鹿児島市のかごしま水族館でイルカ調教師を務める大塚美加さん(34)が、21日午後4時からの「イルカの時間」に初めて手話通訳を付ける。1日3回開いているイルカの生態を学ぶイベント。今のところ1度きりの取り組みだが、同館の荻野洸太郎館長は「スタッフの人数など問題もあるが、若い職員が中心となって手話を学び、定期的に実施できるようになればいい」と話している。
大塚さんはもともと手話に興味があり、宮崎大に在学中学んだ経験もある。同館には聴覚障害のある来館者も多いため、「もっと手話で話せるようになりたい」と2004年から再び、姶良町の公民館で町民向け手話講座を受講し始めた。
今年3月ごろ、「イルカの時間」で観客の前に立ち案内役を務めていたとき、隣に座る母親に「何と言っているの」と必死に手話で訴える1人の女の子が目に入った。同じころ、イベントを見ていたろうの女性4人が、説明が分からなかったのか途中で席を立ってしまったことがあった。「ショックだった。何もできない自分が悔しくて」。大塚さんは早速、館に手話付きイベントを実施することを提案、実現にこぎ着けた。
「イルカの時間」を手話に訳す作業はNPO法人「デフNet.かごしま」の澤田利江理事長らが担当。澤田さんがイベントの台本をすべて手話で表現し、その様子をビデオに記録。大塚さんはビデオを自宅に持ち帰って何度も練習を繰り返し、1カ月ほどかけて約20分間の手話のセリフをマスターした。
「手話付き『イルカの時間』を定期的に続けていくにはまだ態勢が整っていない。それでもまず始めることに意味があると思う」と大塚さん。熱意は波及し、他のスタッフの中にも日常会話を学び始める人が出てきた。「これから大きな輪になっていけばいいと思います」と笑う。
21日は澤田さんが主宰する「デフキッズ」に通うろう児童・生徒ら約20人なども来館し、イルカとのひとときを楽しむ予定。
http://www.373news.com/2000picup/2005/08/picup_20050820_5.htm
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