さて、イエスは再び湖の辺りで教え始められました。おびただしい群衆が集まって来たので、イエスは湖上の舟に乗り、座っておられました。群衆は皆湖に沿った陸地にいました。イエスは喩えを持って多くのことを教えられたが、その中でこう仰せになりました、「よく聞きなさい。種を蒔く人が種を蒔きに出て行きました。すると、蒔いているうちに、ある種は道端に落ちて、鳥が来て、それらをついばんでしまいました。ある種は土の薄い岩地に落ちました。そこは土が深くなかったので、すぐに芽を出しました。でも、日が昇ると焦げて、根が無かったので、枯れてしまいました。他の種は茨の中に落ち、茨が伸びて、それを覆いふさいでしまったので、実を結ばなかった。他の種は善い地に落ちました。それからやがて実を結んで、あるものは三十倍、あるものは六十倍、あるものは百倍にもなりました」。そして、「耳のある者は聞きなさい」と仰せになりました。


喩えの目的(マタ10―17、ルカ・9−10


 10さて、イエスが一人になられると、十二人と、イエスの周りにいた人たちが、これらの喩えについて尋ねました。11そこでイエスは彼らに仰せになりました、「あなた方には神の王国の神秘が授けられているが、外の人々には全てが喩えで語られる。12それは、

  『彼らは見るには見るが認めず、

   聞くには聞くが悟らない、

    こうして改宗して許されることは無い』 

  とあるためである」。

  

 種蒔きの喩えの説明(マタ18―23、ルカ11―15


 13そして、弟子たちに仰せになりました、「あなた方はこの喩えが分からないのか。そんなことで、どうして全ての喩えが悟れようか。14種を蒔く人は御言葉を蒔くのである。15御言葉が蒔かれた道端のものとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言葉を聞くと、すぐにサタンが来て、彼らのうちに蒔かれた心の御言葉を取り去ってしまう。16岩地に蒔かれたものとは、御言葉を聞くと、すぐに喜んで受け入れるが、17彼らには根が無く、一時的なもので、後になって御言葉のために病気や迫害が起こると、すぐに腹を立ててしまう人たちのことである。18また茨の中に蒔かれたものとは、御言葉を聞くが、19この世の関心ごとや富への誘惑、またそのほかの色々な欲望に侵されて、御言葉を覆いふさがれ、実を結ばない人たちのことである。20そして善い土地に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて喜んで受け入れて、ある者は三十倍、ある者は六十倍、また、ある者は百倍のも実を結ぶ人たちのことである」。


 灯火と升([マタ15・2、2612、㉕・29]ルカ16―183833・2、⑲・26])


 21また弟子たちに仰せになりました、「灯火を持って来るのは、升の下や寝台の下に置くためであろうか?燭台の上に置くためではないか?22誠に、隠されているもので露わにされないものはなく、また、秘密にされたもので、明るみに出ないものはない。23聞く耳があれば、聞きなさい」。24また仰せになりました、「注意して話を聞きなさい。あなた方が量るその升で、あなた方にも量り与えられ、しかも、さらに増し加えられる。25持っている人はさらに与えられ、持たない人は、持っているものまでも取り上げられる」。


 種の生長の喩え


 26また、仰せになりました、「神の国は人が大地に種を蒔くようなものである。27種を蒔く人が夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出し生長する。しかし、種を蒔いた人はどうしてそうなるかを知らない。28大地は自ら働き、初めに苗、次に穂、その次に穂の中に豊かな実を生ずる。29実が熟すと、種を蒔いた人はただちに鎌を入れる。刈り入れの時が来たからである」。


 芥子種の喩え(マタ31―32、ルカ18―19


 30また、仰せになりました、「神の国を何になぞらえようか?また、どんな喩えで言い表そうか?31それは一粒の芥子種のようなものである。芥子種は土に蒔かれる時は、地上のどんな種よりも小さいが、32蒔かれると、伸びてどんな薬草よりも大きくなり、その陰に空の鳥が宿るほど大きな枝を張る」。


 喩えの結び(マタ34―35


 33イエスは人々の聞く能力に応じて、このような多くの喩えを持って、御言葉を語られ、34喩えなしには語られませんでした。しかし、ご自分の弟子たちだけの時は、全てのことを説明されました。


 嵐を鎮める(マタ1823―27、ルカ22―25


 35さて、その日、夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と仰せになりました。36そこで弟子たちは人集りを後に残して、イエスを舟に乗せたままお連れしました。その時、他の舟もお同行しました。37すると、激しい突風が起こり、波が舟の中まで襲いかかり、舟は水浸しになりそうだった。38ところが、イエスは艫のほうで、枕をして眠っておられました。弟子たちはイエスを起こして、「イエス様、私たちが溺れ死んでも、構わないのですか?」と言いました。39イエスは起き上がって風を叱りつけ、湖に向かって仰せになりました、「黙れ、鎮まれ」。すると風は止み、大凪となりました。40イエスは弟子たちに仰せになりました、「なぜ、そんなに恐れるのか。まだ信仰心がないのか」。41彼らは大いに恐れて互いに言いました、「いったい、この方は何もんなん。風や嵐かて従うやなんて」。


 ゲラサの悪霊憑き(マタ⑧・28―34、ルカ26―39