翌日になり、隆はいつも通りに新聞社へ出勤していた。
だが、どうしても昨日の、巨人との出来事が頭から離れなかった。
「全ては君に繋がっている・・・・」
この巨人の最後の言葉がずっと引っかかっていた。
「俺に繋がっている・・・・?」
意味がわからない。何が言いたいんだ・・・・?
そんなことを考えているとばさっと隆の頭に何かが落ちてくる。落ちてくるというよりははたかれたというような感じがした。
「何回も言わせんじゃないよ。呼んでるのによ。」
振り返ってみると
「編集長・・・・」
編集長と呼ばれた男は口元に少しヒゲをはやし、髪を少々ワックスで逆立てている30代位の男だった。そしてそのスーツ姿の右ポケットには佐々木と書かれていた。
「何をぼやぼやしてるんだよ。こっちは巨人やらなにやらで休憩してる暇すらねえんだぞ!」
編集長はそう言うが、手に持って顔を転がしてる美顔ローラーが言葉の緊張感を無くしていた。
「いや俺も巨人のことで色々悩んでまして・・・・」
隆は編集長に淳やUBの事を言いふらしてしまいそうになるが、
「いや、いいです・・・・。」
やはり言えなかった。言ってしまえばスクープにされて魔女狩りに遭うのは淳だ。
「なんだよ。隠し事かぁ?」
編集長は怪しげに隆を見る。
「まあいいか。確証の無い記事を載せられてもそれが嘘だった場合面倒なことになるしな。」
ほっ。と息をつく隆。
「でもまあもっと困ったことがあったならそん時は俺に相談してくれよ。」
編集長のそんな言葉が隆の胸に強く響いた。
「ありがとうございます・・・・。」
こういう言葉を聞くと自然に笑みをこぼしてしまう。
「ああ、あとウチの社はあの巨人の事は全力で応援する方向に舵を取る事にしたからな。批判的な記事はご法度の方向でな。」
編集長はそう言い残して自らのデスクへと戻っていった。
ふととなりのデスクに目が留まる。
仮原稿。これから編集長やら多くの人にチェックされ、世の多くの人の目に留まる事になる。
その仮原稿の内容もまた巨人の事だった。
ー巨人は人々を導くノアか、それとも人々を救い出すメシアかー
そう書かれた見出しだった。
だが、隆には巨人になっている「少年」のことを考えるとそんな大層なものではない。と断言できる。所詮みんなが崇拝してるものは人でしか無いということだ。
さらに読み進めると巨人に助けられた人々のインタビューが掲載されていた。
ーあの巨人がいないと俺は死んでいた!ー
ー巨人があの場で奮戦してくれたお陰でお腹の赤ちゃんが助けられましたー
ーあの巨人は人類を助け、導いてくれる存在なんだ!ー
そんな言葉が書かれている。
この場合は何も知らないこの記事に書かれた人達というのはとても幸せ者なのかもしれない。その巨人がどれだけ苦労し、どれほど苦しんでいるのかということを。
「俺はこれを多分あいつに見せなきゃいけないんだろうな・・・・。」
アイツには自分がやってきた事について評価をうける必要があると隆は思った。
だがこの選択は大きな間違いを犯す事になるということを隆はまだ知る由も無かった。