私の大切なこの手帳。
ここにはたくさんの思いが詰まっている。
私と彼との思い出…それは形として残っているものは少ない。
写真なんて一枚もないし。
先日、彼が私に一生懸命に説明してくれたことを思い出す。
パラパラとめくるこの手帳。
ほとんど仕事のことで埋まっているのだけれど、時々ね…やっぱり赤ペンで書いてあるの。
あの一粒ダイアのピアスとそれとお揃いのネックレス。
すごい悩んで選んだことも、ほんの2、3行だけど一言日記のように書いてあって…
付き合った記念日。
私の誕生日と雅紀の誕生日。
雅紀の大きな仕事のこと。
初めて行った嵐のコンサートのチケットも大事に挟んである。
久しぶりの二人っきりのオフに行った映画のチケット。
別々に映画館に入り、私が二人分のチケットを買って、飲み物とポップコーンも…
雅紀は暗くなってからそっと隣の席に座ったんだっけ。
感動して泣いちゃう雅紀を見てクスクスと笑う私に『笑うなや!』って突っ込む雅紀。
チケットを手にしながら次々と思い出す。
《あ、その映画…結構感動モノだったよね?》
「うん。」
《雅紀泣いたでしょ?笑》
「うん、ボロボロ泣いてた。クスクス」
私たちは決して公には出来ない関係だけれど、それはそれで上手く、楽しくやっていたんだ。
一緒に居れば居るほど、どんどんどんどん雅紀を好きになって…
好き過ぎて可笑しくなってしまうんじゃないかって。クスクス
それくらい大好きだった。
雅紀と付き合って、私は色んなことに気付かされたの。
実は甘えん坊だったことも、実は嫉妬深かったことも、小さい人間なんだってことも…
30過ぎて重い女はどーなんだ?って…悩みながらも一生懸命恋してた。
だいたい、こんなに真っ黒になるくらいスケジュールがびっちりで…
女だからってナメられないようにって…
そりゃあショートするわな。ハハ
でもね、それも含めて私なの。
恋も仕事も全部…不器用なりに突っ走ってきた。
本気…だった。
これは私の大切な手帳…
手に馴染んでちょうどいい革。
手帳を見つめながら…何度も撫でてしまう。
すべすべしていて気持ちいい。
ここに…確かな証拠はあったんだね。
私の…パズルのピース。
《どう?色々思い出した?》
「んふふ…♪」
《アイツ…スゲーいいヤツだよな…》
「うん。」
《例え忘れたって…また絶対好きになる。》
「ホント、好きになった。クスクス」
窓を打ち付ける本格的な雨。
雨は嫌いなはずなのに…今はほんの少しだけ好き。
隣のこの男のことも…
「まぁ、とっとと諦めなさい♪クスクス」
彼の肩をポンっと叩く私に…
《はぁ?うるせーよ!何、急に余裕ぶっこいてんの?フフ》
な~んて。クスクス
私と耕平くんが会ったこと、雅紀が知ったらまた心配しちゃうかな?
「ねぇ、そんなにホイホイ色んな女が着いて行ったわけ?」
《そりゃあもう、簡単に。簡単過ぎてつまんねーくらい。フフ》
「私にはあなたの魅力が全くわからない。クスクス」
《はっ?失礼な。笑》
「っていうかさぁ、何?どういうこと?その~女子とも出来るし、男子とも…ってこと?」
《ちげーわ!俺は雅紀以外の男には興味ねーし、だいたい雅紀とだって別にそういうんじゃ…ってそういう感情がねーわけじゃねーけど…なんつーか…》
「よくわかんない。クスクス」
この人と、こんな風にお喋りしているなんて。
最初はどうなることかと思ったのにね。
不思議。
時刻は17時。
さてと…
そろそろ行かなきゃね…