生活に大きく関わっている暦は、時代の流れと共にその合理性を追い求め、定義を変遷させてきました。
なんでも自分で作りたい僕としては、現在、世界的に利用されているグレゴリオ暦にも、かなり疑問があるのです。今回はそんなグレゴリオ暦に代わるもっと合理的な新しい暦を考えていきます。
※この記事の目的は算数・数学に親しみ、日常的に数学的な見方考え方を用いることの楽しさを伝えることにあります。
※記念日や宗教等に由来する価値観について、この記事では無視して扱いますが、他意はありません。
グレゴリオ暦の弱点
生まれるずっと前からあって当たり前に過ぎるからって、見逃しているかもしれないけど、普段から使っているこの暦(グレゴリオ暦)には色々な問題が潜んでいると思うんだ。まずはそれを明らかにしていくよ。
問題点を探そう
(1)2026年8月30日は何曜日ですか?
こうやって聞かれても、よくわからないよね。
僕らの暮らしでは、休日や平日みたいな、曜日ごとに決定していることと、記念日や給料日みたいな日付で決定していることが両方存在しているよね。
だから、曜日の情報と日付の情報がどちらも欲しいって思っても、年ごとに曜日は変わってしまって、その両方を知るためには複雑な計算をしなくちゃだし、カレンダーも毎年別のものを使わなきゃいけないんだ。
(2)1月20日から4月10日までは何日間ですか?
これもなかなかわかりにくいね。
2月29日(閏日)があるかないかで答えが変わるなんていう、とんでもないひっかけ問題でもある…。ただ、考えにくくさせている原因は、月の日数が28,29,30,31日のパターンが複雑に絡まってできていることだと思うな。
(3)1年の半分は?1/4は?
春夏秋冬の四季があったり、前後期制などの制度があるのにも関わらず、365=5×73だから、1年の分割は5分割もしくは73分割しかできないんだよ。もっと約数が多い一年の日数だったらいいのにね。
これらは、特に生活のなかで重要になってくることを挙げてみたよ。
グレゴリオ暦は地球の公転周期(約365.2422日)を正確に反映させることに重きを置きながら、月の満ち欠けや創世記に由来する、月や週などの本来公転とは無関係である色々な要素を入れ過ぎていることで、日常的には使いにくいものになっている気がするよね。
僕たちは、数日ずれるくらいなら、地球の位置を正確に反映できていなくても構わないと思うんだ。でも、先人達が見出してくれた、この正確な公転周期への配慮は参考にしたいものでもある。ここからは、問題点を改善するように、次のような性質を満たす暦を考えていくよ。
(1)曜日一致性
(2)測定容易性
(3)分割可能性
閏週が可能な週とは
最も重要な(1)曜日一致性の問題を解決するためには、一年の日数が曜日の日数の倍数になれば良くて、それだけでは公転周期が狂うから、何かしらの規則によって閏日ではなく、閏週(特別に挿入された1週間)を設ければいいんじゃないかな?
ところで、グレゴリオ暦の閏日の正確な制定の仕方はを知ってる?
グレゴリオ暦の閏日の決め方
- 4の倍数の年には閏日がある
- ただし、100の倍数の年は除く
- ただし、400の倍数の年はある
そうそう、2と3の条件は100年に一度しか意味がないから、なかなか意識していないかもしれないけど、要するに、
365日を1年として400年のうちに97回の閏日をできるだけ均等に設けなさい。
ってことだね。
※より細かく調節するために閏秒というものもあるけど、これは1秒間なので、あってもなくても、生活にはそこまで支障はない。だから、今まで通り採用していくことにするよ。
400年が(365×400+97=)146097日となるけど、これを一つの塊として、元に戻る暦なら、長期的に見ても狂わない暦になるってことだね。
ここでこの146097を素因数分解すると、3×3×3×7×773となるから、曜日の日数である7でも割り切れることがわかる。
365になるべく近い7の倍数は364だから、1年を364日とした場合、閏週は400年に何度設定したらいいか考えると((365-364)×400+97)÷7=71で)71回だとわかる。
均等な配置をしたいなら、5の倍数の年に閏週を設けて、40の倍数の年ならば特別に設けない、ただし400の倍数ならば設けるのような感じかな。
こんな比較的小さな変更でカレンダーが毎年変わる事態は免れたけど、1週7日で1年52週つまり、7日×2×2×13となった1年にはどんな計算をするにしても、7の倍数や13の倍数が付きまとって、計算が複雑になってしまう。
これでは(2)(3)の問題は達成できそうにないね。
そこで、1週間の日数を変更してみよう!
