前の姉さん・・・・?」
隆はぽかんとしてしまう。
「風香さんがお前の姉さん?何言ってるんだ?」
隆は言葉を続ける。
「お前の姉さんはずっと前に死んでたんだよな・・・・?ロシアかなんかで。なんでそんな変なこと言うんだよ」
拓也は頭を抱え始める。
「そうだ。死んだはずなんだ!なんで死んだはずの人間がここにいるか!って事なんだ!」
拓也は声を荒らげて言う。
「お前ちょっとおかしいよ。ただ姉さんに似てるだけだろ。風香さんが。」
隆の言葉がどこか引っかかったのか隆の首ねっこを勢いよく掴んで聞く。
「今あの女の事を風香と言ったか?」
「あ、ああ。」
拓也の質問に勢いに圧倒されてかこんな返事になってしまう隆。返答のあと拓也は手を離す。
「そうだ。俺の死んだ姉さんも風香って名前だったんだよ・・・・」
は?隆の脳が理解したくないという拒絶反応がでようとしていた。