クラシックコンサート日記

クラシックコンサート日記

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2025年02月15日(日) 14:00- サントリーホール 赤坂

□マーラー:交響曲第8番 変ホ長調 「千人の交響曲」

指揮:エリアフ・インバル
ソプラノ:ファン・スミ、エレノア・ライオンズ、隠岐彩夏
メゾソプラノ:藤村実穂子、山下裕賀
テノール:マグヌス・ヴィギリウス
バリトン:ビルガー・ラッデ
バス:妻屋秀和
合唱:新国立劇場合唱団、東京少年少女合唱隊
東京都交響楽団

素晴らしいマーラーであった。

2週間ぶりのコンサート。2月4日の読響は用事で行けず、8日のF.ジョルダン/N響のワーグナーは是非行きたかったのであるが、雪で断念。久しぶりに聴く生の演奏で、これほどの名演を聴けたのは、とても嬉しい。

マーラーの交響曲は実演で良く聴くが、千人の交響曲は今まで3回しか無い。1回目は40年以上前だろうか、若き日の小澤征爾/新日本フィル、2回目は12年前のノット/東京交響楽団、3回目は10年前のハーディング/新日本フィル。
それぞれ一流指揮者でのいい演奏だったと思うが、今回のインバル/都響はそれらをはるかに凌駕する名演であった。

先月のソヒエフ/N響の6番は、うまい演奏だが何かマーラーの音楽とは異質の演奏のようで違和感があったが、こちらはどの部分をとってもマーラーに相応しい艶やかで輝かしい音、表現がとられていて、最上のマーラーの音楽を存分に味わったという印象である。

インバルのマーラーを聴くのは2回目。先回は10番という地味な曲だったので、本格的な交響曲をインバルの指揮で聴くのは初めてというべきか。インバル/都響のマーラーサイクルは3回目ということだが、前2サイクルを聴けなかったことが心残りである。

それにしても90歳という年齢で、これだけの大曲を一瞬の弛緩もなく、極めて見事なコントロールで巨大な音楽に作り上げた指揮者が、今まで存在したであろうか。

第一部出だしから、強力な推進力でのもの凄い迫力の音で驚いた。迫力がありすぎて、合唱などは少々粗い声に聴こえた程である。程なく粗さは消え、立体的な合唱の声と、張りのある独唱陣の声、輝くオーケストラの響きとオルガンの音で、会場が溢れんばかりの音で満たされた。もの凄い音量ではあるが、合唱、オケ共に十分な厚みを持った柔らかい音で、全くうるさくない。

前半は、やや速めのテンポでの若々しい演奏であったが、後半は徐々にテンポが遅くなり巨匠風の巨大な音楽に、しかし音楽に弛緩した印象は全く無い。第一部後半での何かが起こったようなオケの燃え上がるような演奏は凄味があったし、最後のクライマックスは、正面のオケと合唱に加え、二階のバンダにより、前方、天井、全方向から音が降り注ぐような圧倒的な音と高揚感で、しびれた。

今まで、オケ横の安い席でしかこの曲を聴いたことが無かったが、今回1階やや後方、中央の席で聴いて、初めてこの曲の尋常ならざる巨大さを実感した。

第二部は、木管の柔らかい音で始まり、オケと合唱の抒情的な表現が続く。7人の独唱陣は、バスが今一歩だったものの、他はそれぞれ見事な歌唱。ソプラノのファン・スミ、エレノア・ライオンズは、透明で伸びの良い声、メゾソプラノの藤村実穂子は良く通る深い声、テノール、バリトンは存在感のある声であった。

第二部最後のクライマックスは、美しい響きを保ちながらの十分に音量を抑えた深い表現の神秘的な合唱から始まり、立体的な合唱とオケの響きが徐々に表情を変え、二階のバンダも加えた壮麗な響きで、全く作為のない自然な音楽の運びでの、熱く高揚感に満ちた巨大な音楽になる様子は、本当に感動的で、CDでは全く味わえない素晴らしい体験であった。

演奏終了後は、指揮者が棒を下すまで静寂が保たれ、棒を下した後は、サントリーホールでめったにない程の熱狂的な拍手とブラボーが沸き起こり、オケが引いた後、2度インバルのソロカーテンコールがあった。

都響はマーラー演奏が得意なオケで、ほぼどの指揮者が振っても見事な演奏になるが、インバルが振るとこうも違う演奏になるのだろうか。

インバルの作為の無い自然で雄大なマーラーを聴いてしまうと、カーチュン・ウォンのマーラーはダイナミックだが、少々人工的な感触と音楽の固さを感じてしまう演奏だったような。。。6月にカーチュン・ウォンが指揮する千人の交響曲がある。チケットを買おうと思っていたが、どうしようかしら。