矢口新の生き残りのディーリング
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・消費税が安定財源だという「嘘」

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☆消費税が安定財源だという「嘘」

日本の新首相に石破茂元自民党幹事長第28代党総裁がなることが決まった。発言にブレの少ない論客の同氏には大いに期待したいところだが、日本経済再生に最も重要だと思われる一点に関しては、「過ち」を認め前言を覆して頂きたいと思っている。

「消費税は撤廃も減税もしない。安定財源だから」というデータに基づかない「誤解」、あるいは「嘘」に関してだ。

消費税に関しては繰り返し述べてきているので、ここでは2021年春に上梓した拙著から冒頭の2項をそのまま引用する。税収に関しての図表は財務省のページから最新のものを見ることができるので省略する。

参照:日本の財政関係資料


(引用ここから、URLまで)

第一章:日本を破壊した税制

1、税率を上げても増えない税収

図01(省略):消費税と総税収(出所:財務省の資料に消費税などを挿入)

図01は財務省のホームページにある「我が国財政について」からのものに、消費税率と長期景気回復期とを書き込んだものだ。赤色の折れ線グラフが1975年度(昭和50年度)からの歳出(政府の支出)の推移、青色の折れ線グラフが税収の推移、下の棒グラフがその年度の公債(国債)発行額だ。特例とあるのは赤字国債の意味で、財政均衡が建前上、赤字は特例とされている。

読者の方々は、日本の税収のピークがいつかご存知だろうか? 記録の上では2018年度(平成30年度)で、60.4兆円だ。これはアベノミクスの成果だと言えるが、マイナス金利政策、経済規模を超える資金供給、財政ファイナンス(通貨を製造できる中央銀行が国債を買うことで、実質的に政府が通貨を製造し財政規律の歯止めをなくすこと。日本では法律違反)、中央銀行による民間企業の株式保有などといった、これまでなら禁じ手と見なされていたものを総動員して達成したものだ。後述するが、それらは継続不可能で、のみならず次世代に過大な負担を残すことになった。にもかかわらず、その効果はほんの一時的なものでしかなかったのだ。

その前の税収ピークは1990年度(平成2年度)の60.1兆円で、過去最大を更新するのに何と28年もかけ、それでもほぼ元の水準に戻ったに過ぎない。その間の税収は一時38.7兆円にまで落ち込むことがあった。

税収を青色の実線で表示した図01では、2019年度が60.2兆円、2020年度が63.5兆円とされているが、2019年度の税収は既に58.4兆円だったと発表され、2020年度はそれを更に下回り55.1兆円となる見通しとなった。つまり、日本の税収が60兆円を超えたのは、1990年度と2018年度の2回きりで、このままではそれがダブルトップとなってしまう可能性が高いと言える。

一方、赤色の実線で表示した歳出は2020年度が175.7兆円となる見通しで、赤字をファイナンスする新規国債発行額は112.6兆円になると言われている。つまり、誰が見ても日本財政の置かれた状況は危機的だと分かるはずだ。

この歳出の急増はコロナ対策で使われたもので、個人への一律10万円支給やGo To、アベノマスクなどもここからの支出に含まれる。これらは前向きの経済発展のための支出というより、経済活動を止めた損失の穴埋めとしての様相が強く、今後の税収増には繋がらない可能性が高い。つまり、この110兆円を超える赤字幅を埋める見通しは立っていない。

日本政府は当初コロナ対策は短期決戦だとしたために、国家経済への損害をより少なく抑えることにまでは配慮が及ばす、後手にまわって損失補填を行った。政府の政策によって国民に損失を与えたので、国民の生活を守るためにはこうした支出はやむを得ない。とはいえ、国民の健康を今のコロナ禍からだけでなく、長期的に守る社会保障制度の維持を含む国家経営の観点からは、このように経済活動を止めたこと自体が問題なのだ。

とはいえ、それ以上の大問題はいざなみ景気やアベノミクスをもってしても税収が増えて来なかったことだ。これは、この30年間の日本財政も基本的には同じで、限られた税収をやり繰りするだけではしのぎ切れず、結局は赤字を積み重ねてきたことを意味している。図01の下の棒グラフは国債発行額で、その年度に国が新たに借金した金額だ。概ね青赤両線に挟まれた単年度の赤字幅と同額だ。

図01の青色の実線を見て頂きたい。消費税導入後、3回にわたって税率を引上げてきたのだが、税収は一向に増えないどころか、減っているようにも見える。このことは、将来の消費増税が税収増につながる見通しは限りなく乏しく、むしろ税収減に繋がる可能性が高いと言えるのだ。

歳出の内訳は後述するが、図01の1990年度までの推移を見ても分かるように、赤色の実線で示された歳出が増えても、青色の実線の税収が追いかけて増えていれば、そのギャップは広がらず、財政赤字は管理下に置かれた状態だと見なすことができる。ところが、1990年度を境に、歳出の伸びとは裏腹に、税収が減り始めるのだ。1989年度に消費税を導入したにもかかわらず、税収は減ったのだ。

総税収の減少は、消費税率を5%に引上げた1997年度以降も繰り返される。これでは、消費増税をしたにもかかわらず税収減となったのではなく、消費増税をしたからこそ税収が減ったと考えた方が合理的だ。

これでも日本の政治家たちは、「社会保障の財源確保には消費増税が必要だ」というのだろうか? 税収減となる確率が高いのに、社会保障の財源になると考えるのはおかしいとは思わないのだろうか?


