シーズン1-5 ビッグバレー号の遭難 | ベーリング海スーパースター列伝

ベーリング海スーパースター列伝

ディスカバリーチャンネルで放送中の『ベーリング海の一攫千金』に登場する、命知らずのカニ漁師達にスポットを当てたブログです。

広大なベーリング海
およそ260万平方キロに及ぶ世界でも有数の荒海です
そこはカニ漁の危険な主漁場
重い漁具
荒波
厳しい天候はすべて危険要因です
1月 ズワイガニ漁の季節
気温は下がり
海はさらに荒れます
危険も高まります
ケガはつきものです
平均死者数は毎週1名
アラスカでの過酷なカニ漁は
命を懸けた戦いです


 
”シグ ノースウエスタン号”

 
”ジェフ ビリキン号”

 
”リック/ドナ マーベリック号”

 
”ピート レディアラスカ号”

 
”ジム レトリーバー号”

 


 
前年10月のタラバガニシーズンを終え、しばしの休憩を経て、男たちが1月の極寒のアラスカ・ダッチハーバーに戻ってきた。

 
番組では紹介されないビクセン号。

3600万ドル(約36億円)相当のズワイガニを求めて。
 

しかし10月のタラバガニ漁より更に危険なベーリング海。

 
「安全第一だ どんなに稼いだって死んだらおしまいだ」

出港を明日に控え、皆準備にあわただしい。

レディアラスカ号(以下LA号)の船長、ピートは、姉妹船ビッグバレー号(以下BV号)のゲーリー船長と戦略を練っている。
  
ピート船長は初出。
ビッグバレー号のゲーリー船長はシーズン1-2で救命スーツの説明でプチ出演してくれている。

船長には単独漁を好む者もいるが、大体が他の船長と協力して行動エリアを決め、そこで大漁となれば姉妹船を呼ぶ、というような「ハズレの少ない」漁をすることが多い。
船の維持費・燃料代・船員への報酬など、漁期が短いことも併せて非常にリスキーであるのでなるべく確率を上げようという考えに基づいている。
またアクシデントがあった時など、姉妹船との協力は不可欠であるし、なにより孤独で危険なベーリング海相手では心強いものであろう。

特にこの年まではヨーイドンのタイプの漁で、漁期は5日。
どの船も失敗するわけにはいかない。
(ちなみに翌年より各漁船ごとに水揚げ割当量が定められ、漁のペースは各漁船それぞれが決めることができるようになった)

ピートとゲーリーは他の5隻と協力して漁に挑むこととなった。

マーベリック号(MV号)のリックは、コーネリアマリー号(CM号)のフィル船長と相談中。
  
リック船長は奥さんのドナと船を切り盛りしている。
一般的に漁船に女性を乗せるのは縁起が良くない、とされているがリックは気にしないのだろう。
奥さんのドナは炊事担当。
そしてこの『ベーリング海の一攫千金』のもう一人の主人公、フィル・ハリス船長の初登場である。
シーズン1ではレギュラーではなく、あくまでMV号の姉妹船としてのポジション。
シーズン2以降、ドラマよりもドラマティックなフィル船長の物語がつづられていくが、それはまた後日。

今季のズワイガニの漁獲割当量は9000トン。

大漁のエサを積み、準備も大詰め。
  

リックの奥さんのドナは食料の買い出しへ。
  
「皆 いい人だから つい甘やかしちゃうの
彼らの食べたい物は なんでも用意するわ」

おびただしい漁の食料。
 
2819.14ドル。
30万円近い金額・・・

ノースウエスタン号(NW号)も準備中。
  
漁業省の役人が船を検査。
「今から魚倉の検査だ
中にカニが入っていないことが確認されたら
出漁の時間まで町を出られない」(エドガー)


ここでアクシデント。
エサが冷凍焼けしており、使えないと判断して3トン全て積み替えする羽目に。
  
そして準備が完了し、牧師を招いて祈祷。
 


過去15年で67名の漁師が命を落とした。

LA号のピート船長は牧師でもあり、自ら祈祷。
  
「とにかく皆で全力を尽くそう
そして安全第一で臨もう
神よ 我々全員の安全をお守りください
また来年も ここに戻ってこられるように
どうかお守りください アーメン」


1月13日、170隻、853名の漁師が出港した。
 


 
ズワイガニエリアは上のマップの緑の円内。

MV号は姉妹船CM号の近くで漁をする。
そしてNW号は単独でロシア領付近まで北上するようだ。

LA号は遅れて出船(午後5:49分)した。
そして嵐の接近を無線で聞くことになる。

各漁船は約2日かけて漁場へ向かう。
道中、ダッチハーバーの北西430キロのセントポール島には沿岸警備隊の基地があり、24時間体制で事故や遭難等の救助要請に対応している。
  
  
  
 
沿岸警備隊のヘリはブラックホーク(ジェイホーク)、長距離仕様の1機12億するヘリである。
装備も専用で、遭難救助衛星(イーパブ)の信号も受信できる。
イーパブはどの船にも搭載されており、船の位置と名前を暗号化し常時衛星に情報をおくるもので、このイーパブが水没するとその信号が沿岸警備隊へ送信される。
  
