目を覚ました。自分の斜め上の目覚まし時計は朝にはけたたましい程の音量だった。
「うるさいなぁ・・・」
目を覚ました英司はうっとおしそうに目覚まし時計のボタンを押すとけたたましい音は鳴り止んだ。
「英司起きたぁ?」
下の1階から声が聞こえた。母さんからだった。
「すぐ行くさ。」
そう返事し、身支度を済ませささっと下に降りた。
テーブルには味噌汁とご飯があった。いつも通りの食事が食卓に並んでるだけだが、少し英司はホッともしたような感覚が思えた。そしてふと思った事が。
「真由美はどうしたんだい?」
英司は母に尋ねた。真由美とは彼の妹であった。
「真由美ならあんたが起きる1時間は早くもう家を出たわよ。」
部活の朝練か・・・。と英司は察し、食事を取った。
「それはそうと、そろそろお父さんがこっちに一旦帰ってこれるみたいよ!」
彼のお父さんは今、単身赴任をしており、長く直に喋って無かった。
「そう・・・」
英司は味噌汁をすすりながら適当に返事をした。
「あんた、嬉しく無いの?」
「いや。普通。」
彼のお父さん自体、あまり家にいた記憶が無く、仕事〉家庭といった印象があったため、著しくよいと思った事はあまり無かった。
「たまにしか帰ってこれないのも仕方ないじゃない。本職科学者なんだから。」
英司も分かっていた。
「興味ないってわけじゃないさ。嬉しいよ。」
朝ご飯も済まし、
「行ってきます。」
カバンを持ち、玄関から駆け出した。
英司の通う高校、織田高校へは自転車にて通学していた。
「よぉ!英司!もう大丈夫なのか?」
学校に着くと、友人が声をかけてくれた。快活そうな少年とそれとは少し反対の眼鏡をかけた少しおとなしそうな少年。
「初晴・・・恭介・・・。」
初晴、恭介と呼ばれた友人2人は英司と気の合うツレであった。
「もう大丈夫さ。念の為にもう1日病院にいただけだ。」
「お陰様で三連休はものの見事に潰れたとさ。」
と言ったのは初晴、おしまい。と付け加えたのは恭介であった。
「辞めてくれよ!結構気にしてんだぜ?」
と言ったが最後、みんなで笑っていた。その光景が英司にはとても新鮮で懐かしいものにも思えた。
「こら!そこ!さっさと並ぶ!」
そう言ったのは女性的な魅力を感じさせるクラスの委員長、角田だった。今から朝礼のようで、指示をだしていた。
「そんな怒らんでもええんちゃう?」
そう申し出たのは初晴だった。
「何ですって?」
委員長の目が光る。確実に初晴は「やられた」とも思った。
「もう一度言ってみなさい!」
「いや・・・何でもないっす・・・。みんな、並ぼうぜ?」
強引に誘うように引き連れて並ばされたのだ。
「英司君、怪我は大丈夫なの?
」
委員長に呼ばれ振り返る英司。
「ああ。心配ないよ。問題なしさ。」
なら、いいんだけど・・・と委員長は付け加えた。
英司自身、心配されるとは思って無かった為か、少しぎこちない返事をしてしまったようにも思えた。
少し時間が経った。朝礼も終わり、昼食時であった。また3人で机を囲んでいた。
「英司~。なんか可愛い子いない?」
言い出したのは恭介だった。
「何さ。いきなり。」
おかずの唐揚げを頬張りながら、一応の返事はした。
「委員長もいい線なんだが、性格がああだとね・・・。」
「そうなんだよ~。恭介はよく分かってらっしゃる!」
と初晴はどこかの元気ある店員のようになっていた。
そうかい。と英司は答えたが、彼らみたいには思ってはいなかった。
「お前、角田みたいなやつが好きなのかよ?」
恭介の質問はノリであったのはわかった。
「イヤ、ただただ真面目なだけじゃないか」
「まあ・・・そうだけどさぁ・・・」
論破されたかのように会話を辞め、手にしてあったパンを頬張る恭介。
「まあ、いいさ。さっさと食っちまおうぜ?昼からの授業までんな時間ねえしさ。」
英司はそう言ったあと残っていた弁当を一気に口の中に放り込んだ。
「ちょっと~。英司君」
クラスメイトの女子から声がかかった。
「英司く~ん。いつから君は女子からそんなにお声がかかるようになったんだい?」
初春がからかってきたが、うるせえ!と英司は言い返し、女子のところに向かった。
「なんだい?」
「ああ。僕が用があるのさ」
女子の横から出てきた同い年であろう端正な顔立ちをした男子だった。
「ちょっと来てもらえるかな?」
その少年は手招きをし、渡り廊下を抜け、階段の裏まで来ていた。
「ちょっと待ってくれよ・・・。一体なんだってのさ・・・」
英司の質問に応えるように
「僕は4組の北村誠二。こういうものさ」
さっと取り出してみせたカード。ショットガンのようなものがカードに描かれていた。
「クロノス・・・。お前も能力か・・・」
英司は動揺を隠せなかった。
「へぇ~。このカード、クロノスって名前なんだ。覚えておこう」
「ここで戦うつもりか?」
「いやいや。そんなまさか。ただただ君に会ってみたかったのさ。敬意を表するという意味でもね」
「どういう意味だ!」
「そうカッカしないでくれたまえ。君のコンビナートでの君の戦いがすごくてね。関心してるのさ。これで誰にも信じられず、行動を起こしにくかったどっかのテロリストも、アンダーグラウンドの如く活躍してた奴らも前に出てくる。社会もこの力を信じ、世界は大きく変わっていくさ。楽しい方へね」
その言葉は歪んだ笑顔に満ちていた。
「そんな・・・!俺はそんな事を望んでいない!こんな馬鹿らしい事!巻き込まれる人間はもういっぱいなんだ!」
「君がどう思おうと勝手さ。だけど、警察はもう隠すのは限界きてるだろうし、ここまで隠して傭兵の変わりなんかにしていた国家や、兵器会社を初め、戦争でしかご飯を食べれない奴らはこれを気に動き始める!楽しみだねえ!!」
ハッハッハ!!と嘲笑する誠二を我慢できず、英司は思い切り殴った。
「ふざけるな!許せないんだよ!そうやって!人の命をなんでもないように扱って!命はお前が甘やかして使っていいもんじゃないんだよ!」
端正な誠二の顔は歪んでいた。英司に殴られた箇所はより歪みが増しており、悲しい感情を生んでいたようにも見えた。
「ならどうするんだ!」
誠二の質問にも迷わず応えてみせた。
「俺がこのくだらない戦争を止めてみせる!」
「本気で言ってるのか?」
「ああ!こんなもんで命を失わなくていいんだ!ふざけやがって!神様だか誰だか知らないが、それは間違ってるんだよ!」
誠二はポカンとなった。彼は一体何を言っているのか。誠二にはおかしくてたまらなかった。
「君は笑わせられるのがとても得意に見える。神様が絶対なんて思ってないのか?」
「ああ。 あいにく無宗教なんでね。神様なんざ俺にはわからない」
ハッハッハ!誠二はまた嘲笑した。
「そうかい!なら初めに僕を止めてみなよ!止められたら僕は君を本物だと認めるさ。それまでは死なないでくれたまえ。君の命は僕がいただこうか」
そう言い残し、誠二は去った。昼のチャイムが何かをスタートさせた合図にも聞こえた。