「黒木マイって人知ってる?」
英司は初春と恭介に聞いた。
「はぁ?いきなりどうした?色気付き始めたか?エロガキ」
「バカ、それを言うならマセガキだよ。お母さん、お赤飯炊かなくちゃ!」
英司はこの二人に聞いたことは大概間違いだったな。と思った。
「いや、ハンカチ落としたの届けてもらったみたいだからお礼言わなきゃなぁ。って思ってさ。」
「んだよ、つまんねえな。お前はクソかよ!」
なんでハンカチのお礼がしたいってだけで初春にここまで言われなきゃならんのだろうか?とか浮かんだが、言い返しはしなかった。
「マジな話するとさ、確か6組の美人さんだろ?その黒木マイって人。」
とここで恭介が本当の事を言ってくれた。
「へえ。6組の美人さんかぁ・・・。」
英司は少し期待すると同時に緊張もしてしまった。
「でもまぁ期待はするな。あの人と付き合うのは俺たちの学力でオックスフォード大学に受かるようなもんだ。」
そんなに低いのかよ・・・。英司は意気消沈した。
「まぁ親衛隊みてぇなのがいるらしいし仕方ないっちゃ仕方ないのかもな。」
「親衛隊?」
恭介の言葉にびっくり以外になにも起こらなかった。
「まぁ本人は嫌がって無いみたい、というか気づいてすらいねえんじゃね?割りとお嬢様っぽいしさ。」
「その親衛隊ってのは金縛りにかける!とか言わないよね?」
「まぁ少なくともユニバァァァァァス!なんて事は言わんだろう。」
なんて事を言っていると休み時間は段々短くなっていく。
「そろそろ行ってくるよ。」
「礼を言うだけでやけに緊張するなよ!」
この初春の言葉は少しの気休めにはなった。
6組の前に着いた。
教室を見てみると男達は後ろの方でただただ喋っており、女は女で喋っていた。
「すまない、黒木マイって人呼んでもらえないかい?」
そこにいた女子に声をかけた。
「あんたもファンの1人って事?残念だけども新規さんはちゃんと入会しなくちゃ、ね?」
その女子の言ってる言葉は多分異次元の言葉なんだろう。少なくとも英司にはわからなかった。
「まり、その方は違うの」
奥の方から違う女子の言葉が聞こえた。
「英司さんね?」
肩より長く、整っていて品のあるそのシルエット、何もかも吸い込まれそうな瞳に英司は緊張した。
「私はマイ、黒木マイ。よろしくね?」
「うぇ?え?あ、ああ、俺は英司。桐島英司。」
「それくらい知ってますわ?」
「うぇ?ああ、まぁそりゃそうだよね」
英司自身いつも以上に緊張していた。
「先日はハンカチ届けてくれてありがとう。助かったよ。」
「なんで俺の家知ってたの?」
英司は聞きたかった事を聞いた。別にこの言葉を聞いたところで不愉快に思われる事はないだろう。
「え・・・?」
マイさんはちょっと困った顔をしていた。
「私の事覚えてないの・・・?」
マイさんはおかしそうにも思える表情だった。
「ウェ?え~っと・・・その・・・」
覚えてないの?なんて事言われたら英司が一気に不利になった。
「私小学校の頃ここいらの地域に住んでたんだ。」
え?そうだったの?と思ったが口には出さなかった。
「まぁ確か英司君が越してきてからすぐに転校したから知らなくても不自然では無いかもしれないかもね。」
「まぁそうかもしれんのか・・・。」
確かにこっちに小学校4年生の時に転校してきてすぐにここから離れたという事なんだろう。
「そういう事だったのか・・・・。ありがとう。疑うような真似してさ。」
だがこの教室を出れば少し厄介な事になることは英司はわかって無かった。