学生の頃、何かの研修で「通夜の客」というテーマでディスカッションをした記憶があります。
内容についての記憶は定かでは無いけれど、自分の通夜に誰が来てくれると思うか書き出して、今自分がもっている交遊関係を見つめる、というような話。自分が書いた相手が必ずしも自分の名前を書くとは限らない、というオチだけは覚えています。

一昨夜は夫の伯母(義母の姉)の通夜でした。

癌で亡くなったとは言え、86歳といえば大往生と言っていいのかな。私はこの伯母さんが大好きでした。

夫と結婚してからことあるごとに義父側の親戚は意地悪な人が多く時には泣いたりしたこともあった私ですが、この義理伯母だけは優しくていつも私をさりげなくフォローしてくれた人。懐が深くて正義感が強く機転が利いてポジティブで、本当に素敵な方でした。

最期のお別れは感謝の気持ちをこめて見送りたいと思っていたので、みんなで参列することに決めました。

たまたま仕事が休みだった私。学校から帰ってきたタクに宿題を済ませるように話す。

通夜と聞いて妙に張り切るタク。
お目当てはスーツを着ることだったらしい。

宿題の書き取りを終わらせ、スーツに手を通す。
「おおぅ!カッコいい~!お父さんみたいになった! \(o⌒∇⌒o)/」と大はしゃぎ。
洗面所の鏡の前で色んなポーズを決めながら、1人スタジオアリス状態。

百均で買ったとはいえ黒いネクタイもしめ、大人の階段登ったシンデレラ?大人気分満載ではしゃぎすぎ、と父に釘を刺される。

道路が混むと大変だから、と夕方早めに車で出発。

有料道路を下りて幹線道路に抜けるカーブで、私は思わず涙が込み上げてきました。

実はお通夜が営まれるお寺はかつて結衣の入院していた病院病院の近く。懐かしいカーブを通り抜けたら、大好きだった義理伯母と1月に亡くなった結衣への思いが交差して、勝手に涙が溢れてきました。

このカーブは臨終の近づいた結衣への最後の面会を急いだ道だ、と気づく間もなく涙が勝手に溢れてきて、しばし色々なことを思い出していました。

お寺に着いて、天真爛漫に笑う伯母の写真があしらわれた祭壇を見て、つーんと胸がいっぱいになりました。
おりしも嵐のような雨の中、参列客とテントの下で焼香を待つ間に、色々な思いの涙が溢れて来ました。

焼香を済ませ、親族への通夜振るまいの席に通され、待つこと1時間。

タクは並べられたオードブルやら握り寿司に「わあぁ~、うまそぅ~ (≧▼≦;)」と勝手におしぼり開けている汗。しまった!タクはきっと腹ペコだ。ご馳走並べられてやる気満々…汗

あわてて「食事に来たんじゃないからね。帰りにレストランナイフとフォークに行くから、ほどほどにしてあせる。献杯が済むまで箸は割っちゃダメ!」と釘を刺す。

よだれ垂れそうなタクをなだめて待っていると、義母の兄が献杯の挨拶。
献杯。
タク「いっただきまぁ~すナイフとフォークニコニコキラキラ」。うーん、ご挨拶の声がデカイあせるあせる 。もりもり食べるナイフとフォークニコニコタク。はっ、恥ずかしい~。
(/\)\(^o^)/

周囲の失笑をかっている。さらに、人見知りというものを知らない息子。初めてお会いする方たち相手にまあ語ること、語ること。汗汗汗

ご長男のお嫁さんが通夜客に参列のお礼のお酌にまわった時、私が義母の長男の嫁です、と自己紹介をするやいなやタク大はりきり。「まあ、簡単にいえば、こっちがおばあちゃんの長男で、こっちが長男の嫁、僕がその子供です。一人っ子なんです。」と勝手に紹介を始めた。
周囲は失笑を越えて大爆笑。あわててタクの口をふさぐ私。

そんな調子でタクのおしゃべりは止まらず。どこに住んでいるの?と聞かれれば住所の枝番まで答え、ドラえもんの話から学校生活に至るまで、延々語り続けて笑いを取っていく。

これ以上タクのワンマンショー状態はいかがなもの?というのと翌日の学校もあるので途中で退席することに…。

タク、スクッと立ち上がり話を聞いて下さった聴衆の皆さんに深々と頭を下げる。
「それでは皆さん、今日は本当にありがとうございました。またお会いする日までさようなら。」なんて、お前は喪主か?みたいなセリフ。いやいや、ディナーショーと勘違いしていないか?
聴衆の皆さん、「まあ、これはこれはご丁寧に…」と言いながら大爆笑となる。

宴席を抜けて、雨の中駐車場まで行く道で、スッテンコロリーンと転ぶタク。
「浮かれ過ぎだ!」と父に叱られる。

車の中で思わず「ああ、今日は楽しかったぁ~。…あ、ちょっとは悲しかったんだけど…」とつぶやくタクに父は「通夜の席なのに!」とお説教。

そうかな?
私は違うと思うよ。

義理伯母はくよくよ暗いのが嫌いな人だった。弱音を吐くことなく、「私が戦っている相手は病気だから、私が愚痴を言ったらそれは病気に負けること。だから私は病気に負けたくないから愚痴は言わない」と最期まで弱音を吐かずに逝ったと聞きました。

なかなか子供に恵まれなかった私たちに、タクが生まれてから、お会いするたびに「タクちゃんが生まれて良かったわねえ。」と言って下さった伯母さん。

しんみり暗いお通夜より、すっとぼけて笑いをとっていたタクに、むしろ喜んで下さったんじゃないのかな。
賑やかな席が好きだったし、いつも皆を笑わせて天真爛漫な笑顔が素敵だった伯母さん。
みんながあなたのファンでした。

通夜の客に起こった笑い、タクと私の心からのはなむけです。
タクの言葉じゃ無いけれど、またいつかお会いする日まで。さようなら。