携帯が急に切れたことで緊急事態というのは分かった。
「一体どこにいるんだよ・・・」
勝手に行きすぎるからだ・・・そうは思っても場所は分からなかった。
着信が鳴った。愛理からだった。
「愛理さん?一体どうし た・・・」
「英司ってやつかあ・・・?」
「愛理さんじゃないな・・・?お前は一体何者なんだよ!」
「まぁそう焦るなよ?女は無事だ。もちろんこれからどうなるか分からんがな」
電話の向こうで男がにたついてるのが分かった。
「てめぇは一体何が目的なんだよ!」
「おめぇ女から聞くところによるとクロノスの力が使える能力者らしいじゃねぇか?」
「だったらどうする?」
「なら俺と戦えよ・・・!どっちかがくたばるまでよぉ・・・!!!」
ダメ!絶対来ちゃダメ!小さく叫ぶ女の声が携帯越しから聞こえてきた。声の主は愛理だろう。
「まぁ来なかったら女は死ぬって、だけだろうがなぁ!」
カッカッカッ!!男が盛大なる高笑いをあげていた。
「分かった。行こう。場所はどこだ?」
「お前はそこから廃工場は見えるか?」
「廃工場・・・?」
英司はそこから辺りを見渡す。
少し遠く離れた先に廃工場らしきものが見えた。
「分かった。少し待ってろ。すぐにぶっ潰してやるよ」
「カッカッカッ!たまんねぇなぁ!!楽しみにしてるさ。あばよ!」
そう言い終わられ電話は切られた。
「相手の出方次第ってことになるな・・・」
英司は今一度覚悟する。
また着信が鳴った。誠二からだった。
「英司、今どこにいる!」
怒号にも聞こえる声だった。
「ごめん。」
そう一言謝り、話を続ける。
「そんなことよりだ!愛理さんの居場所が分かった!!」
「本当か!」
「ああ!どうやら廃工場にいるらしいんだが・・・」
「なんとなく場所は分かった。先に行っていてくれ。すぐに追いつく!」
「ここが廃工場か・・・?」
古びたそこからは不気味さがあった。
「待っていたぜぇ?全く、まぁこんなガキ過ぎるとは思って無かったがな!」
廃工場の門から出てきた男は高笑いしながら言葉を放つ。
「まぁ、中に入れよ・・・?」
男に言われるがまま、廃工場の中に突入していく英司。
「愛理さんは無事なんだろうな!」
「くだらねえ質問ならすんじゃねえよ。ぽっくり殺しちまうぞ?」
英司の質問は男の奇妙な返し方により断ち切られた。
少し中に入ったところで、愛理がいるのが分かった。
「言ったろ?女は無事だぞ?」
腕を縛られていた愛理の姿は少し呆気にとられていたようにも見えた。
「何できたの!あれだけ言ったのに!」
愛理の第一声がこれだった。
「いきなりですね。」
英司も少しあきれた。助けに来てやったのにこの言われようである。
「そいつは第一級の犯罪者なのよ?これまでもクロノスの能力で多くの人間を殺してきたわ!知ってるでしょ?その男の名は妻夫木ダイキ!」
英司とすこしはその名前を聞いたことがあった。
「あんた、有名人かよ・・・?」
英司は質問する。
「すこしは名前は知ってくれてるかい?嬉しいねぇ・・・。ファンってやつかい?」
「それは違う。」
ダイキのおふざけに付き合うつもりは無かった。それはダイキも同じだった。
「さぁ・・・、さっさと殺しあいを興じようぜ・・・?きっと楽しいぞぉ・・・!」
ダイキの不気味な笑いは不快だった。
「カードをだせぇ!宴の時間だぁ!」
男は懐からカードを取りだし、実体化させる。
そのカードには異形の刀の形があった。
実体化した剣は、少し丸っこく尖った剣にはノコギリのトゲのようなものが付いていた。
「さぁ、お前はぁ!」
英司もポケットからカードを取りだし、日本刀を実体化させた。
「さっさとケリをつけないと・・・。」
ダイキは突撃してきた。
振りかざされた剣からは殺気以外は感じられなかった。
それを受け止める英司の剣は、ノコギリのトゲの間に挟まるような具合になっていた。
「こいつ!殺すこと以外に何も考えないのか?」
つばぜり合いの最中、英司はそんな敵のダイキに少々の怖さを覚えた。
「お前は感じないのか?」
「何をだ!」
ダイキの質問におかしさを感じた。
「殺しあいをしてる時こそ自分の感覚を感じとることができる!相手の感覚より何倍も、自分という感覚だけが研ぎ澄まされる!やっぱ人間なんだよなぁ!」
ダイキの言葉はダイキなりの人間的な考え方があったのだろう。
「邪魔するんじゃない!」
英司はダイキの腹を蹴り、距離を取る。
「やるじゃねぇか!英司さんよぉ!」
ああ?とトゲのある声は怖さを示していた。
もう一度英司に肉薄し、剣を振るうダイキ。
英司はそれを何とか受け止めるも体勢を崩した。
「死になぁ!」
ダイキが待つことなく、体勢を崩した英司にトドメの一太刀が降りかかろうとしていた。
「まだだ!」
ポケットから一枚のカードを取りだし、効果を発揮させた。
フラッシュのカード。辺りが眩しく包まれ、視界が奪われた。
「テメェ・・・!」
ダイキもすかさず距離を取る。
「はぁ・・・!」
英司も大分精神的にも肉体的にも限界に近づいていた。
「英司!大丈夫か!」
廃工場の扉が開いた。
「誠二か・・・?」
フラッシュの強烈な明かりの効果が消え、視界は良好だった。
誠二であった。
「これまた、厄介な人間がいるもんだ・・・!ついてないね。」
廃工場に入るなり、誠二が少しうなだれた。
「世界的に少し知名度のある、犯罪者とこんなところで出会えるとはね。」
誠二も皮肉を交じらせた。
「まぁ何とかはしてみるか・・・!」
誠二もカードを取りだし、カードは銃となった。
「ガウ、少し止めにいかないのかい?」
ガウは呼ばれ、振り向く。その声は絶対的な存在、「神」のものであった。
「確かにこのままでは6回目と同じ結末になりかねませんね・・・。」
ガウも考えこむ。
「また作り直すかい?」
神はガウに問う。
「いえ、今回はまだ必要無いかと。戦いの本質を止めるのは好きではありません。が、このままではいけませんね・・・。少し介入してきましょう」
ガウはそう思い、人間がいる世界へ飛び込んだ。
この戦いを円滑に進めるために。