〈彩、祭行くだろ?〉
「うん、どうせ夜勤だし、みんなで…ゆまちゃんも楽しみにしてるしね♪」
‘彩先生、浴衣着せて~♪’
この界隈では夏の締め括りのビックイベント。
本当は潤くんと一緒に行きたかったけど…
〈彩は?浴衣着んの?〉
「えっ?あぁ…私はいいや…」
〈何で?着ればいいじゃん?〉
「いいよ…そんな浮かれる歳でもないしね。」
〈ダメ!着ろよ!わかった?
お前さぁ、楽しむべき時に楽しまないでいつ楽しむんだよ?
最近の彩はスゲー暗いし、つまんねー。〉
またしてもタケルくんにグサッとくる一言を言われてしまった私。
わかったよ…着るよ…
って渋々承諾したの。
お祭り当日…
〈おっ、やっぱ可愛いじゃん?
あぁ~彩があと10歳若かったらなぁ~
こう見えてこの人結構オバサンだからなぁ~〉
「うるさい…!」
〈あ、怒るとシワが増えるぞ~フフ〉
「もう!タケルくん!」
〈アハハハ…!〉
タケルくんはタケルくんなりに心配してくれてるのかも…なんて思ったり…
こうして、施設のみんなでお祭りに出掛けたんだ。
‘先生~わたあめ食べる~♪’
「あんまり遠くへ行かないで!迷子になっちゃう!あっ…!
ちょっ、タケルくん、ゆまちゃん追い掛けて?」
〈ったく、ゆま!!〉
たくさんの人たちに呆気に取られつつも、子どもたちに目を配ることに必死だった私。
「そらくん、危ないから手つなごう?」
[やだ~]
「ちょっ、もう!タケルくん、そらくんもお願い!」
〈はぁ?お前ら!!ったく!!〉
施設で一番大きいお兄ちゃんなタケルくんは、今夜は大活躍だ。
《今でこそあんなんだけど…》
「えっ?」
《タケル、今でこそあんなんだけど、ほんの数年前までは毎年迷子になってピーピー泣いてたんだぜ…フフ》
「んふふ♪そうなんですかぁ…?」
先輩が教えてくれたタケルくんの秘密…フフ
《あっ!》
「えっ?」
次の瞬間、急に先輩に肩を抱き寄せられた。
「えっ?」
《今の。こんな人混みで歩きタバコとか危ねー!ぶつかるトコだったよ。》
「あっ…すいません…」
全然意識していなかったけど…
先輩と言えども、男の人だ。
今、急に触れられて背筋がゾワッとした。
ただの親切心で助けてくれた先輩には申し訳ないけど…
身体が潤くん以外の男の人を拒絶してる。
やっぱり正直だね…
離れたら余計に想いが強くなっていく気がする。
忘れられないの…
空を見上げれば大きな打ち上げ花火がとっても綺麗。
「潤くん…花火…綺麗だよ…
一緒に来たかったな…」
空を見上げれながら、自然とそう呟いてしまっていた。