2、消費税収は成長率、所得税収、法人税収とトレードオフ

図02(省略):税収と名目GDP成長率(出所:財務省と内閣府の資料から作成)

図02の上部からは、1987年度からの日本の総税収の推移(青色の棒グラフ)と、所得税収の推移(赤色の折れ線グラフ)、法人税収の推移(青点線の折れ線グラフ)、消費税収の推移(黒色の折れ線グラフ)が見て取れる。下部は同期間の名目GDP(国内総生産)の前年度比での推移だ。赤い矢印は消費税の導入時期と税率。加えて、長期景気拡大期も記入した。

消費税を導入し、税率を上げ続けたのに、かえって税収が減ったのは何故か? 図02の税収の内訳と、経済成長率の推移から答えが見えないだろうか?

消費税を導入したその年に、図02では青色の点線で表示した法人税収がピークをつけ、現状は半分近くにまで減少している。導入の2年後には赤線表示の所得税収がピークをつけ、現状は3分の2もない。それらが急減したために、黒線表示の消費税という新たな財源を得たにもかかわらず、棒グラフに見る総税収が消費税導入後の1年後にピークを付けたのだ。

図02の下のグラフの赤色の棒グラフが名目GDP(経済規模)の前年度比での成長だ。消費税導入後しばらくはバブル経済の勢いが持続するが、1990年度以降は明らかに減速を始める。この時期はバブル崩壊の時期だが、増税は景気過熱を抑える手段でもあるので、消費税導入という追加の引締め効果もあって見事に景気を殺せたとも見なすことができる。

そして、消費税率を5%に引上げた1997年度からは、日本経済はマイナス成長となる。この時期にはアジア通貨危機が起きたのだが、当該諸国が回復した後も、何故か日本だけは低迷する。というより、日本経済は増税とアジア通貨危機という内憂外患の状態となったのだ。

その年には日本債券信用銀行、北海道拓殖銀行、山一証券など多くの金融機関が破綻、その後自殺者が急増することになったことを鑑みれば、この時期の消費増税は施政者として有り得ない政策だったことが分かる。戦後最長と謳われている「いざなみ景気」は、戦後の日本経済が迎えたこうした最悪期からゆっくりと時間をかけて回復したものだ。グラフに見られるように、景気拡大の期間が長い事だけを自慢する意味が私には分からない。

その後のアベノミクスではある時期まで確かに経済成長するが、前述のように多くの「禁じ手」をつかったために、今後の世代に多くの課題を残すことになった。また、そこまでして得た成長すら元の木阿弥となったことは後述する。

消費税収は黒色の実線で表示されている。消費税の謳い文句は「安定財源」だ。図02で見ても分かるように、導入後は確かに安定的に税収を増やし、今では日本政府の最大の財源になった。

とはいえ、安定財源という意味は、経済が縮小していく中でも着実に天引きすることで、家計や企業の大きな負担となってきたことを表している。そして、そのことがデフレを長引かせることにもなったことを示唆している。

また安定財源は、景気拡大期にも税収が安定していることも意味している。景気が拡大してもそれほど税収は増えず、図02に見られるように税率を引上げた時にだけ、目立って消費税収が増えるのだ。

この図02でよく分かるのは、消費税収と引き換えに、所得税収と法人税収が減少したために、日本の総税収が減ったことだ。税収減の最も大きな要因は、消費税が景気後退に繋がるためだ。つまり、消費税と経済成長とは、彼方立てれば此方が立たぬ、トレードオフの関係にあることが分かる。

税収減のもう1つの要因は後述する法人税率と所得税率の引下げだ。アベノミクス効果の絶頂期である2018年度の企業売上と企業利益は共に過去最大だったが、法人税収は法人税率を引下げていたため12.3兆円と、法人税収は1989年度の65%でしかなかった。

消費税を導入し、税率を上げ続けたのに、かえって税収が減ったのは何故か? 消費税は経済成長率とトレードオフの関係にあるため、税率を上げる度に景気が悪くなるからだ。従って、所得税収や法人税収のように、景気や利益との相関関係が高い税収が減ることになるのだ。加えて、最も大きな財源であった所得税や法人税の税率を引下げたからだ。

消費増税では総税収が減るのに、社会保障の財源になるというのは、データとは裏腹な極めて非合理な考え方だと言っていいのではないか?

