彼が一つ年を取り一つだけ私に近づいた。
一歳くらいどうってことないくらい
私たちの年は離れているのだけれど。
私が学生時代によく聴いた懐かしい歌を
彼は知らないと言う。
彼が学生時代によく聴いたという歌は
私にとってはつい最近の歌だ。
普段あまり年の差は感じないがこういうとき
ジェネレーションギャップだな、と思う。
私たちはデートの大半を車の中で過ごした。
ナイショで乗り込んだ営業車だったり
彼の車だったり。
流れているのはいつもケツメイシだった。
彼が好きな歌の一つに『幸せをありがとう』がある。
とてもいい歌だけど私はこの歌が嫌いだった。
なぜならこの歌は結婚式の日に新郎が
新婦に向けて歌う決意の歌だ。
彼は誰のことを想いながらこの歌を聴くのだろう。
最初のうちはじっとこの歌が終わるのを待った。
でもいつからか私はこの歌を飛ばすようになった。
私はこうやって少しずつ彼を独り占めできない
さみしさを募らせていたのだろう。