「甘いですよ!」
太刀筋を見極められ、避けられたすぐに木刀で肩を軽く叩かれた英司は体制を崩し、地面に膝を着けた。
「少しは容赦して下さいよ…剣道なんか中学校の授業で一回やったっきりなんすから…。」
「だからどうした?敵はそれではいそうですか。となってくれますか?」
マットの放った言葉は英司の心の芯を突いたようにも思えた。
「私もそんなに剣の施しがあったわけではありません。ですが、私が教えれる限り早く上達して貰います。」
英司は苦虫をすり潰したような顔をした。
ここ数日学校の帰りにこの場所、警察署近くの剣道場(警察官専用の土地。)にての稽古を行なっていたが、英司は1回もマットから1本を取ってなかった。それだけでやる気はなくなるし、休憩時間は無いし・・・。と、英司のやる気のなくし具合もわからんことも無かったマットだが、今はその休憩時間すら惜しかった。
「もう1つ言うならあなたは剣道を最悪しなくていいんです。敵は剣技だけではありませんし、射撃、私のように相手の時間を奪う能力のように変化球な人物も多くいます。」
「だから型に合わない剣術を教え込まれてたって訳ね・・・。」
少し納得した英司がいた。ここに練習来てからだが、TVや資料で拝見したように剣を前に差し出し、剣と自分を向き合わせるようなスタイルでは無かった。剣は前に構えるが、剣道のようなものでは無かった。
「そんな切羽詰っても俺は覚えきれませんよ。人間には限界ってモンがね・・・。」
そう言った瞬間だった。
マットが自分の後方に回り、ナイフを英司の首に突き立てた。
「これでもまだ、稽古はイヤなんて答えます?」
能力を使われた・・・。英司が思考する頃には(実践では)死んでいた。だろう。
「卑怯だぞ・・・!マットさん!」
「卑怯で結構。ですが今のあなたはこれをかわせなかった。Are you ready?(準備いいですか?)」
「急に英語使ってきやがって・・・!」
「出来れば英語でお願いしませんか?」
「under stand・・・!(理解したよ!)」
とはいえこんな時間ですね。と突き立てたナイフを降ろし、時計を見る。短針は6を指し、長針は8の場所を指していた。
「6時40分・・・。もうこんなこと3時間近くやってのかよ・・・気がおかしくなりそうだ。」
控え室に戻り、着ていた汗だくの道着を脱ぎ、もと着ていた服に着替えた。
「お疲れ。」
愛理が近くに来、手に持っていた紙コップが英司に手渡された。
「どうも。」
受け取った紙コップにはスポーツドリンクは入っていた。ぐいと飲み干した、英司は愛理に聞いた。
「あれからエグムはなんかありましたか?」
「珍しいわね。そっちから聞いてくるなんて」
「そりゃ命かかってますから。ね」
「そうね・・・。今のところ犯行声明や、事件はあれ以降無いし」
そんな言葉を聞き、英司は安堵の息をもらした。
「やべ・・・」
時計を見ると、7時近かった。
「すいません!もう帰ります!」
「ちょっと待って!」
愛理は英司を引き止め、カードを渡した。
「クロノス・・・?これは一体?どこで?」
「マットが持ってたカードよ。だってマットは自分が最初から持ってるカード以外は使えないでしょ?暗殺してる時に手に入れたんですって。で、持ってても意味無いですって」
「暗殺・・・?」
え・・・?と口を大きく開いた英司がいた。
「ええ。暗殺。元々時間を奪うなんて力で戦い抜こうなんて思えば、正統派としては闇討ちしかないわ」
「へえ・・・・」
ちょっと意外、というか驚きだった。
「スイマセン。そろそろ行きます。親もいないんで俺がやらなきゃ」
バックを持ち、
何かを思い出したか、瞬く間に剣道場を出ていった。
「ごめん!遅くなった!」
家のドアを開け、1つの靴があった。妹のだった。
「すぐ作る!」
靴を脱ぐや否や冷蔵庫を開いた。
「やばい・・・。空だ・・・」
炊飯器にご飯の残りはあったが、具材はものの見事に何も無かった。
「別にいいよ」
妹、紗季は
「さっき友達とファミレスで済ましてきた。どうでもいい」
感情のこもってない言葉が英司に伝えられた。
「また帰りに寄ったのか・・・。俺もお前と同じ中学校で見つかったからわかるが、帰り見つかるとだるいぜ?」
「あっそ。私、あんたみたいにドジ踏まないから」
「・・・」
反論の余地は無かった。
