イエスは、そこを去って、故郷に行かれたが、弟子たちもついて行きました。そして安息日になったので、イエスは教会で教え始められました。すると、聞き入る多くの人々は驚いて言いました、「あの人はどこからこういうことを学んだのだろう。あの人が授かっている知恵、あの手で行われる大きい奇跡は何だろう?この人は大工ではないか?マリアの子、またヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか?そしてまた、姉妹たちも、我々と共にいるじゃないか?」。このように人々はイエスに腹を立てました。それで、イエスは、預言者が尊敬されないのは、自分の故郷や、親族の間、またその家の中においてだけです」と仰せになりました。そこではただ少数の病人に手を置いて治されただけで、そのほかは何も奇跡を行うことがお出来になりませんでした。そして、郷里の人々の不信仰に驚かれました。

  

 十二使徒の派遣(マタ35・1、15・1ルカ・16[・4―12])


また、イエスは付近の村々を回って教えておられました。そして、十二人を呼び寄せ、二人ずつ宣教に遣わすことを始められました。その時、汚れた霊に対する権能を彼らに与え、途中では、杖一本の他はいっさい、パンも袋も、また帯の中に小銭も持たないように、また、履き物は履いても良いが、上着は二枚着ないようにと命じられました。10イエスはさらに仰せになりました、「どこでも、ある家に迎えられたなら、その地を去るまでは、その家に留まりなさい。11もし、あなた方を歓迎せず、あなた方の言うことを聞こうともしないところがあったなら、そこから出ていく時、彼らに対する証しとして、足の裏の塵を払い落としなさい。それは、その町よりも、審判の日にはソドムとゴモラの方がより寛容であろう」。12そこで、弟子たちは出ていき、人々に懺悔するようにと宣べ伝え、13また多くの悪霊を追い出し、多くの病人に油を塗って癒やしました。


 洗礼者ヨハネの殉教(マタ・1―12、ルカ・79[19―20])


 14さて、イエスの名が知れ渡って、ヘロデ王の耳に入った。「洗礼者ヨハネが死者の中から生き返ったのだ。だからこそ、奇跡を行う力があの人の中に働いているのだ」と人々は言い、15またある人々は、「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は、「昔の預言者のような預言者だ」と言っていました。16ヘロデはこれらのことを聞いて、「わたしが首を刎ねたあのヨハネが甦ったのだ」と言いました。

 17実は、このヘロデは、自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアを娶り、彼女のことでヨハネを捕らえさせ、牢につないでいました。18ヨハネがヘロデに向かって、「兄弟の妻を自分の妻にするのはよろしくないことだ」と言ったためです。19ヘロディアはヨハネと口論し、彼を殺そうと望んでいたが、出来ませんでした。20それは、ヘロデがヨハネを正しい聖なる人であると知って、ヨハネを敬い、保護し、またその教えを聞く時には、ためらいながらも、なお喜んでその言葉に耳を傾けていたからです。

 21ところが、ヘロディアにとって良い機会が訪れました。ヘロデが自分の誕生日にあたり、宮廷の高官や武官、またガラリヤのおもだった人々を招いて、宴会を開きました。22そこに、ヘロディアの娘が入って来て、踊りを踊り、ヘロデをはじめ列席の人々を喜ばせました。そこで王はこの娘に、「欲しい物は何でもあげるから言いなさい」と言い、23さらに、「お前が願う物なら、国の半分でもあげる」と固く誓いました。24そこで娘が出ていき、「何を願いましょうか?」と母に尋ねると、母は、「洗礼者ヨハネの首を」と答えた。25乙女はすぐ、王の所にあわてて戻ってきて、「今すぐに洗礼者ヨハネの首を盆に載せて、持ってきてください」と願った。26王は大いに心を痛めたが、列席の人々の前で立てた誓いの手前、乙女の願いを拒否したくなかった。27そこで、すぐに衛兵を遣わし、ヨハネの首を持って来るように命じた。衛兵は出ていき、牢の中でヨハネの首を刎ね、28その首を盆に載せて持って来て、娘に渡した。娘はそれを母に与えてはいけないのに与えた。

