定年間近のその先輩看護師は、以前にもトイレトレーニングで「おしっこ完璧なのに、ウンコだけはわざわざ紙パンツに履き替えてパンツの中にする。履き替える手間の分トイレへ行けば良いのに」とぼやく私に「いいの、いいの、そのままで。今はそれがタクちゃんのこだわりだから。無理やりは絶対駄目。こだわり直したら、タクちゃん壊れるよ。“今はこうしたいのねー”と認めてあげなさい」とアドバイスしてくれた人だった。
そのアドバイスの数週間後、便秘したタクに浣腸したことをきっかけに、あっさり紙パンツは終了となった。「まだ残っているから紙パンツでしたら?」と言っても「もうウンコはトイレでする!!」と二度と使わなかった。
けれども、「大玉さん」の話はそれから実に2年間続くことになる。話のスケールもどんどんはずれて、職業と居住地を転々とし、子供は250人までに増えた。
大玉さんの話をするタクは相手を選ばない。夫の母や夫の妹にまことしやかに語る、語る、語る。
最初こそ、「大玉さんて誰?」と言ってた義母も、タクの話を楽しそうに聞くようになった。
そう、大玉さんの話は面白い!豪快でチャレンジャーで、家庭的。いつしか私も「今日の大玉さん」をワクワクしながら楽しむようになった。
そんな風に意気揚々と大玉さんについて語るタクを見て、義妹が「良いなあ」とつぶやいた。良いって、何が?所構わず、相手構わず話し出すんだよ。びっくりする私に義妹は言った。
「イマジカルフレンドって、いうんでしょう?『いけちゃんとぼく』って、知ってる?その子にしか見えない友達がいて、子供の時だけ限定で見えるの。うちの子にはどうやらいないらしい。タクちゃんが羨ましい…」。
イマジカルフレンド?何だか横文字にするとカッコいい。今まで空想とか妄想しか言葉を思い付かなかったから、タクは大玉さんに選ばれた特別な子供と言うわけか…。期間限定なわけね。
でもその反面、いつか居なくなっちゃうんだ、大玉さん。そう思うと会ったこともないのに、いつか別れの日が来ることが寂しくなったりする。
タクのクラスのいじめっこが、「ねえ、タクのお母さん!大玉さんて本当にいるの?」と直球を投げてきた。「うーん、どうかな?」お茶を濁す私を白黒しかないお子様は許さない。
「じゃあ、会ったことある?」「おばちゃんは無いけどねえ」「やっぱり!大玉さんなんて居ないんだ!」
ああ、これじゃあタクは嘘つきって思われるな。
このいじめっこはすぐ手を出すくわせ者。他の子のお母さんが、乱暴者だから近づきたくない、って言ってたっけ。いじめられちゃうかもしれない。大玉さんの話は家族間限定にするべきか。
そんな心配は無用だった。周りの子供達が寛容だったのか、大玉さんの話がよほど面白かったのか、はたまた相手にされなくなったのか、大玉さんはなぜか公認されたのだ。
続きます。
そのアドバイスの数週間後、便秘したタクに浣腸したことをきっかけに、あっさり紙パンツは終了となった。「まだ残っているから紙パンツでしたら?」と言っても「もうウンコはトイレでする!!」と二度と使わなかった。
けれども、「大玉さん」の話はそれから実に2年間続くことになる。話のスケールもどんどんはずれて、職業と居住地を転々とし、子供は250人までに増えた。
大玉さんの話をするタクは相手を選ばない。夫の母や夫の妹にまことしやかに語る、語る、語る。
最初こそ、「大玉さんて誰?」と言ってた義母も、タクの話を楽しそうに聞くようになった。
そう、大玉さんの話は面白い!豪快でチャレンジャーで、家庭的。いつしか私も「今日の大玉さん」をワクワクしながら楽しむようになった。
そんな風に意気揚々と大玉さんについて語るタクを見て、義妹が「良いなあ」とつぶやいた。良いって、何が?所構わず、相手構わず話し出すんだよ。びっくりする私に義妹は言った。
「イマジカルフレンドって、いうんでしょう?『いけちゃんとぼく』って、知ってる?その子にしか見えない友達がいて、子供の時だけ限定で見えるの。うちの子にはどうやらいないらしい。タクちゃんが羨ましい…」。
イマジカルフレンド?何だか横文字にするとカッコいい。今まで空想とか妄想しか言葉を思い付かなかったから、タクは大玉さんに選ばれた特別な子供と言うわけか…。期間限定なわけね。
でもその反面、いつか居なくなっちゃうんだ、大玉さん。そう思うと会ったこともないのに、いつか別れの日が来ることが寂しくなったりする。
タクのクラスのいじめっこが、「ねえ、タクのお母さん!大玉さんて本当にいるの?」と直球を投げてきた。「うーん、どうかな?」お茶を濁す私を白黒しかないお子様は許さない。
「じゃあ、会ったことある?」「おばちゃんは無いけどねえ」「やっぱり!大玉さんなんて居ないんだ!」
ああ、これじゃあタクは嘘つきって思われるな。
このいじめっこはすぐ手を出すくわせ者。他の子のお母さんが、乱暴者だから近づきたくない、って言ってたっけ。いじめられちゃうかもしれない。大玉さんの話は家族間限定にするべきか。
そんな心配は無用だった。周りの子供達が寛容だったのか、大玉さんの話がよほど面白かったのか、はたまた相手にされなくなったのか、大玉さんはなぜか公認されたのだ。
続きます。