さて、イエスはそこを去って、ユダヤ地方、およびヨルダンの向こう側へ行かれましたが、群衆がまたイエスのもとに集まって来ました。そこでいつものようにイエスが教えておられると、ファリサイ派の人々が近づいてきて、「夫が妻を離縁することは許されていますか?」と尋ねました。これはイエスを試みるためでありました。イエスは答えて、「モーセはあなた方になんと命じているか?」と仰せになりました。すると、彼らは言いました、「モーセは、離縁状を書いて離縁することを許しました」。そこで、イエスは仰せになりました、「モーセはあなた方の心が頑固だから、そのような掟を書いたのである。しかし、神は創造の初めから、『人を男と女に造られた』。『それ故、人は父母を離れ、妻に忠誠を尽くし、二人は一体となる』。したがって、彼らはもはや二人ではなく、一体である。それ故、神が結び合わせたものを、人間がバラバラにしてはならない」。10それから家に戻られると、弟子たちがこのことについて尋ねたので、11イエスは仰せになりました、「妻を離縁して他の女を娶ることは、妻に対して不倫の罪を犯すことになる。12また、妻が夫を離縁して他の男に嫁ぐなら、不倫の罪を犯すことになる」。


 イエスと幼子たち(マタ13―15・3]、ルカ15―17


 13さて、人々が幼子を連れてきて、イエスに手を触れていただこうとしました。ところが、弟子たちはその人々をたしなめました。14イエスはこれを見てカンカンに怒って、弟子たちに仰せになりました、「そのままにしておきなさい。幼子たちが私の下に来るのを止めてはならない。神の国を受け入れるのはこのような者たちである。15あなた方によく言っておく。幼子のように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに入ることは出来ない」。16そして、イエスは幼子たちを抱き寄せ、彼らの上に両手をおいて祝福されました。


 金持ちの青年(マタ16―22、ルカ18―23


 17さて、イエスが旅に出ようとされると、ある人が走り寄り、イエスの前にひざまずいて尋ねました、「善い御主人様、永遠の命を得るためには、何をすればよいのでしょうか?」。18イエスは仰せになりました、「なぜ、私を『善い』と言うのか?神お一人の他に、善い者はいない。19あなたは掟を知っている。『殺すな。姦通するな。盗むな。悪意を持って偽証するな。搾取をするな。父母を敬え』」。20その人は答えて言いました、「御主人様、これらのことは全て、小さい時から守っています」。21イエスは彼を見つめ、愛情を込めて仰せになりました、「あなたに欠けていることが一つある。行って、持っている物をことごとく売り、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を蓄えることになる。それから十字架を背負い、私について来るが良い」。22その人はこの言葉を聞いて、悲しみ、沈んだ顔つきで去っていきました。多くの財産を持っていたからである。

 

 富の危険(マタ23―26、ルカ24―27


 23そこで、イエスは周囲を見回しながら、弟子たちに仰せになりました、「財産を持つ者が神の国に入るのは、何と難しいことであろう」。24弟子たちがこの言葉にびっくり仰天したので、イエスはさらに仰せになりました、「子らよ、(金を頼みにする人が)神の国に入るのは、実に難しいことだ。25お金持ちが神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通る方がもっと易しい」。26すると、弟子たちはますます驚き、互いに言い合いました、「すると救われるのはどんな人ですか?」。27そこで、イエスは彼らを見つめて仰せになりました、「人に出来ることではないが、神にはそうではない。神にはお出来にならないことは無い」。


 一切を捨てる者の幸福(マタ27―30、ルカ28―3030])


 28すると、ペトロがイエスに、「私たちはこの通り一切を捨てて、あなたに従ってきました」と言い出しました。29イエスは答えて仰せになりました、「あなた方にはっきり言っておく。私のために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、妻、子、畑を捨てた者は、30今、この世では百倍の家、兄弟、姉妹、母、子、畑を受ける。  また、それとともに迫害もあろうけれど  来たるべき世では永遠の命を受ける。31しかし、先にいる者が後になり、後のものが先になる」。


 受難の予告)(マタ17―19、ルカ31―34


 32さて、一行はエルサレムに上る途中にありました。イエスはその先頭に立って進まれました。弟子たちは驚き、従う者たちは恐れを抱きました。イエスは再び十二人を呼び寄せて、ご自分に起ころうとしていることを語り始められた、33「さていよいよ、私たちはエルサレムに上って行くが、人の子は、祭司長たちや律法学者たちに渡される。彼らは人の子に死刑を宣告し、そして異邦人に渡す。34異邦人は人の子を嘲り、唾を吐きかけ、鞭打ち、ついに殺してしまう。しかし、人の子は三日の後に甦る」。


 ゼベダイの子らの願い(マタ20―28[㉓・11]、

ルカ4850、㉒・24―27


 35さて、ゼベダイの子ヤコブとヨハネがイエスに近づいて言いました、「御主人様、お願いがあります。是非とも、それを叶えてください」。36イエスは仰せになりました、「私に何をして欲しいのか?」。37すると、二人は言いました、「あなたが栄光をお受けになる時、どうか私たちの一人をあなたの右に、一人を左に座らせてください」。38イエスは仰せになりました、「あなた方は自分が何を願っているのか分かっていない。あなた方は、私が飲む杯を飲み、私が受ける洗礼を受けることが出来るのか?」39二人は、「出来ます」と答えました。そこで、イエスは仰せになりました、「あなた方は私が飲む杯を飲み、私が受ける洗礼を受けるであろう。40でも、私の右または左に座らせることは、私の決めることではない。それは定められた人々に与えられるのである」。

41これを聞いた他の十人の者は、ヤコブとヨハネに憤慨しだしました。42そこで、イエスは彼らを呼び寄せて仰せになりました、「あなた方も知っている通り、異邦人の間では、支配者と目される者がその民を支配し、また偉い人が民の上に権力を振るっている。43でも、あなた方の間では、そうであってはならない。あなた方のうちで偉くなりたい者は、かえって皆に仕える者となり、44また、あなた方のうちで第一の者になりたい者は、皆の僕となりなさい。45人の子が来たのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人の身代金として、自分の命を与えるためである」。


 エリコの盲人癒やされる(マタ29―34、ルカ35―43


 46さて、一行はエリコに来ました。そして、イエスが弟子たちや大勢の群衆と共にエリコを出て行こうとされた時、ティマイの子でバルティマイという目の見えない物乞いが道端に座っていました。47ナザレのイエスだと聞いて、「ダビデの子イエス様、わたしを憐んでください」と叫び出しました。48多くの人々は叱りつけて黙らせようとしましたが、バルティマイはますます、「ダビデの子、憐んでください」と叫び続けました。49そこで、イエスは立ち止まり、「あの人を呼びなさい」と仰せになりました。人々が目の見えない人に、「安心しなさい。立ちなさい、あなたを呼んでおられる」と言って、彼を呼ぶと、50その人は上着を脱ぎ捨て、立ち上がってイエスの下に来ました。51イエスが、「わたしに何をして欲しいのか?」とお尋ねになると、その人は、「イエス様、見えるようにしてください」と言いました。52そこで、イエスは仰せになりました、「よろしい、あなたの信仰があなたを完全に救った」。するとたちまち、その人は見えるようになり、イエスに従っていきました。


 イエスのエルサレム入城(マタ㉑・1―111417、ルカ28―40、ヨハ12―19