参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新)

英語版:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi)


この後、直近のグラフにあるように、2023年度の総税収(租税及び印紙収入)は69兆4,400億円と過去最大を更新するが、主な要因は企業収益がそうであるように、円安とインフレからもたらされている。

上記の続きは、「3、消費税は経済成長を止めた」と、名目GDPと個人消費の推移と消費税率の関係から解説している。

要約すれば、経済が縮小している時期にでも個人消費は安定していて、ここに課税することは安定財源となる。一方で、景気減速期にも一律課税してきたことで、家計や企業経営の重荷になってきたために、これが景気減速を長引かせた。

日本の名目GDPは消費税導入の翌年1990年度から減速を始め、税率を5%に引上げた1997年度からは減少する。そして、その年につけた経済規模533.4兆円はその後29年間のピークとなるのだ。更新するのは計算方法の見直しで30兆円を上乗せし、536.9兆円とした2016年度だ。

日本は30年間で1.66倍に成長した。一方、世界の名目GDPは87兆4453億ドルと、4.23倍となった。その結果、世界経済における日本のシェアは5.8%に落ちた。

第2次世界大戦後の瓦礫の中から、世界経済の7分の1にまで高成長した日本経済はミラクルとまで呼ばれた。その当時は、日本人の性質や企業文化が強みだとされていた。ところが、1989年頃を境に日本経済は急速に悪化し、世界の経済成長に取り残されていく。そうすると今度は世界経済のミステリーとなった。そして停滞の原因を、日本人の性質や企業文化にあるとされるようになったのだ。日本人への評価が、突然180度転換した。

このことは、世界の経済学者たちは日本経済の崩壊の原因をしっかりとした構造に求めるのではなく、性質や文化などという漠然としたものに頼ったことを示唆している。

日本の企業経営者たちも概ね同様で、1990年以降上手くいかなくなったのは自分たちのやり方がまずいからだというのが、支配的な論調となった。そして、その後の日本はグローバル化の掛け声のもと、主に米国に学べとなった。ところが、学べば学ぶほど、助言を受け入れれば受け入れるほど、かつては日本を部分的には世界一にまで押し上げた日本の良さを失っていった。そして、まだ変われない部分を見つけ出しては、だからダメなのだと自省するようになった。

日本銀行の黒田東彦総裁は就任当初、デフレ脱却のために日本人の「マインドに訴えかける」ことが最大の効果を伴うとした。景気は「気」であるというのと同様の精神論的なアプローチだ。そうであれば、1989年頃までの日本人は気力が充実していたが、突然、弱気になり、それが30年以上も続いていることになる。

日銀の黒田総裁から、「マインドに訴えかける」という言葉が聞かれなくなったように思う。とはいえ、黒田日銀は口先だけでなく、膨大な資金供給やマイナス金利政策、株式購入などといった前代未聞のパワープレーも総動員したのだが、それでも未だにデフレからの脱却は見られない。その理由を、私は財政政策による「最も効果的な」引締めに見ている。消費税の導入と税率の引上げが、日本経済の失速には何よりも効いたのだ。

要約すると、以上のようなことだ。


ジャパン・アズ・ナンバーワン(Japan as Number One: Lessons for America)が出版されたのは1979年だ。そして1980年代を通して、世界は「日本に学べ」だった。

また、「世界競争力ランキング」が最初に出版されたのは1989年で、当時の調査地域は24カ国・地域だった。その時の1位は日本で、1993年まで5年連続で1位を独占した。それが今は38位にまで低下した。

かつては実質ベスト1の経済を謳歌した日本が、GDP比での累積財政赤字や公的債務残高で実質ワースト1になりながらも、トップを保ってきたのが対外純資産ランキングだった。これがあるために、日本国債は安全で、質への逃避での円買いも起きるなどと言う人たちもいた。それが33年連続の世界1位から2024年3月末にドイツに抜かれ世界2位となった。

日本が対外純資産を膨らませることができてきた最も大きな要因は巨額の貿易黒字が続いていたからだ。貿易で得た外貨を海外投資に当てることができてきたのだ。それが2011年以降は基本的に赤字となったので、世界1位からの転落は時間の問題だった。

経済成長せず、貿易も赤字の国がランキングを下げていくのは自然な流れだ。そして、食料やエネルギーの自給率が低い国が、製造業を空洞化させたのだから、貿易収支が黒字に戻って定着する見込みも少ない。このことは、対外純資産ランキングでも下げ続ける可能性を示唆している。

先週発表された8月の工作機械受注総額確報値は前年比4%減の1107億円だった。マイナスは4カ月ぶり。国内向けは10%減の321億円で、24カ月連続のマイナス。海外向けは1%減の785億円だった。日本産業の空洞化は継続中だ。

日本経済に関する危機感を共有している石破氏には、1989年度以降の税制が日本経済に与えた悪影響を是非とも検証し直して頂きたいものだ。

 

 


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【秋分の日振替休日】
(9/23: 



【ハイテクの職が枯渇。そしてすぐには戻らない】
(9/24:参照)Tech Jobs Have Dried Up--and Aren’t Coming Back Soon 
Postings for software development jobs are down more than 30% since February 2020, according to Indeed.com. Industry layoffs have continued this year with tech companies shedding around 137,000 jobs since January, according to Layoffs.fyi. 
Company strategies are also shifting. Instead of growth at all costs and investment in moonshot projects, tech firms have become laser focused on revenue-generating products and services. 
They have pulled back on entry-level hires, cut recruiting teams and jettisoned projects and jobs in areas that weren’t huge moneymakers, including virtual reality and devices. 
At the same time, they started putting enormous resources into AI.


