『はい、到着♪フフ』
どれくらい走っただろう?
あれ…ここは…?
普段はあまり来ないけれど、見覚えのある景色。
確か前にタケルくんが家出した時に探しに…
そこは、タケルくんが育った教会があった場所。
もう誰もいなくて、そこで育った子どもたちはみんなバラバラに他の施設へと移ったって聞いてる。
タケルくんを探しに来た時は…
あの時は確かこんな囲い無かったような…
工事中と書かれた看板と共にいかにも工事中なフェンスで敷地一周ぐるりと囲まれていた。
あぁ…ここももう無くなっちゃうんだぁ。
タケルくん知ってるのかなぁ?
生まれ育った場所が無くなるのは…やっぱり寂しいよね。
「ここ、無くなっちゃうんだね。残念だなぁ。」
そう呟く私に潤くんは…
『彩?ほら行くよ?』
って…
行く…?ってどこへ…?
差し出された左手に自分の右手を重ねながらも疑問だらけで…
潤くんに誘導されるがまま工事中のフェンスの中へと入る。
えっ?
工事中じゃ…?
タケルくんが家出したあの時、庭には雑草が生い茂っていて…
だってそのせいで私は足をケガしたんだもん。
今は…
今、目の前にある光景は…
きちんと手入れされた庭。
雑草なんか見る影もなく…
花壇にはたくさんの季節のお花が咲いていた。
「潤くん…?何でここ知って…?」
だってこんな廃墟同然だったとこ、地元の人にだってあまり知られてないんじゃないかなぁ?
『中入る?』
「えっ?」
『さぁどうぞ、お姫様♪フフ』
「えっ?じゅ…」
繋いでいる私の手を引き、すたすたと歩き出す潤くんに私の脳内は完全にパニック状態。
重くて大きな扉をあけるとそこは…
そこには…
「ねぇ、潤くん一体何?」
明かりのついていない教会の奥は薄暗くて、ぼんやりとしか見えない。
シーンと静まり返った室内。
なんでこんなとこ…?
「ねぇ、潤くん…?一体…」
そう問い掛けながら隣にいる潤くんの顔を見上げる私。
そこには潤くんの優しい笑顔があって…
繋がれた右手が…今、更にぎゅっと握りしめられたことがわかったの。
潤くん…?
『さすがに緊張すんな…フフ』
えっ…?
『彩…?結婚しよう…?』
「えっ…?」
『結婚…♪』
「えっ?な、何の冗談…?」
『冗談じゃねーよ。』
「そんなの無理…」
『その時が来たら…覚悟出来てるって言ったじゃん?フフ』
「だってさっきのあれは…」
『その時が来たってことで♪フフ』
すると突然照明がたかれ、目の前がぱぁ~っと明るくなって…
「えっ?な…なんで…グスン」
結婚?
嘘でしょう?
何言って…
涙で視界が滲んで見える。
でも…見えたの。
涙の向こうに…
そこには…
そこにはみんながいたんだ…