当ブログは、自閉スペクトラム症の当事者である僕が、いつも見ている世界をできるだけ詳細に言葉にしていくことで、皆さんに他者の価値観を鑑賞していただく試みです。
僕はVOCALOIDを使って作曲をするのが趣味で、20曲ほど作ってきました。初めにおすすめのものを、適当にいくつか貼っておきます。もしよければご視聴ください。
また、こうした活動の中で、作曲はもちろんですが、作詞をすることもあります。
特殊な知識を要する作曲と違って、作詞は誰でも始められるものです。替え歌などしたことがある方もいるんじゃないでしょうか?
しかし、“いい歌詞”を書こうと思うと途端に難しく、思っている以上に技術がいるものだと感じています。ちなみに、作詞をしてから作曲をする人もいますが、今回は作曲されたものに歌詞を当てて書くものとします。
僕もまだまだ勉強・研究中ではありますが、作詞をするときに考えることについて、基礎的な部分を少しお話ししてみたいと思います。
主題と全体の流れ
韻を踏みたいとか、こんな言葉を使いたいとか、好きなアーティストたちに憧れて、細かいことばかり考えたくなっちゃうけど、まずはしっかり、全体を通して歌いたい内容を決めよう。
適当に歌い始めてしまうと、とてつもなく薄くダサい歌詞になってしまうしね。
そのためにも、主題(テーマ)は丁寧に決める必要があるよ。
ダサい歌詞って、ダサいメロディより作品性を落としてしまう気がするし…
大事なのは「細かく設定を考えること」
《NG例》
・「さあ気にも留めないで」と「先に求めないで」で韻を踏みたい!
・なんとなくカッコいいロックにしたい!
・渾身のラブソングにしたい!
方向性だけ決めるような適当な設定ではいけない。「毎日一緒に下校している中学生を想像しよう」みたいな具体的なもので、歌詞で書くことができる外側までを丁寧に描いていくのが大事だよ。そしてもちろん、音楽に適合するように、音楽から得られたイメージを膨らませていこうね。
それから物語みたいなものでなくても大丈夫。最たる例だと、言葉遊びをテーマにしているものとかね。とにかく「この曲で何を伝えたいか」と真剣に向き合おう。
このテーマ決めは、作者のオリジナリティーが発揮され、このブログのテーマでもある「個人がどのように世界を観察しているか」が一番見えてくる場所だと思うから、みんなも日頃のアーティスティックな感性をぶつけようね。
ただ少し、アドバイスをするなら、伝えたいメッセージはできるだけ絞ろう!ということ。あまりにも複雑で膨大な内容になってしまうと、逆に何も伝わらないという悲劇が待っているから、気をつけよう!
それでもどうしてもテーマが決まらないという場合には、自分で「タイアップのお仕事が来た」って想像してみるのがおすすめ。
好きなドラマやアニメ・漫画とかの主題歌の担当することになったとして、どんな歌詞がいいかな〜なんて考えると、かなり具体的で、すでに出来上がっている世界観があるから簡単に深い歌詞が書けると思うよ。
全体を通しての主題を決めたら、次は各セクションの展開を決めるよ。
曲には通常、
A→B→サビ→A→B→サビ→C→大サビ
みたいな、それぞれのメロディを一定のルールで繰り返す展開があるよね。このそれぞれについて、どんな内容にするかを決めていくんだ。
サビは特に重要で、最も伝えたいことを爆発的に表現する必要がある。そのために、Aメロ、Bメロでは状況説明やサビのメッセージに至るまでの葛藤などを大切に積み上げよう。
それから、同じメロディの部分では、同じまたは似た言葉を使った方が曲として一貫性が出るよ。また、キャッチーなメロディの部分では、インパクトがある歌詞や歌っていて気持ちのいい歌詞にするといいね。
こうやって、パズル的にどんなことを書くかだんだんと決まっていくんじゃないかな。二番では一番と対称的な内容にさせたり、状況表現に使った語句を比喩的に感情表現に使ったり、過去から未来への時間経過をさせるなど、伝えたいメッセージに合わせて、工夫をしてみよう。
音調・強調・音数
次は全体の内容を度外視して、個々の歌詞と音程などの関係といった、細部の表現技法について話していくよ。
音調(イントネーション)
単語にもともとある音程のようなもの
強調(アクセント)
単語の強く発音をする部分
話し言葉にはもともと音楽性があるものなんだよ。特別な理由がなければ本来の音調・強調はメロディの音程・強弱と合わせた方が違和感がなく、聴き心地がよくなるから頑張ってみよう。
そのためには「普通の歌詞を朗読してみる」なんて方法が効果的だよ。
例えば、「かえるのうたが」と普通に読んでみよう。
「かえるの」で音程が上昇して「うたが」で下降しているよね。これはドレミファミレドの音階に適合してるね。強調だって「ドレミファ」と「ミレド」に区切るような効果を与えていて、歌に表情がついているみたいだね。
それに、「きこえてくるよ」の歌詞も「かえるのうたが」と同じ構成になっている。『かえるのうた』ってなかなかよくできている歌詞なんだね。
また、感情を乗せるのも大切だよね。
強調で考えたことは高々「その周りと比べての強弱」だったけれど、音楽では一曲やセクション全体に対しての、その部分の強弱が感情を乗せるにあたって大切になってくる。
落ち着いたメロディに過激な歌詞を入れたり、印象的なメロディに接続詞だとか感情の込もりにくい言葉を入れると、あまりにも歌っていて気持ちよくないものになってしまうんだ。
感情がゴリゴリに表れている『うっせえわ』に「あなたが思うより健康です」という歌詞があるよね。これを「健康と呼ばれている私」と替え歌してみよう。内容はさほど変わっていないけれど、なかなか気持ち悪いと思うの。これは本来「健康」が入って飛躍する印象的なメロディの部分に、意味的にほとんど不必要で、文章にするためだけに存在している「いる」が入ることで適当に作詞した感が出てしまっているからだろうね。
もっと細かい話でいえば、日本語の一文字一文字の特性も知っておくといいよ。大切なこととして「一文字 ≠ 一音」だということを忘れてはいけない。一音が必要なのは一つの文字ではなく、一つの母音に対してなんだ。
これらは、前後の音に吸収されて一音で発することがかなり簡単だよ。(他の音でも一音に詰め込めるのもあるんだけど、今回は割愛)
そうだ、実感するために例として「かえるのうたが」の音程で、「(トイ)(レット)(ぺー)(パー)(が)(きれ)(るん)(です)」と歌ってみて。
できたかな?
一音に詰める子音を多くすると、タカタカとリズミカルになって、逆に少なくすると、メッセージが短く聞き取りやすくなるから、力強くなる感じがするね。同じメロディであっても、子音の量を変えるとかなり印象が変わるから、一番と二番で飽きさせないように印象を変えたいときなんかにも使える技だよ。
作詞をするときは、こういった細かい技も取り入れながら、音楽で伝えたいメッセージを最大限乗せられるように頑張っていこうね。
それなら、作曲も楽しいから是非やってみてね!まだ解説はできないけど…。