《マーケットでよくでる単語・表現》

moonshot 月探査ロケットの打ち上げ、特大ホームラン
laser focus 高い集中力
jettison 投げ捨てる


《日本語訳》

ソフトウェア開発の求人情報は2020年2月以降30%以上減少していると、インディード・ドットコムは述べている。レイオフズfyiによると、今年もハイテク業界のレイオフは続いており、1月以降約13万7000人が削減された。
企業の戦略も変化している。あらゆるコストをかけて成長し、月探査ロケットのような特大ホームラン狙うプロジェクトに投資する代わりに、ハイテク企業らは収益を生み出す製品やサービスに極力集中するようになった。
エントリーレベルの採用を減らし、リクルートチームを削減し、仮想現実や機器を含む大きな利益を生まない分野のプロジェクトや雇用を切り捨てた。
同時に、彼らはAIに莫大な資源を投入し始めた。

関連:The Fed Has Significantly Improved the Odds of a Soft Landing 



【中国、低迷する経済に刺激策】
(9/25:参照)China Tries to Jolt Ailing Economy 
China’s central bank announced a blitz of measures to support the country’s weakening economy and energize its moribund stock market, an unusually broad package that signals growing unease in Beijing after a run of downbeat numbers on jobs, spending and inflation.
At a press conference in Beijing, PBOC Gov. Pan Gongsheng said further easing is in the pipeline, with another reduction in bank reserve requirements expected before year-end.


《マーケットでよくでる単語・表現》

blitz 集中的なキャンペーン
moribund 停滞している
downbeat 悲観的な
PBOC(People's Bank of China) 中国人民銀行
in the pipeline 配送中で


《日本語訳》

中国の中央銀行は弱体化している経済を支援し、低迷する株式市場を活性化させるための集中対策を発表した。この通常になく広範なパッケージは、雇用、消費、インフレにおける悲観的な数値が続いたことを受けて、中国政府での不安の高まりを示している。
北京での記者会見で、潘功勝中国人民銀行総裁は、さらなる金融緩和が準備中で、年末までに銀行預金準備率をさらに引き下げる予定だと述べた。

関連:Dow Jones Today: S&P 500, Dow Close at Record Highs as Nvidia Surges, China Stimulus Plan Boosts Stocks 

関連:Xi’s Economic Adrenaline Shot Is Only Buying China a Little Time 

関連:Top Economist in China Vanishes After Private WeChat Comments 



【米国、太平洋における軍事的脆弱性に挑む】
(9/26:参照)U.S. Tackles a Military Vulnerability in the Pacific: Supply Lines 
The U.S. military, including the Marines, is shifting its strategy and expanding its footprint in the Pacific to deter Beijing from launching military action to take over Taiwan--and to prepare to fight if needed.
But one of the most important, and at times overlooked, challenges the military is facing is how to get fuel, ammunition and other equipment to front-line units on remote islands or sea lanes far from main U.S. bases, and protecting those supply lines from Chinese attack.


《マーケットでよくでる単語・表現》

footprint 足跡、接地面積
deter 阻む
ammunition 弾薬
sea lane 海上交通路


《日本語訳》

海兵隊を含む米軍はその戦略を転換し、太平洋における拠点を拡大している。中国政府の台湾占領のための軍事行動開始を阻止するためだ。そして、必要な場合の戦闘準備のためだ。
しかし、軍が直面している最も重要で、時に見過ごされがちな課題のひとつは、主要な米軍基地から遠く離れた離島や海上交通路にある前線部隊に、燃料や弾薬、その他の装備をいかにして運ぶか、そしてそれらの補給線を中国の攻撃からいかにして守るかということだ。

関連:Inside the U.S. Military’s Strategy to Make Australia a Logistics Hub 

関連:China Says It Test-Fired Intercontinental Ballistic Missile 

関連:Taiwan and U.S. Work to Counter China’s Drone Dominance 



【ホームレス人口が増加。米国は過去最大更新へ】
(9/27:参照)Homeless Population Grows, Putting U.S. on Track for Another Record 
The number of homeless people in the U.S. continues to grow, putting the country on pace to hit yet another record high this year.
Counts from encampments, streets, and shelters are largely higher than they were in 2023, according to preliminary data collected and reviewed by The Wall Street Journal. 
The numbers come from more than 250 homeless-service organizations covering cities, metro areas and vast rural areas. They are meant to reflect homelessness as it existed on a single night early this year. The Journal’s count includes about 550,000 homeless people so far, up about 10% from what these places reported last year. 