 29このことを聞いたヨハネの弟子たちは、その遺体を引き取りにやって来て、墓に葬りました。


 パンを増やす)(マタ13―2136]、ルカ10―17ヨハ・1―15


 30さて、使徒たちはイエスの下に集まってきて、自分たちが行ったことや教えたことを残らず報告しました。31そこで、イエスは使徒たちに仰せになりました、「さあ、あなた方だけで砂漠のさびしい所に行き、そこでしばらく休みなさい」。出入りする人が多くて、食事をする暇さえなかったからである。32そこで、一同は密かに舟に乗って、自分たちだけで砂漠の所へ行きました。33しかし、多くの人々は、彼らが出ていくのを見て、それと気づき、ほうぼうの町々から駆けつけ、彼らよりも先に着いていました。34さて、舟を降りると、イエスは大勢の群衆をご覧になり、牧者のいない羊のようなそのありさまを憐れに思い、長時間教えられた。35そのうち、時もだいぶ経ったので、弟子たちはイエスに近づいて言いました、「ここは砂漠です。もう、時もだいぶ遅くなりました。36集まった人たちを解散させてください。そうすれば、周りの部落や村々に行って何か自分の食べ物を買わせてやって下さい。彼らは何も食べる物がないからです」。37すると、イエスは答えて、「あなた方が食べる物をあげてください」と仰せになりました。弟子たちは、「二百デナリオン分のパンを買って来て、みんなに食べさせよと、おっしゃるのですか?」と言いました。38そこでイエスは仰せになりました、「パンが幾つあるか見て来なさい」。弟子たちはそれを調べて来て言いました、「五つあります。それに魚が二匹です」。39そこで、イエスは皆を組に分けて青草の上に座らせるように、弟子たちにお命じになりました。40人々は百人ずつ、あるいは五十人ずつまとまって座りました。41そこで、イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰ぎ、祝福をとなえ、パンを裂いて、弟子たちに渡し、皆に配らせ、二匹の魚も皆に分け与えられました。42皆は満腹するまで食べました。43そして、残ったパン切れと魚を集めると、十二の籠にいっぱいになりました。44パンを食べた人は男五千人でありました。


 イエス、湖上を歩かれる(マタ22―33、ヨハ16―21


 45その後ただちに、イエスは強いて弟子たちを舟に乗せ、向こう岸のベトサイダを指して先に行けと命じて、その間ご自分は群衆を解散させておられた。46そして、人々を去らせると、祈るために山へ退かれた。47夕方になると、舟は湖の真ん中に出ていましたが、イエスはただ一人陸地におられた。48そして、イエスは、弟子たちが向かい風のために舟を漕ぎ悩んでいるのをご覧になり、朝の四時ごろ、湖の上を歩いて、弟子たちに近づかれたが、そのそばを通り過ぎようとされました。49弟子たちは湖の上を歩いておられるイエスを見て、幽霊だと思い、叫び声をあげました。50皆はそれを見て、怯えました。そこですぐに、イエスは話しかけて仰せになりました、「元気出して。私だ。恐れるな」。51そして、弟子たちの舟にお乗りになりました。すると、風は収まりました。それで、弟子たちは心中計り知れないほど驚き、不思議に思いました。52なぜなら、彼らは先ほどのパンの奇跡を悟らず、心が頑なだったからである。


 ゲネサレト地方の病人癒される(マタ34―36) 


 53さて、一行は湖を渡って、ゲネサレトの地方に着き、舟をつなぎました。54そして舟から上がるとすぐに、人々はイエスだと知って、55その地方を隈なく駆け回り、イエスがおられると聞けば、どこまでもついて来て病人を床に載せて運んで来ました。56そして、村でも町でも部落でも、イエスが行かれる先々で、人々は通りに病人を横たえ、せめてその服の縁にでも触れさせてくださるよう願いました。触れた人は皆完全に治りました。


 ファリサイ派の言い伝え(マタ・19)