見慣れない一台の車。
えっ、不審者!?どうしよう…?
すると…
車から誰か降りて…
こちらへ歩いて来る…
えっ?誰…?
こっちに向かって来るその人は目深にキャップをかぶり顔が見えない。
辺りはもう真っ暗で…怖い…
『彩…?』
『えっ?』
『ごめん…俺…』
その声は聞き覚えのある声。
『翔ちゃん……?』
『驚かせてごめん…ちょっと話せないかな…?』
『うん…』
私は翔ちゃんの車に乗り込み…
『誰かに見られたらマズイから…』
そう言って、翔ちゃんは車を走らせた…
着いたのは翔ちゃんのマンション…
『ごめん、外はやっぱりマズイから部屋で話そう…?』
『うん…』
そこは素敵な超高層マンションで…
部屋も綺麗に掃除してあって……
きっと彼女いるんだ…
『適当に座って』
翔ちゃんはコーヒーを入れてくれた…
『ずっと会って話したいと思ってたんだ。あんな形で終わってしまったから…ごめん…』
『……うん』
『本当に…ごめん……』
『翔ちゃんのこと、ずっとテレビで観てた……』
『そっか……』
『翔ちゃん頑張ってるんだぁ~私も頑張らなきゃって思ってた。』
『……うん』
『もう過去のことだし……』
『………ごめん』
『たぶん翔ちゃんが悪いんじゃないよ…。私も傷つきたくなくて…逃げてた……』
『……そんなことないだろ…忙しいのを理由に逃げたのは俺だよ……』
『ずっと…ずっと…翔ちゃんのこと好きだったの…。たぶん一生大切な人なの…。だから過去を否定したくないの…。あれで良かったんだって思ってる…。よくさぁ、初恋は実らないって言うじゃない?翔ちゃんは私が初めて心から好きになった人だから……』
『…………。』
『……ごめんね。こんな重たくなるつもりなかったのに……。』
『いや…ごめん……。』
『謝らないで……大丈夫だから……。』
『…俺…言い訳にしかならないけど…デビューして…毎日睡眠時間が2、3時間って日が続いて…正直くじけそうになってて…悩んでて…いっぱいいっぱいだった……』
『…うん。わかってるよ。』
『……でもあの時、好きだって言ったのは嘘じゃないから…ずっと会って謝らなきゃって…傷つけて…本当にごめんな……』
『……うん。』
本当は今にも泣きそうなの…
だからこれ以上謝らないで…
翔ちゃんが送ってくれるって言うから、家まで送ってもらった…
車内でも普通に話せてたと思う…
『翔ちゃん彼女いるでしょ?』
『えっ?…うん…まぁ……』
『そっか……泣かしちゃダメだよ?大切にね!』
『……おう!』
『彩は?彼氏くらいいるよな…彩のこと周りがほっとく訳ないよな…』
『そんなこと…私ね、翔ちゃんと別れてからしばらくは恋愛できなかったの…今の彼…大学時代から友達だったんだけど…付き合って3年になる……この前ご両親に挨拶に行ったの…。たぶん結婚すると思う。』
『そっか…幸せにな……。』
『翔ちゃん元気でね…ずっと応援してるから…』
『おう!彩も…無理すんなよ……。』
『じゃあまた…翔ちゃん…ありがとう……。』
『また…元気でな……。』
翔ちゃん…
本当にバイバイ…
玄関のドアが閉まると同時に…
私は今までにないくらいに泣いた…
声が枯れるまで…
さよなら…
私の初恋の人…