《マーケットでよくでる単語・表現》

encampment 野営


《日本語訳》

米国ではホームレスの人々数が増え続けており、このペースでいくと米国は今年も過去最高を更新する。
野宿者、路上生活者、避難所などから数えると、その数値は2023年から大幅に増えていることが、ウォールストリート・ジャーナルが収集・調査した予備データで分かった。
この数字は、都市部、大都市圏、広大な地方を網羅する250以上のホームレス支援団体から寄せられたものだ。これらは今年初めのある夜のホームレスの状況を反映したものだ。ウォールストリート・ジャーナルの集計では、これまでに約55万人のホームレスの人々が含まれており、これらの団体が昨年報告した数より約10%増加している。

関連:About 45% of Americans will run out of money in retirement, including those who invested and diversified. Here are the 4 biggest mistakes being made 

関連:The Job Market is Weakening. So Why Are Fewer People Filing For Unemployment? 

関連:Argentina poverty rate soars to nearly 53% in first half of 2024 



【米国の原子力発電所では、テック大手のAI野望はすぐには実現しない】
(9/28:参照)US nuclear plants won't power up Big Tech's AI ambitions right away 
Constellation Energy and Microsoft plan to restart the Three Mile Island nuclear plant, hoping they have scored a quick source of enough climate-friendly energy to power rapidly expanding data centers for artificial intelligence (AI).
U.S. power generation capacity through the end of the decade could rise by about 2.4% to 2.7%, according to an analysis of the most recent available U.S. Energy Information Administration (EIA) data, from late 2022. Data center power use is expected to more than double by 2030 to consume about 9% of all the country's electricity.


《マーケットでよくでる単語・表現》

score 得点する

on、by、with、ofなど、前置詞の用法については多くの英文に親しむことで習うより慣れてください。


《日本語訳》

コンステレーション・エナジー社とマイクロソフト社は、スリーマイル島原発の再稼働を計画している。急速に拡大している人工知能(AI)のためのデータセンターへの電力供給源として、気候変動に配慮したエネルギーの手っ取り早い供給源を期待している。
2030年までの米国の発電容量は2022年末から約2.4%から2.7%増加する可能性があることが、入手可能な最新の米国エネルギー情報局(EIA)データの分析で分かった。データセンターの電力使用量は2030年までに2倍以上に増加し、米国内全電力の約9%を消費すると見込まれている。

関連:AI’s Power Needs Haven’t Boosted Offshore Wind, Orsted Says 

関連:The Two Big Insurers Still Betting on Fossil Fuels 

関連:How a Storm Like Helene Transforms Into a Monstrous Hurricane 



また、来週!

 



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・ほとんど誰もが幸せになれない税制

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☆ほとんど誰もが幸せになれない税制

所得や資産がどれくらい平等に分けられているかを可視化する「ジニ係数」が、日本でも過去最大水準となっている。これは国際的に使われている「貧富格差」の指標で、この数値が一定水準を超えると社会が不安定になり、騒乱などの危険が高まるとされている。

ソ連崩壊前のロシア共和国のジニ係数は「騒乱警戒」水準だったとされるが、ジニ係数がまだなかった革命前夜のロシア帝国における貧富格差は、実際に農奴の集団が地主たちを襲撃する水準だった。つまり、思想信条や政治体制を超えて、貧富格差が社会を不安定し、政府を転覆させると言えるのだ。

こうした貧富格差は後進国や権威主義国にだけ生じるものではなく、例えば民主主義国米国の現在のCEOの平均報酬は従業員の200倍を超え、その格差は騒乱警戒水準に達している。こうした貧富格差の拡大が全米各地での暴力行為の増加や、トランプ支持に繋がっているという観測も出ている。

インフレも貧富格差に追い打ちをかけている。世界的に毎日のように新たなビリオネア、ミリオネアが産まれている一方で、先進諸国でも貧困層が騒乱警戒水準にまで拡大し続けているのだ。

私はそうした貧富格差が生じる主因を税制に見ている。例えば米のCEOたちが会社の利益を独り占めにすることで高額の報酬を受け取っても、そのほとんどを税金に持って行かれる税制ならば、利益を従業員と分かち合ってその士気を高めた方が合理的だとなるからだ。

どんな富豪も、その富の源泉は「社会」だ。社会が欲する製品やサービスを提供することで富を得るが、社会がなければその富も何の意味も持たない。その意味では、社会から最も恩恵を受けてきた富裕層が、累進課税によってそうした恩恵に正当に報いることは合理的なことなのだ。現状のように非社会的と言えるほどになった富の偏在は、ほとんど誰も幸せにはしない。

日々の食べ物にも困る人々が増え続けている一方で、その富をどう使っていいのかを見失う人々もまた増え続けている。また、その「富の使い方を指南する」アドバイザーたちも跋扈している。そして少なからずの人々がそうしたアドバイザーや詐欺師たちの被害者となっている。馬鹿げた風潮だ。

昭和時代の高額所得者の方がはるかに多くの税金を納めていたが、今よりも幸せだったのではないだろうか?
参照:主要国における所得税率の推移の比較


以前、高額の宝くじに当たりながら、その全額を寄付したというエピソードに触れた記憶があったので、私が書いたものを検索したら、10年前のコメントが出てきた。投資やお金について対話形式で書かれている。


(引用ここから、URLまで)

・株式投資は儲かるか?

