海堂尊さんの『極北クレイマー』を読みました。

極北クレイマー/海堂 尊
¥1,680
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財政難の極北市にある赤字病院に左遷された医師の孤軍奮闘記。

なんともシュールな展開の物語…ですが、現実、医療現場なんてこんなものかもしれないなぁ
と思うところもあり、考えさせてもらいました。

日夜問わず市民のために働いていた三枝医師が不幸にも、
患者さんを一人助けられなかったために
医療事故と訴えられて逮捕される場面は悲しいです。

だから産婦人科や小児科は医者が少ないんだろうなぁ、と思ってしまいました。

☆3.5
東野圭吾さんの『白銀ジャック』を読みました。
白銀ジャック (実業之日本社文庫)/東野 圭吾
¥680
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こういうミステリーも書くのだなぁ、とまた感心してしまいました。

『白夜行』のような暗い物語より、こちらのほうが、アクがなくて面白いです。

衝撃さでは『白夜行』のほうが遥かに上回りますが、
こういうシンプルで、それでも犯人が最後まで分からない、というのは名作だと思います。

気軽に読める作品でした。

☆3.5
伊坂幸太郎の『砂漠』を読みました。
砂漠/伊坂 幸太郎
¥1,600
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4人の学生が、楽しくも甘酸っぱい大学生活を謳歌する物語。

不器用ながらも友情を深めていく彼らの姿がまぶしくも好ましいです。

☆3
和田竜さんの『小太郎の左腕』を読みました。
小太郎の左腕/和田 竜
¥1,575
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***あらすじ***
1556年秋、領土争いを名目に戸沢家と児玉家が激突した。
戸沢家に仕える重臣であり、国の皆から好かれる武将、林半右衛門は、
深手を負い戦場から落ちる途中、猟師の要蔵と孫の小太郎に出会う。
隠れるようにして暮らす彼らを奇妙に思うが、半右衛門は丁重なもてなしを受け、翌日城へと戻った。
後日、半右衛門は、要蔵から彼らの正体を知り、どうしても小太郎を戦に使いたいと思うようになり
そのために彼らを卑怯な罠で騙し、小太郎を無理に戦へと巻き込む。
結果、戦は戸沢家の勝利に傾くが、我に返った半右衛門は己の卑怯さを責め、
武将としての己を疑うようになっていく…
**********

半右衛門の武将としての器の大きさ、育ちの良さが気持ちよいです。
部下を守らないといけないために小太郎を騙す、嫌な役回りですが、
それを誰のせいにもせず、ただ己を責めるところに感心しました。

上の立場にある人は、下を守るために、嫌なことをしなくてはいけないんだよなー…
と勝手に仕事に置き換えて考えてしまいました。

ただもう少し、生き生きとした表現力が欲しいなぁと思いました。

☆3.5
池上永一さんの『テンペスト』を読みました。
テンペスト 下 花風の巻/池上 永一
¥1,680
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***あらすじ***
琉球王国の空高く、三十五匹の龍が駆けていく嵐の夜、
お家再興のため男児を待ち望む孫家に新しい命が生まれた。
母親は命を落としてしまった難産の末、生まれてきた赤ん坊は女児である。
男児でなかった失意のため父親は子に名を与えることもなく、女児は自らを「真鶴」(まづる)と名付けた。

父親から無視され続け十歳を過ぎた頃、養子の兄、嗣勇(しゆう)が父のスパルタ教育に耐えきれず逃亡してしまう。
兄に代わって真鶴は男と偽り「孫寧温(ねいおん)」と名乗って王国の科試(役人になるための国家試験。500倍以上の倍率の難関である)を受験し、13歳にして見事合格。
孫親雲上(そんぺーちん)として王宮に仕えるようになる。

同じく15歳にして科試を合格した秀才、喜舎場朝薫(きしゃばちょうくん)という友人と共に、
国の傾いた財政を立て直すため奔走するが、その才能をうとむ者も多く、王宮に政敵は多かった。
特に王の妹であり贅沢三昧な暮らしを送る聞得大君(きこえおおきみ)は
寧温の正体は真鶴という女であると見破り、寧温を脅迫して政治に利用するようになる。
それは、政治に誇りをもつ寧温にとって何よりの屈辱であった。

また年頃を迎え、寧温は薩摩藩の士族である朝倉雅博に恋をしてしまう。
王国の繁栄のため、自分の中の「真鶴」を打ち消して政事に没頭しようとするが恋心は思うように抑えきれず、
次第に、真鶴へと戻り王宮での辛いことは全て忘れてしまいたい、と思いつめ、辞表を出して王宮を去る。

そんな中、国王である尚育王(しょういくおう)が崩御する。
まだ幼い尚泰王が第十九代国王となり、あらゆる者の策略によって国の政事が乱れ始める…。


世界では清国が阿片戦争により英国に破れ、日本も黒船の来航により鎖国時代が終わった。
各国が緊迫した情勢を迎える中で、武器を所持しない、例え持つならば筆のみという平和を愛する琉球王朝もまた、独立国家でいられるはずもなく、最後は日本に沖縄県として植民地化されてしまう。
琉球王朝の最後を駆け抜けた一人の女性の数奇な半生を描く。

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登場人物の豊かな表現力に感動しました。
王宮を駆けまわる寧温の息遣いが聞こえてくるような、生き生きとした外側の表現力だけでなく、
内面もまた、人間らしい彩りと輝きをもって語られています。

沖縄らしい、大らかで優しく、くじけない強さをもちつつも、愚かであり、苦しみから逃げる弱さも持っている。
人物の一面のみをとらえ物語をつづるのではなく、どの人物にも豊かな表情を与え、
それぞれが、転んで泣いたり、誰かに支えられて笑ったりしています。

個人的には聞得大君の生涯に思うところがありました。

生まれたときより王宮で贅沢な暮らしを送り、人の心を巧みに掌握しながらも、その傲慢さから
寧温により追放され、ユタ(低俗な巫女)となり、遊女となり、やがては最下層の乞食に身を落としてしまいます。
それでも王族としての誇りを忘れず、機を狙っては寧温へ恨みをはらそうとする彼女のしたたかさ、そして、
最後は聞得大君として喜びをもって死んでいく姿に胸をうたれました。

時に滑稽ではありますが、それぞれが強い信念を抱きながら、美しい王宮を舞台に活躍します。

最後、50を過ぎた真鶴が、日本に侵略された沖縄を眺めながら、雅博に語る言葉があります。
「新生日本に気品と風格を望みます。どうか琉球を愛し続けてください。それが民の願いです」
この後、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦を迎えることを思うと、この言葉が胸に迫ります。
気品と風格という言葉は、今の日本には最もふさわしくない言葉ではないでしょうか。
どうでもよい議題を討論している国会をみていると、あほらしくて涙も枯れてしまいます。


『風車祭』と同じように、愉快で笑いながらも最後は心を動かされる、
池上永一さんならではの温かみのある文芸作品だと思います。

☆5