病院への取材は終わっていない。48年前の事実が残っているとは到底思えないけど、それでも、自分の出生の瞬間のことが分かれば。ただそれだけだ。

 おばも、妻も、いつか本当のことが分かるならば、自分で探してみるのもいいだろう、と言ってくれている。それでも、僕にとって本当の父と母は、手製の仏壇に飾った写真の、父と母しかいないのだが。


 こんな身の上って、小説の中だけかと、ずっと思っていた。まさか自分の身の上がそうだったとは、誰も思わないだろう。漫画でも、陳腐すぎる。

 実の親の遺伝子のせいか、どうかはわからない。その後の僕は「お金」と「女」で破滅を呼んでくる。友人もなくし、お金もなくし、波乱を得に書いたような人生になっている。

 でも、それもこれも、僕の「生きてきた時間」は、僕に責任がある。

 

 どんな事情で、どのようにこうなったのか。僕は知りたい。知って、だからどう、ということもないけど、知ったうえで、この先を生きていく力が得られるならば、それは僕の希望だ。

 理由は考えてもしょうがない。