K:30年以上の投資運用の経験がおありだとのことですが、ずばり、株式投資で儲かりますか?
Y:私が現在行っているような、ゆったりとしたペースでも、そこそこのプラスは継続的に維持できますね。

K:大儲けはできない?
Y:一か八かの方法で、リスクを大きく取れば、その分リターンは大きくなります。でも、この年になると、大儲けが果たしていいかどうかは分からないんですよ。

K:と、言いますと?
Y:昨年のクリスマス前に、カナダで宝くじに当たり日本円相当で39億円を手にした人が、全額寄付したというニュースがありました。

K:全額ですか?
Y:そのようです。何でも、子供や孫もいて、当面は暮らしに困らないだけの蓄えがあるから、大金を手にして、今の環境を変えたくないと思ったようです。最も活きた資金の使い道は慈善事業への寄付だと。

K:すごいですね。お金では幸せにはなれませんか?
Y:私は自分の周りや、かっての仲間たちの境遇を見て、かえって難しくなると思っています。お金があっていいのは、ランチに1コイン500円しか使えなかったのが、1000円使えるようになるようなこと。それも慣れれば、2000円のランチコースが、5000円になるだけのこと。5000円のランチコースならもう十分で、それ以上になってくると、昼間からのビッグランチか、希少価値を求めてゲテモノに近くなるだけです。また、そんな人に手料理でもてなすことができますか? ささやかな気持ちや好意が、大金の前ではかすんでしまうのです。

本人にとっては、時々の贅沢だから幸福感を味わえるので、贅沢が日常となれば、かけがえのないものでしか幸福感は得られない。ところが、かけがえのないものは、お金とは関係がなく、むしろ少ない方が得られやすい。

K:難しくなってきましたね。
Y:済みません。つまり、お金があると選択肢が増える。ところが、自分の身体、自分の人生は1つしかない。選択肢は迷いを生むだけで、しばしばかけがえのないものを見失ってしまうのです。私は、1つのものを継続的に、かけがえのないものと大事に扱うことが、幸福への道だと思っていますが、お金があると同時に100も買えてしまうのです。

K:何とか分かりました。100も選択肢があると、あれも欲しいこれも欲しい、あれもしたいこれもしたいで、自分が本当に欲しいもの、したいことが分からなくなってしまうと、つまり、自分を見失ってしまうということですね。
Y:その通りです。結果として、自分にとって最も大切なはずの、かけがえのないものに気付かなくなる。

K:では、Yさんも、39億円当てれば、全額寄付してしまいますか?
Y:私なら、宝くじは買いませんね。

K:どうしてですか? お金で幸せになれないとしても、寄付すれば役立つ人がいるのではないですか?
Y:そこがお金の難しいところだと思います。親父が大金を手にしたなら、子供や孫たちが地道に働く意欲をなくすこともあります。努力よりも、お金で何かを手に入れたいと思うこともあるかもしれません。けれど、人生は長いので、若くしてイージーマネーを手にすると、先に触れたように、自分を見失うことにもつながりかねません。また、親父が子のためにと出し渋れば、ケチだ、ずるいと、反抗します。出してやっても、余るほどあっての一部ならば感謝されません。

また、年齢がいくと、お金で得られるものよりも、得られないものが本当に欲しくなる。多くは叶えられないのですが、お金がなければ日々の生活や仕事に追われて、嘆く暇もない。そのうちに何となく納得してしまう。そんな時に、時間とお金が十分過ぎるほどあって、得られないはずのものを無理に求め続けると碌なことにはならないと思います。

とはいえ、本当にお金が必要な時が来ないとは誰にも言えません。子供や孫の人生の岐路や、命に関わるような一大事に、お金が大いに役立つことは十分に考えられます。そんな時に、「あったはずの39億円」は重くのしかかってくると思います。親父が全額寄付した時の判断が責められるのです。子供や孫だけでなく、親戚や友人でも、本当に困った時には、「あのお金があったなら」などと思うかもしれません。恐いことです。

では、一部残しておけばいいかとなると、将来何が起きるか分からないので、少しでも多くとなります。そして、人生が複雑になってしまいます。

K:では、ハイリスク・ハイリターンでは、持ち金を失くしても、大金を手に入れても、どちらもつまりませんね?
Y:波乱万丈で、刺激的な、そして孤独な人生を望むならば、それもいいでしょう。


・それでも投資運用は必要か?

