数年前、珍しく東京に大雪が降ったあの日…
ドンっ!!
「痛っ…」
私は街のど真ん中で男に捨てられた。
交差点で信号待ちをしている間に車から降りろ!と怒鳴られ、強制的に助手席から突き落とされたの。
何故彼があんなに激怒したのか…それは…
私が彼に口答えをしたから?
浮気性の彼に意見をしたから?
別に浮気を責めたわけじゃないの。
それについては別に…何故だか平気で。
というか、初めてじゃなかったし、またか…くらいで。
じゃあ何を意見したのか?と聞かれたら…
「何であの子だったの?ちょっとビックリ。というか…笑える。くすくす(笑)
何か、誰でもいいというか何というか。
さすがにあれは無くない?フフ」
自分でも驚く程に冷静に、且つ厭味な感じで言葉が出て来て…
だって、さすがにあの子に自分が負けてるとは思えなくて。
だから、たぶん本当はすごくショックだったんだと…後から気付いた。
降り積もる雪の上にペタンと座り込んで…寒いんだか何なんだかわからないくらいに心がどこか遠くへ行ってしまったんだと思う。
街のど真ん中で、行き交う人々が私を変な目で見ていたのも気にならなかった。
どれくらいそうしていたのかはわからない。
ただ、しばらくして一人の男の人が私に声をかけてきた。
“そろそろ、行きませんか?”って。
傘を差し出され、芯まで冷え切って動けなくなっていた身体を抱き起こしてくれた。
私は返事も何もせず、そのまま…なされるがままに…
遠くへ行ってしまった心が徐々に戻ってきたのは、ホットワインで身体が温まってきた頃。
ここはどこだっけ?
知らないお店。
カウンターの中にはマスターらしき人。
大雪のせいか店内には人もまばらで…
“どう?少しは温まった?”
私はコクリと頷いた。
“じゃあ、行こっか?”
そう言われて肩を抱かれた。
あぁ、これはきっと親切なフリをしたなんちゃらで…
「あ…いや、ちょっと…」
そう言葉にしたけれどもう遅くて。
“何言ってんの?大丈夫だから。ね?フフ”
「あ…いや…」
これはマズイと思ったの。
今更だけど

「すいません…あの…
」その時、男の携帯が鳴って、そのほんの一瞬をついて私は…
店の入口に向かって猛ダッシュ。
30近くにもなると全力で走るなんて中々無いから、ゼェゼェハァハァもうわけわかんなくて。
大雪の中、よくも転ばずに走れたなってくらいに走った私。
あぁ、明日絶対筋肉痛だよ…って。
そして疲れた…眠いって…
どんどん薄れてゆく記憶。
もうどうにでもなれって…凍死したらどうしようとか、そんなことまで考えられなくて…
気が付けば…
『うっわっ…!マジかよ…』
そんな声が聞こえたと思う。
『ちょっ、こんなとこで死んでるとかマジやめて…』
死んでる?
生きてまーす♪
うっすらと目を開けると…
「えっ!?嘘っ!?」
周りがベージュ色の景色。
上を見るとまたもや知らない男の人が私を覗き込んでいる。
はっ!


自分が大きなダンボール箱の中にいることにやっと気付いたの。
「こ、ここ、どこですか?
」『何だ生きてんじゃん。』
「生きてますけど…あの、ここは…?」
『ここ?ここはマンションのゴミ置場ですけど…』
「わ、私…
すみません
」と、とりあえず辺りを見回し、財布と携帯があるかを確認して…

立ち上がろうと…


「あ、あれ?

」冷え切った身体は思うようにいうことを聞かない。
あたふたあたふたしてしまう私をその人は…
『フフ…』
って笑ったんだ…