その頃、また大勢の群衆がいて、何も食べ物を持っていなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて仰せになりました、「この人たちが可哀想です。もうすでに三日間私と共に過ごし、今、食べる物を何も持っていません。もし空腹のまま家に帰らせたら、途中で卒倒してしまうであろう。中には遠くから来ている人もいる」。弟子たちは答えました、「この荒れ野の中で、これだけの人たちに、満腹するほどのパンをどこで手にいれるのでしょうか?」。するとイエスは、「パンは何個あるの?」とお尋ねになりました。弟子たちは、「七つです」と答えました。そこで、イエスは人々に、地面に座るように命じられました。そして七つのパンを取り、感謝を捧げて、これを裂いて、群衆に配るように弟子たちにお渡しになり、人々に分けよと言われたので、弟子たちはそれを群衆に配りました。また小魚も少しばかりあったので、イエスはそれらを前にして讃美を捧げ、これも配るようにと仰せになりました。人々は満腹するまで食べて、余ったパン切れを集めると、七籠ありました。およそ四千人の人々がいました。それから、イエスは彼らを解散させ、10すぐに弟子たちと共に舟に乗り、ダルマヌタ地方に行かれました。


 天からの徴(マタ・14[38―39][ルカ1629])


 11すると、ファリサイ派の人々がやって来て、イエスに議論を仕掛け、イエスを試みようとして、天からの徴を求めました。12イエスは心から深く溜め息をして仰せになりました、「どうして今の時代は徴を求めるのか?あなた方にはっきり言っておく。今の時代にはどんな徴も与えられない」。13そして、イエスは彼らから離れ、再び舟に乗って向こう岸に行かれました。


 ファリサイ派とヘロデのパン種(マタ・5―12、[ルカ・1])


 14その時、弟子たちはパンを持って来るのを忘れ、舟の中にただ一つのパンしか持っていませんでした。15イエスは弟子たちを戒めて、「ファリサイ派の人々のパン種とヘロデのパン種とに注意して警戒しなさい」と仰せになりました。16すると、弟子たちは、自分たちがパンを持っていないからだろうと、互いに推論し合っていました。17これを知って、イエス様は仰せになりました、「どうしてあなた方は、パンを持っていないことを論じ合っているのですか?まだわからないのでしょうか?悟らないのですか?あなた方の心はそんなに頑ななのか?18目があっても見えないのか?耳があっても聞こえないのか?あなた方は覚えてないの?19以前私が、五つのパンを裂いて五千人に与えた時、集めたパン切れで、幾つの籠がいっぱいになったか?」。20弟子たちは、「十二です」と答えました。「私が七つのパンを裂いて四千人に配った時、幾つの籠にパン切れをいっぱい集めたか?」。弟子たちは、「七籠です」と答えました。21イエスは、「それでも、まだ分からないのか?」と仰せになりました。


 盲人癒される


 22さて、一行はベトサイダに着きました。人々はイエスの下に目の見えない人を連れてきて、触れてくださるように願いました。23イエスはその人の手を取って、村の外に連れていき、両方の目に唾をつけ、その上に両手を当てて、「何か見えるか?」とお尋ねになりました。24すると、彼は見えるようになり、「人が見えます。木のようですが、歩いています」と言いました。25それから、イエスが再び両手をその人の両方の目に当てられると、彼はよく見分けることが出来ました。目は元通りになり、全てのものがはっきり見えるようになりました。26そこで、イエスは、「村に入ってはいけない」と仰せになって、その人を家に返されました。


第二部 イエスの神秘の啓示(27―⑮47


  ペトロの信仰告白(マタ13―20、ルカ18―21


 27さて、イエスは弟子たちを連れて、フィリポ、カイサリア地方の村々へ出かけられましたが、その途中、弟子たちに、「人々は私を何者だと言っているのですか?」とお尋ねになりました。28弟子たちは答えました、「洗礼者ヨハネですという人もあれば、エリヤですと言う人もあり、預言者の一人だと言う人もいます」。29そこで、イエスはお尋ねになりました、「それでは、あなた方は私を何者だと言うのですか?」。ペトロが答えて言いました、「あなたはキリストです」。30すると、イエスはこのことを誰にも話さないようにと、弟子たちを厳しく戒められました。


 受難の予告)(マタ21―23、ルカ22


 31そしてイエスは、人の子が多くの苦しみを受け、長老や、祭司長や、律法学者たちに排斥され、殺され、そして三日の後に復活するはずであることを弟子たちに教え始められた。32しかも、あからさまに話された。すると、ペトロがイエスの袖を引いて、叱責し始めました。33イエスは振り返って、弟子たちを見て、ペトロを叱って仰せになりました。「サタン、引き下がれ。あなたは、神ではなく、人間のことを考えているのだ」。


 イエスに従う者(マタ24―283338―39]ルカ23―27・9、2733])


 34それから、イエスは弟子たちと共に群衆を呼び寄せて仰せになりました、「私の後に従いたい者は、自分を捨てて、自分の十字架を担って、私に従いなさい。35自分の命を救おうと望む者はそれを失い、私のため、また福音のために、命を失う者は、それを救う。36たとえ全世界を手に入れても、自分の魂を失うなら、何の益があるでしょうか?37また自分の魂を買い戻すために、人は、何を支払えば良いのですか?38姦淫の罪深いこの時代において、私と私の言葉を恥じる者に対しては、人の子もまた、御父様の栄光に包まれて聖天使たちと共に来る時に、そのものを恥じるであろう」。