潤くんが連れて来てくれたのは行きつけのお寿司屋さん。
潤くんが家族ぐるみで仲良くさせてもらっているお店で、私も久しぶりに連れて来てもらったな。
「こんばんわ。」
久しぶりねって女将さんに優しく出迎えてもらって、カウンターの一番奥に案内されて。
それから潤くんと並んで座って、ご主人にお任せでお願いして。
「今日は?お仕事忙しかった?」
『ん?まぁまぁかな。でも、こうして早く帰って来れたしね。フフ』
「もしかして、最初からそのつもりだったの?」
『ん?別にそうでもねーけど…』
「けど?」
『フフ…』
「朝すごく緊張しながら職場に行って、みんなに優しく出迎えてもらったら余計に申し訳なくなっちゃって…だから頑張らなきゃって余計に肩に力が入っちゃって…だから…」
『だから?フフ』
「潤くんのメールが嬉しかった…////」
そんな私を何も言わずに横目で見ながら、お茶を啜る潤くん。
やっぱり潤くんの作戦だったのかな?
何でもお見通しで、いっぱいいっぱいになっているであろう私を想像して、先のことまで考えて…
『ほら、食べな?フフ』
「うん…」
元々常連さんばかりのこのお店。
でも今夜は潤くんが来るからと、ほぼ貸し切り状態。
潤くんと外でお食事デートってだけで嬉しくて顔が自然と緩んでしまうのに。
ここは味方ばかりだからと、隠すことなく堂々といられるから…より一層…
「嬉しい♪んふふ♪」
潤くんは運転があるから飲めなくて、でも彩は飲みなよ?って進めてくれた。
今夜は嬉し過ぎて、日中の慌ただしさから解放されて、いつにも増して上機嫌でほろ酔いな私。
珍しく日本酒のスパーリングなんかを頂いたりして。
じんわりと温かい気持ちと、飲んでるからだろうか?ふわふわしたこの感じ。
「幸せ♪んふふ♪」
『そりゃあ良かった。フフ』
「潤くんは?幸せ?」
『そうねぇ。フフ』
「何か私ばっかり浮かれてる~」
そう言って潤くんの肩を軽く叩いてみるのだけれど。
『何が?フフ』
「私ばっかり好きみたい。」
『フフ…』
余裕の潤くん。
すると…
ブーッ・ブーッ・ブーッ…
カウンターの隅に置かれた潤くんのスマホが鳴った。
「出ないの?」
『うん。』
「電話してきてもいいよ?」
『別にいいよ。』
そう言って、ちらっと画面を見ただけで、再びカウンターにスマホを裏返して置いた潤くん。
「浮気?くす(笑)」
『は?ちげーよ。』
「本当に?」
『お前さぁ…ったく。』
別に本気で思っているわけではないけれど。
何となく、ねぇ?
冗談だよ?フフ
「浮気しちゃダメだからね?」
『してねーし。』
「ならいいけど。くす(笑)」
『お前さぁ、俺がどんだけ…』
「ん?」
『後で覚悟しとけよ?』
後でって…?
何のこと?って、本当にわからなかったのだけれど。
だって、今夜はただのお食事デートだって聞いていたから。
それに気が付いたのは…
「潤くん…?どこ行くの…?」
『ん~?ちょっとドライブ?フフ』
お寿司屋さんを出て、潤くんが運転する車に乗り込んで、上機嫌で帰るつもりでいた私。
ふわふわと酔ってはいるけれど、走り出す車が自宅とは違う方向に向かっているのはわかる。
「どこに向かって…」
見覚えのある街並み。
と言うか、知ってる。
たぶんこの先の信号を左に曲がって…
『せっかくだし?フフ』
今日は何かの記念日だっけ?
何でもない日なのに…
「泊まるの…?」
『そういうこと。フフ』
着いたのは以前にも何度か泊まったことのある大きなホテルだったんだ。