それでも司の話を明人は聞いた。
「俺がこんなことをした理由はなんだ?」
司は笑った。
「簡単だよ。この手段が後々幸せになっていくのをわかったからじゃない?」
「・・・・なんだよ、それ・・・・」
ここには用は無くなった。と告げ、3人は出て行った。
夜は耽る。満月とその周辺に仲良く星が廻る。月は太陽にそこのけと言われんばかりに跳ね除けられ朝が来た。
「行くぞ。」
雄也は明人と雛に指示を出す。
「僕たちがこの腐った世の中を潰す。準備はいいか!」
おう!と明人と雛は拳を掲げ、士気を高めた。
国会議事堂、誰もまごう事無い国を決める唯一の機関である。2030年にもなると明人の常識で知っている「それ」では無かった。まず、
「議員以外は誰も立ち寄れない」という事だった。
これは未来の明人がセキュリティという名目で作ったと言われるのだ。自分で作ったらしいのはわかったのだが過去の世界の明人にはくだらないの一言で片付いた。
もう一つは「国会議事堂のしきたりを捨て、組織が変わっている」というものだった。
2020年以降はモニターを使用しており、長机に敷き詰めるというサラリーマンのテレビ会議に近い状態になっていた。これがこの時代の教科書に書いてある。この時代の日本の政治改革であった。
「要はこの2つをついて、国会に潜入か。俺が指紋検査を退け、3人で潜入。お前らが控えの近くで待機しながら俺が本会議に潜入。・・・・うまく行くのか?」
だが自分の作った法律を逆手に取られるとは・・・。完璧な法は作れないのだろう。
全ては順調過ぎる程に成功していく。あとは2人が突入すればいい・・・!
ガチャン!と大きくドアが開き、2人が突入してくる。
「おとなしく手を上げろ!こちらは無益な殺生は行いたくない!」
その雄也の声に呼応するように明人が議員席から立ち上がる。
「雄也、雛、うまく行ったな。」
ニヤと明人が笑い、明人は立ち上がり、懐から銃を取り出し、未来の自分に向ける。
「やあ。俺。本当は気づいてたんだろ?」
首相席から1人の中年男がゆっくりと立ち上がる。未来の古谷明人である。
「過去からか・・・。分かってはいたよ。総てを知らない愚かな俺・・・・。」
明人が明人に語りかける。どうやらこの世界ではタイムスリップは大きなスキルでは無いようだ。
「俺を殺すか?少年?」
自分の圧倒的な威圧に少年、明人は押される。同じ人物とは思えない。
「質問だ!俺!何故こんな貧困を生んだ!」
「愚問だな!そうすることでしかこの日本は生きながらえない!」
威圧に押されるのもそうだが、言霊にはそれ以上の力があった。
俺はこのあとの人生に何が影響していくんだ・・・・?
脳裏に浮かぶ文字がそれしかなかった。が、今それを知る手段はない。
「これが日本を救う手段・・・?笑わせるな!一人の人間も守れてないくせにどの口が叩いてんだよ!」
「なら!少年!「大」を助けるためには「小」を切り捨てるしかあるまい!なにか手段があるなら言ってくれ!」
過去の明人は思う。未来の俺も迷ってるんだ・・・。このやり方に。本位では無かったんだ。それが分かってほっとした自分がいた。だけど、俺がここに来た理由。未来の自分を殺すことだ。
「ある。」
まだ子どもの明人は応える。
「確かに俺はまだ成長途中だ。だからお前から学んだ!お前がこのあと何を学ぶか知らないが、俺は人を諦めたくないんだ!」
過去の明人は引き金に力を込める。
「それがお前の答えか・・・?」
「ああ。迷いもあるが、迷ってばっかだと思うが、俺は少なくとも今、不幸になってる人は救ってみせる。約束するよ。」
「そうか・・・」
過去の自分に教えを説かれ、未来はフッと笑った。
「ならば、私は安心して行けるな。あっちへ。」
「ああ。安心してくれ。」
未来の自分の意思を汲み取り、引き金に再度力を込める。
「最後にいいか?」
未来は過去に尋ねる。
「いいぜ。」
「今、お前が住んでいた世界は楽しいか?」
「ああ。」
過去の少年は未来に弾丸を放った。一つの弾丸は霞むことなく、未来の心臓を打ち抜いた。これでよかったのだ。いや、こうしなければならなかったのだ。それでも少年は涙を浮かべる。
「ゆっくり、安らかに寝ていてくれ。何とかすっからよ。」
人を殺すとはその人物の意思を汲み取るという言葉を明人は聞いたことがあった。だからこそ・・・
「俺が作って見せるさ。そっから見ていてくれよ。」