K:Yさんは30年以上投資運用をやってこられて、大金はいらないとおっしゃる。それでも、投資運用は必要だと思われますか?
Y:私は、金融市場、なかでも株式市場は世の中で最も素晴らしい発明品の1つだと捉えています。そして、自分の力でお金を増やす努力をすることは必要だと思います。

K:どういうことですか?
Y:世の中で最も素晴らしいものの1つだと思うのは、欧州15世紀に株式市場が発明されたことによって、それまで富を独占していた王族、貴族、教会などから、一般市民がリスクさえ取れば、リターンという富の分配に預かれるようになったことです。大航海時代のベンチャーに市民も参加できたのです。それが中産層の台頭、ひいては市民革命、民主主義に結び付いたと考えています。

また、2013年発表のギャラップ社の全世界の労働者調査では、日本では幸せを感じている従業員が7%。69%は意欲がなく、24%は仕事が嫌いだったようです。ポイントは、人に指図される仕事ではなく、自分から能動的に挑戦するような仕事であれば幸せを感じるようです。つまり、最悪なのは、命令された目先の仕事を黙々とこなすだけの仕事で、しかもそれが何の目的か、どのような成果を上げているかも知らされず、評価もされず、おまけに命令がころころ変わるような仕事です。

K:ひどい仕事ですね。
Y:それが最悪で、最良は経営者に近い仕事です。人に指図される仕事ではなく、自分から能動的に挑戦するような仕事とは、そういうことですよね。自己の裁量権が多ければ多いほど、やりがいもあれば、面白さもあるということです。働くことに幸せを感じるのです。

K:でも、誰でもが社長になれるわけではないですよね。
Y:その通りです。人生では自分が自分の社長なのですが、多くの人が集まっている会社では社長は1人だけです。ところが、会社経営に非常に近いのが、株式投資です。

K:株主になるからですか?
Y:欧州の大航海時代に発明され、発展した株式会社や株式市場は、事業家とリスクとリターンを分け合うということで、シェアと呼ばれました。また、株分けの株、ストックです。同等の意味のエクイティです。社長はむしろ雇われで、株主、株式投資家の方が自由度が高いのが株式の歴史です。投資家は取ったリスク、つまり支払い金額に応じて、配当や分け前を得ることができるのです。

実は、雇われでなくても、事業経営よりも株式投資の方が、自由度が、つまり、自己の裁量権が大きいのです。事業経営には実務があります。顧客や従業員、株主がいます。監督官庁の指導や要請によっても、裁量権は大きく規制されています。もっとも、投資家の裁量権は出資と利益享受の面だけに限られますが、その事業を見限ったところで、損益は自分だけのところに留まり、誰にも迷惑をかけません。

また、実際の事業経営には、当然より多くの資金が必要です。株式投資を会社経営の利益に関する部分だけの真似事だとして、資金がいくら必要かご存知ですか?

K:最小単元株ですね。トヨタであれば100株で株価が5425円とすると55万円が必要ですね
Y:最低投資金額で言うと、東証1部上場銘柄を含め1万円以下で買えるものが50銘柄ほどあります。もっとも、50万円で10%値上がりすれば5万円ですが、5000円だと500円です。リスクを言えば、10%値下がりで500円、会社が潰れても5000円の損失ですから、練習にはいいですよね。それでも株主には間違いなく、株主総会の案内も来ますよ。

K:5000円で東証1部企業の株主ですか?
Y:その位、ハードルが低いという意味です。とはいえ、本気で株式投資を習得するためには、多少はドキドキする金額でないと、効果が薄れるかと思います。練習ではできても、大舞台ではできないということもありますしね。また、資産を守るという面では、もう待ったなしの時代になってきましたね。


・リスクを取り始めた政府・日銀

K:株式投資を始めるのは今でしょ! ですね。
Y:今でしょ! は去年だけではなく、いつの時代にも当て嵌まります。日本株の大底からの反発は、米国で2012年10月から突如始まった債券から株式への大移動を受けた海外勢の買いによるものですが、同年12月26日に安倍内閣が発足したことで、安定政権、アベノミクスによる異次元緩和が後押しした形となっています。

そのアベノミクスはインフレ率2%を目標としています。このことは、年率2%以上のリターンがなければ資産が目減りし、毎年2%以上の所得増がなければ生活費が圧迫されることを意味しています。加えて、財政再建を謳った増税等の国民負担増は、負担増を相殺するためだけでも毎年0.85%の賃上げが全企業平均で必要だとされています。その賃上げ幅は元の給与水準が低い中小ほど高率が必要となるので、インフレ率と合わせて毎年3~4%以上の賃上げ幅は相当なハードルだと考えていいでしょう。

このままでは資産は目減りしていきます。インフレ目標の2%が達成されたなら、預貯金は毎年2%ずつ減っていきます。仮に金利1.0%の10年国債に1億円投資して、インフレ率が2.0%だとすれば、1年後の年間利息100万円は税引き後実質78.4万円に、そして毎年、76.8万円、75.3万円、73.8万円、72.3万円、70.1万円、69.4万円、68.1万円、66.7万円、65.4万円にと利息が目減りし、10年後に戻ってくる元本1億円の実質価値(購買力)は8171万円に目減りします。
ところが、実際の10年国債の利回りは1.0%もなく、先週末で0.59%でしかありません。そこに増税や社会保障費負担などが加わるのです。