別に、146097=3×3×3×7×773の約数なら構わないんだもんね。
大き過ぎず小さ過ぎない7の次に有用そうな数は9になるかな。曜日の命名には惑星の名前を使っているけど、大昔から発見されている惑星以外に天王星と海王星の2つが見つかっているわけだから、曜日を9に増やす妥当性もあるし、9の倍数の計算は比較的簡単だもんね。
365に近い9の倍数は360と369が挙げられるけど、360はとても約数が多い数だから、是非とも暦に採用させたい数だね。でも、誤差5日はあまりにも大きいからな〜。
そうだ!360日2回の間に1週間(9日)を挟んで、729日を新しく「1年」として定めてみるのはどうでしょう。つまり、今でいう2年の期間を新しい1年として、前後半という形で季節の1周を扱うんだ。
1年365日での2年は730日ですが、この暦での1年は729日となり、2年で1日しか誤差はない。1週7日制で364日を1年として、毎年1日ずれるよりは、小さいズレだね。
この記事ではこの暦をクリハロ暦と呼んでいくよ。
クリハロ暦のすがた
まず大きな変更点として、曜日が9つになったから、曜日の名前をつけるよ。
月は衛星だし、地動説も確かなものになったから、月曜日の代わりに地曜日、また新しく発見された惑星から、天曜日と海曜日を設け、並び順も分かりやすく太陽から近い順に並べよう。
「日、水、金、地、火、木、土、天、海」
それから、現代人としては表記にこだわるのも大切!
数字だけで表記できると整然とすると思うから、日曜日から順に、数字で1〜9の番号を振ることにしよう。
1週9日になり、季節の一周である半年は360日になったね。
つまり40週で半年が構成される。これはとても4分割しやすいので、10週間ずつ
「春期、夏期、秋期、冬期」
と呼ぶことにしよう。これがしっかり、その名の季節を表すようにするためには、年始はグレゴリオ暦の3月1日くらいにすると良いけれど、これも感覚で決めてしまうと定義として美しくないね。少し感覚的には後ろに傾くけど、客観的な事実である、春分、夏至、秋分、冬至が、その期の初日に来るようにグレゴリオ暦の3月21日からクリハロ暦の初日を開始することにしよう。
また、クリハロ暦の1年には、前半年360日と後半年360日、そしてその間に1週間があり、その間の週は「中週」と呼ぶことにするね。
「前春期、前夏期、前秋期、前冬期、中週、後春期、後夏期、後秋期、後冬期」
の9つの「期」(中週のみ1週間で他は10週間)が存在するってこと。この期にも1〜9までの数字を当てることにするね。
また、その期のうち、何週目なのかも0〜9の数字で書くことにするよ。(中週は0週目だけで終わり)
※10週間あるから、1桁で表すために0週から始まるのに注意
そして、グレゴリオ暦でいう400年、146097日の構成、つまり閏週の挿入ルールも考えよう。
729日を1年としていくと、200年は145800日となり、297日(33週間)足らないんだ。つまり、146097日の間に、閏週を33回入れる必要があって、6.06…年ごとに入れれば良いことになる。
そこで、6年を「1回り」(グレゴリオ暦の12年に相当するため)と呼んで、1回りの初めに閏週を設けることにする。閏週のある初めの年を「閏年」と呼ぶことにしようか。
だけど、これでは198年で33回の閏週を使い切ってしまうから、200年周期にならないね。それを回避するために、少し複雑だけど、11回りしたら1年平常年を設けることにするよ。
この挿入する平常年を「挿入年」と呼んで、すべてがリセットされる200年を「完全一回転」と呼ぶことにしよう。
1回り(6年)
「閏年 → 平常年×5」
完全一回転(200年)
「11回り → 挿入年(平常年) → 11回り → 挿入年(平常年) → 11回り」
という形。これで丁度、完全一回転の200年が146097日となったよ。
確かにそうだけど、11回りってグレゴリオ暦でいうところの約132年もあって、一生に一度経験するかしないかっていう大変稀な1年だし、中身はいつもの一年と変わらないから、そこまで気にする必要はないと思うよ。
また、閏週の期の番号は0として、中週と同じく週は0週のみとする。
これがクリハロ暦のすべての規則です!