「そんなんだからテストの点も私に負けるの」
座っていた紗季の前まで行き、
「言わせておけば!お前なぁ!」
「何よ?何か事実じゃない事がある?」
無かった。事実、紗季は勉強面も運動面でも優秀だった。勉強面では、上位20位、スポーツ面では引退してない3年生に混じってキツイ練習にも加わっていた。それは英司もわかっていた。が、そう言われて腹が立たない人間はいないだろう。
「そうやって考え無しにしゃべるな!敵を作るぞ!」
英司は気づけば怒鳴り上げていた。
「何ムキになってんの?」
紗季の反論がもっともらしく聞こえた英司は家を出ていた。
「カッなって特に考えも無く、家出ちまった」
ついでにレストランかで飯済まして帰ってやろうと思ったが財布は虫の息だった。
「スーパーってこの時間は半額シール貼ってたっけ・・・?」
適当にスーパーで買って近くの公園で食ったのは言うまでもない。
男はイラついていた。
「また雑魚かよ・・・!」
自分が「処理」した人間の死体が浮かび合っていたのは男自身滑稽に見えてはいたが、こう歯ごたえが無いのは男の癪にさわり、イライラを募らせてるだけであった。
「こんな力あってもこうも殺しがいも無く、襲ってくる奴らばっかだと萎えちまう・・・」
あ・・・・と男は目をやった。女性がいた。
「ここを見ちまったかぁ・・・・!」
女性は見つかった事を感じ、そして恐怖を感じ取り、その場を飛び出した。
「待てよ・・・。俺は今機嫌が悪いんだ・・・・。なぁ?」
男はポケットからカードを取り出した。少し太く、丸みを帯びていたその刀の絵柄はそのままを実態に映し出した。
「タダで殺しはしねぇよ・・・!」
使われていない倉庫に入っていった女性を追いかけ、男も入っていった。
「そう・・・焦らすなよ・・・。焦らしすぎると楽しみが減ってくだろうが・・・・!」
男はそう言い放つと自分の目に入るもの総てを切り裂いた。
その女性は全てを見ていた。さらなる恐怖しか感情は生み出さなかった。
「だ・・・誰か・・・助けて・・・!」
「みぃつけた・・・!」
男は追いついた。
「楽に殺してはしねえよ・・・!」
男は女性の左腕を切り裂いた。悲鳴にならない声が響き渡る。
「ち・・・。面白くないな・・・。お前。つまらない人生だったな」
男は女性を斬り殺した。
「妻夫木ダイキ・・・!」
女性の人生最後の言葉は殺した男の名だった。
女性の手に持っていたカプセルを奪い取った。
「こんなもんはやっぱり正しい人間が使わなきゃなぁ・・・?」
男、妻夫木ダイキは消えていった。そのカプセルはある人間の人生を狂わせた1つの麻薬でもあった。
公園。目の前にある2つの血溜まり。もう誠二には見飽きたモノでしか無かった。いつも通り相手は自分と同じ能力者、まだ言い慣れてない言葉、クロノス。カード。
「あんまりいいカード持ってないね。まあ回収、回収」
そこで1つを見つけた。
「これは・・・!」
あの時、誠二を変えたカプセルがあった。
「飲もうとしていたのか?」
血溜まりの男を見て、反吐を吐いた。
「ゴミクズにはお似合いさ!」
手に持っていた銃は死体をもう2度打ち抜いた。
「お前・・・!」
そこに誰かいた。
「英司・・・だったか?」
そこには彼、誠二が知る校内でもう1人の能力者、霧島英司の姿があった。
「何してんだ!」
英司は戸惑う。
「何してる?見ればわかるだろ?殺し合いだ。命を大きな奪い合いだよ」
「だからってこんな・・・!」
血溜まりは英司に嗚咽感をもようした。
「人なんだぞ!生きてるんだぞ!わかって!わかってこんな!」
「大体、こんな事で死ぬ人間はそれまでってことさ。神が決めた期限をそのままの期限だよ。君はゴミをゴミって言わないのかい?」
「お前・・・!死んだ人間をゴミだって言いたいのか!」
ククク・・・・!ハハハ!!
「そうだよ!死人にクチナシ!人間なんて死んだらそこのゴミと何ら変わらない!そして今からのお前もな!」
冷淡でいてどこか狂気にも似た感情と銃口は英司に向いた。
「どうしても戦おうというのか・・・?」
英司も人は殺しているが、そうは思わなかった。
「はじめからそういうもんだろ?こんな力!面白く戦おうか・・・!」
「人間は俺たちが思ってるほど、安くない!」
綺麗事を言ってるから君は死ぬんだよ。
英司は刀を抜いた。
「どうしても戦うなら・・・!俺はお前を殺す!」