K:公共投資などの財政政策を期待しようにも、そもそも財政が大赤字だから、増税ですからね。また、賃上げは企業次第、厳しいところも多いでしょうしね。
Y:そして、実際に資産が目減りしたり、追い詰められたりすると、政治家が悪いとなる。また、賃金が上がらないと、会社が悪い、社長がケチだと愚痴る。では、自分自身は悪くなく、被害者なのかと。

K:その政治家を選んだのも自分。会社を選んだのも自分、、、ですね。
Y:とはいえ、どの国も、どの会社も似たようなもので、それが世の中のシステムと言ってもいいかもしれない。そういって、諦めて生きるのも自分。何か自分でできることがないかと考えるのも自分です。

K:何か自分でできることはありますか?
Y:もちろん、あります。インフレ目標の2%アベノミクス対策とすれば、インフレヘッジになるものを保有することです。金融緩和による資金供給がインフレに結び付き、尚且つ賃上げにまで結び付くには時間がかかります。異次元と呼ばれる、前代未聞の大量供給ですら、半年、1年かかりました。その点、資産インフレは早く来ます。実体経済全体のモノやサービスは「重い」ので、1%、2%の上昇にも時間を要しますが、資産はより「軽い」ので、もっと早く上昇します。なかでも供給量がしれている株式は軽いのです。

K:それで、インフレ率が1%上がる間に、日本株は2倍近くにも値上がりしたのですね。
Y:そう見ています。そして、その資産効果が実体経済を押し上げ、賃上げにもつながっている。金融緩和の効果が最も直接的に表れるのが株価です。

K:そこで疑似会社経営としての、株式投資ですか?
Y:政府・日銀がリスクを取り始めました。国がリスクを取ると、リスクは国民1人1人が負担することになりますが、リターンが平等に分配されることは、まずありません。国と同じようにリスクを取らない国民が割を食う事になります。

投資運用はきちっと学べば、経験を積むことでうまくなるんです。誰でも何でも1万時間かければものになると言われています。投資運用も例外ではありません。毎日朝から晩までトレードするプロにとって、1万時間は2、3年で来てしまいます。ところが、多くのプロは半年、1年位で消えていきます。投資の仕方を掴む前に消えるのです。しかし、繰り返すことでうまくなるような投資の仕方があるのです。

K:私にもできますか?
Y:誰にでもできます。例えば、1万円以下の株を保有し、1日3時間相場のための勉強や情報収集に時間を費やせば、9年余りで1万時間に到達します。その時点になると、プロで1年間トレードしましたという人よりも、はるかに上手くなっているはずです。上達してきたと感じれば資金を増やせばいいだけで、初心者が無理することはありません。

K:そう考えれば、ハードルは案外低いものですね。
Y:何もせずにじわじわと追い詰められ、社会を呪うのも自分。着実に投資運用のスキルを磨いていくのも自分なのです。成長期には政府が資産倍増計画を立てました。少子高齢化時代に資産倍増を計画できるのは国民1人1人だけです。インフレ政策のもとで、安定的に資産を減らしていく自分を選択するか、不確実だが資産倍増に向けてリスクを取る自分を選択するかです。投資運用の知識とノウハウ、経験で、当初不確実だったものが、だんだん確実性を高めていく実感が得られるかと思います。

参照:リスクを取り始めた政府・日銀(2014-03-23)


この見方は今も変わらない。あるいは、私が10年前からほとんど進歩していないのかも知れない。進歩と言うならば、世界的な貧富格差の拡大の主因が税制にあると結論付けたことだ。少数の人が大金を「独り占めできる」一方で、日々の食事にも困る人々が増え続けるような税制はおかしい。そして上記の引用コメントで述べたように、そうした大金は人をむしろ不幸にするとすれば、どうして現状を維持する必要があるだろう。

一般の人々が忠実に税金や社会保険料を納めている一方で、富裕層への課税を強めると、低税率を求めて海外移住が増えるのではないかと言われている。米国での例だが、「急増する米国の富豪、大統領選次第では『外国移住』が加速か」とのメディアの見出しを目にしている。

そうした欲得だけで居住地や国籍を変えたい人はそうすればいい。それもその人たちの人生だ。何を幸せかと感じるのもそれぞれだ。しかし、彼らの富は多くの人々が貧困層に落ちるような社会から、実際にその人たちからも与えられたものなのだ。貧しい人たちもモノやサービスを購入し消費税を支払っているのだから。そうした不合理を是正するのは政治家たちの役目だ。

「ジニ係数」が、多くの国々で騒乱前夜にまで高まっている。日本でも過去最大水準となっている。総裁選や党首選に臨んでいる候補者たちには、それらの事実から目を背けないでいて貰いたい。

 

 


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・Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・Quiz Book:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?: 57 questions to reveal the problems of the Japanese economy (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

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