目を開いた。LEDのライトがこうこうと光り、目に開いたばかりの瞳には多過ぎる明かりだった。
「う・・・眩しい・・・・・」
少年は手で顔を隠した。
「英司君・・・。目を覚ましたみたいですね。」
少年自身が英司と呼ばれたその自分自身と気づくのにそんなに時間はかからなかった。
「英司君。よくも生きててくれた」
白衣を着た、男の医者は優しく英司に語りかける。医者と呼ぶにふさわしいあったかな声。それをより思わせるように男はメガネをかけていた。
「俺、あまり前後の記憶が無いんです」
英司は切り出した。コンビナートにいたのは憶えている。何かと戦ったのも覚えているが、ほかを覚えてないのだ。
「そうかね。」
医者はコホンと咳を立て、
「君は爆発に巻き込まれたのだ。」
言われて少しは思い出した。コンビナートで交戦した俺は、敵の自爆に巻き込まれて・・・・
「死んでないんですよね?俺。ここは天国ってわけじゃないんですよね?」
別に間違った事を質問している気はなかった。あの時、本気で死んだと思ったのだから。
「信じてはいませんか?」
医者は冷静に聞く。
「いや・・・そういうわけでは・・・・」
外を見ると、夕暮れだった。陽は山に元の場所にあったかの如く収納されていっている。
英司はいつも見るこの夕焼けになぜだか柔和な思いを抱いた。
英司は医者に言った。
「綺麗ですね。」
医者は思いがけていなかった言葉を言った。
「あなたがこの夕焼けを守ったんですよ。」
「・・・。」
英司に自覚は無かった。守ったなんて考えたつもりも無かった。
「綺麗ですね。」
「ええ。」
そして医者と英司しかいなかったこの部屋に誰かが入ってきた。
「英司クン、ここですね」
たどたどしいとも思えず、だが、100%自然と思えない日本語を発した男が入ってきた。
金髪をしており、より一層それを思わせた。
「誰です?」
入ってきた金髪の男は
「oh!英司!ハジメマシテ!」
結構馴れ馴れしく喋ってきた。
「は・・・はじめまして・・・」
いきなり言われると英司自身ビックリしていた。何かしたわけでもないし。
「あんたは一体・・・?」
「自己紹介は後!まあ、あなたの仲間です。」
ニコッと男はそれ以上は自分から語るつもりは無かった。みたいだ。
「じゃあなんで俺は生きてる?あの男は?どうやってこれをどうにかしたんだ?」
英司は聞きたかった事を立て続けて聞いた。
「ちょ、ちょっと!いきなし3つはないわ!」
男は困惑しながらも、声を少し上げ、ツッコミをしてみせた。
「す・・・すいません・・・」
英司も反射的に謝った。
「まあOK!1つ1つ答えまShow!!」
意外にも陽気みたいなようだ。
「とりあえず、敵の男。彼は手にしていた爆弾を起爆させ、死にました。クロノスのカードはショーティーしか回収できませんでした。情けない話ですね。」
ポケットからその、ショーティーのカードを取り出した。
「あの・・・・クロノスとは?」
英司は唯一気になった単語を聞いた。愛理が言わなかった単語だった。
「カードのことです。今までは{アレ}のようにクロノスを呼称として呼べなかったんです。正式名称がなかったもんですから。ですが、あなたとあの男が戦闘中に男が落としたメモに記されたモノから拝借し、解析しました。つい2時間前のことです。」
「ついさっき決まったって事なのか」
とにもかくにも警察もわからない事だらけなんだろう。
「そんであなたが助かったのは、私の能力です。」
「カードですか?」
「まあ似てますが、結構違います。」
「?」
英司は少し戸惑った。
「あなたは手にするカードを全て使えますが、私はそうはいきません。」
ここと指さした先は頭だった。
「私は使えるクロノスのカードに制限があります。まあわかりやすく言うと、私は未完成品なんです。ですが、今のところ検知されてないカードの力が使えます。」
「検知されてない能力?」
「ハイ。例えば僕は時間を一定時間止める能力。その能力で少しだけ時間を止めてあなたを爆発の魔の手から退けました。どうしても100%にはいきませんでしたが。」
どうやら使える時間は4秒ないし5秒位なんですが。と、男は付け加えた。
「どうやって使えるかはどうわかるんです?」
「だからここなんですよ」
もう一度頭を指さした。
「ここでなんとなくわかります。」
「そんなアバウトなんですね」
「そんなもんです。元をたどればこのカードが何故武器に変わるのか科学的に考証、研究してもさっぱりなんですから。」
「はぁ・・・・。」
英司はこの戦闘を人間的、科学的に物事を考えているとは思って無かった。まあ高校生で、何も
得意でも無く、必死に生きることしか考えていない1の少年にはえらく奇天烈に思えた。
「あなたが聞いたように神が仕組んだモノなのであれば人知を超えた何かが働きもしますかね。」
ここからは理想論の話なのであろう。無宗教、お祈りも普段しない英司は全く興味がなく、退屈極まりないものでもあった。
「さあ、どうなんでしょうか。書籍に書いてるような神は人間に英知を授けるんですよね?」
英司の頭にある神はいいように描かれていた。それは昔からあるひっぺがえせない根底にあるイメージなのであろう。それがこの会話の答えの1つでもあった。
「どうでしょうか?神なんて人間が生み出した創造物なんて言われてるんです。常に真偽は不明。人間が生み出し、その実態を掴もうにも掴めない・・・・・そんな自己中心的な存在なんですよ。たとえ、神が何かする歌や小説もそれは人類が自分の都合よく描いた神なんです。実際問題、神が人間の体をしてるとは限りませんしね。」
コホン!と咳を立て、男は
「自己紹介遅れました。私はマット。マット・ニーベイ。アメリカ生まれですよ。」
「俺は英司。岡村英司です。こちらこそよろしく。」
オカルトが実在するかわからなかった英司には気の遠い話で、これから起こるいくつもの月日を辿らなければ会えない、もしくはその過程で尽き果てる命なのだから。