クリハロ暦の表し方は、言葉で表す方法と数字で表す方法のどちらも分かりやすくなっているね。
「○○年◇◇期△週◎曜日」または
「○○-◇△◎」(◇と◎は該当番号)
って感じに、表せば良いよ。
例えば「1013年後秋期4週海曜日」というような感じ。
これを数字のみで表すなら「1013-849」となるね。
「1013年中週木曜日」であれば「1013-506」
「1013年閏週日曜日」であれば「1013-001」 って具合だ。
ちなみに閏年は、200で割った余りが
1,7,13,19,25,31,37,43,49,55,61/68,74,
80,86,92,98,104,110,116,122,128/135,
141,147,153,159,165,171,177,183,189,195
のいずれかである年になっている。
67年と134年が挿入年であるため、少し複雑だけど、
67年より前では6の倍数+1、
67年から134年の間では6の倍数+2、
134年より後では6の倍数+3
になっていれば、閏年ってことだよ。
ちょっと練習してみようか。
次の年は閏年?
450年
200で割った余りは50
50は67以下なので6の倍数+1のときに閏年
50=6×8+2で6の倍数+2なので閏年ではない。
983年
200で割った余りは183
183は134以上なので6の倍数+3のときに閏年
183=6×30+3で6の倍数+3なので閏年である。
と、完全一回転の200年があるのでそこまで複雑じゃないね。この世界では67と134という数が今よりかなり見かける数なのかもしれないね。
さて、このようにクリハロ暦を設定したけど、これで問題の(1)(2)(3)の性質はクリアできているかな?
(1)曜日一致性
これは言うまでもなく、曜日によって日付を与えるようになったので、完全に一致しているね。
(2)測定容易性
これもかなり易しくなった。例えば「1013-248」は「1013-134」の何日後でしょうか。1期は10週、1週は9日ですから、中週を挟まなければ(グレゴリオ暦でいう同じ年くらいの条件であれば)期と週の数字は、そのまま2桁の数字と捉えて引き算して求めらる。この場合は、11週と4日あるから、103日ってすぐに分かるね。
(3)分割可能性
生活ではほとんど半年を一区切りとして使うことになるだろうね。その半年は360日だから、2,3,4,5,6,8,9,10,12,15,18,20,30,36,40,45,60,72,90,120,180分割可能と素晴らしい。
と、すべての問題を解決することができたね。
さて、クリハロ暦いかがだったかな?
もっと合理的で分かりやすい新しい暦を考えられたという人は是非教えてね。
当たり前にあるものを疑ってみて、観察・考察することは思考力や想像力を鍛えることになるよ。クリハロ暦を採用したら、世界はどんな風に変わるだろうね?
1週間が9日もあるのでから、週休3日制が主流になるかもしれない。また特別な週である中週はゴールデンウィークのようになったり、閏週がある新年には大きな行事が開かれるなんてこともあるかも。
色々なことを想像しながら、数学的な目で日常を観察してみよう。きっと君にしか見えない面白いことが潜んでいるはずだよ。