イーパブの説明をしてくれるBV号のゲーリー船長。

また警備隊員は過酷な訓練を繰り返し行い、遭難者の救出任務にあたる。
彼らのおかげで毎年14人ほどが死の淵から生還できるのだ。

ピート船長はクルーに伝える。
「船のことはいいから 助かることだけ考えろ」
そのLA号に問題発生。
配電盤の不具合だ。下手すれば火事になる。
  
ピート船長は港へ引き返すことにした。
 
「船が燃えるよりマシさ」(カイル・ロバートソン)

ダッチハーバーへ帰港し、電気技師と相談の上、ブレーカーをバイパスすることで応急処置をとった。
修理は2時間で済み、午後10時、再出港。

1月14日、MV号のリック船長は過去の航海日誌をもとに漁場を決めようとしていた。
 

ズワイガニはキロ4ドルで取引され、タラバガニより深海で群れで生息している。
 

ベテランクルーのハイラムは嵐に備えてカゴを点検中。
 
「皆は怖がって嫌がるが
俺は危険なスリルを楽しんでいる
カニ漁は誰にでもできる仕事じゃない
今までに何人も辞めていった」

そんなハイラムも仲間を亡くしている。
彼の親友のクリスは1998年に、そのクリスの弟テリーも2003年のタラバガニ漁で落水して死亡した。
  
その遺体引き揚げにシースター号(SS号)のラリー船長は立ち会うこととなった。
ハイラムは語る。
 
「テリーの死で気付いたよ
俺は死なないと うぬぼれていたが
ヤツが死んで 人ごとじゃなくなった 目が覚めた
毎日ヤツのことを毎日思ってる」


MV号から北西230キロのNW号。
天気予報で嵐の接近を知る。
カゴをそのままにしていれば、カゴが氷結し、15トンもの荷重が甲板にのしかかる。
嵐による転覆のリスクがぐっと高まる。
対処法として、氷結前にカゴを防水シートで包むことにした。
  
  
しかしこれは非常に危険な作業。
エドガーが中心になって作業にあたる。
「俺はあと何回こんな目にあうんだ?」
高速航行中の揺れる船上での作業。船舷の外にも。
映像を確認する限り、なんと命綱は着けていない・・・
嵐に遭遇する前になんとか作業を終えることが出来た。

1月15日午前8時、NW号は漁場に到着。
この日はエドガーの35歳の誕生日。
例年通り、船上で迎える誕生日。


そんな折、沿岸警備隊の無線が入る。
  
『ビッグバレー号のイーパブが遭難信号を発信
船体の色は灰色と白 全長28メートル
遭難船に関する情報を沿岸警備隊まで報告願います
船を目撃したら救助協力を願います』


NW号から現場までの距離は遠く、シグには祈ることしかできない。
 
「イーパブを誤って海に落とすことはよくある だから・・・」
「だから今回も間違いであって欲しい」


修理のため出遅れたLA号のピート船長は、姉妹船でもあるBV号のゲーリー船長に無線で何度も連絡をとろうと試みる。
 
「ビッグバレー号 応答してくれ」
「遭難信号が発信され 応答がない」
「ビッグバレー号は転覆してイーパブが信号を発信したのかもしれない
もしくはイーパブが海に落ちて信号を送っているとも考えられる」

沿岸警備隊との交信でイーパブの発信地は北緯57度14.4分、西経172度22.8分と知らされる。
LA号から発信地までは8時間の距離。
ピート船長はBV号に近そうな船に連絡を試みる。
「シーワイヤー号 誰かいるか? ブレットを頼む」
「そうなんだ 現時点では衛星電話でも彼らと連絡がつかない」
「ビッグバレー号 応答願う」
 
「ビッグバレー号 ゲーリー 応答してくれ」


応答はない。

遭難の知らせはすぐに漁船団へと伝わった。

ビクセン号のショーン船長。
 
「仲間の船が救助に向かっているがこの悪天候だ 彼らも危ない」

ビリキン号の甲板員アンディ。

「分かっているのは彼らのイーパブが信号を発信したことだけだ」

レトリーバー号の甲板員ダヘル。
 
「俺たちの仲間が行方不明だ 探したくてもここからは遠すぎて無線が届かない 雑音がひどい」

ピート船長がクルーに事故を報告する。
皆の表情が一気に曇る。
  
「ゲーリーとは何度もタラ漁に出た
イーパブが流されただけだと信じたいよ
誤報であってほしい 家族が待ってるんだ」(カイル)


牧師でもあるピート船長は祈る。
「主イエスよ 彼らをお助けください
もし無事なら どうかそれを我々にお知らせください
すべてはあなたの御手の中です アーメン」


発信地に最も近いMV号が捜索に向かう。
6キロ離れた地点からだ。
  
 沿岸警備隊からの連絡では、現場には残骸はない、とのこと。
リック船長は甲板にいるクルーにイーパブを見つけるよう船首への移動を指示した。
 
作業灯を消し、闇の中で目をこらすクルー。
イーパブがあれば海面で点滅しているはず。
ちなみにこの辺りでは午前10時を過ぎないと太陽は姿を現さない。

  
 さらに周辺にいた船も捜索に加わる。
9時40分、沿岸警備隊のヘリも捜索に加わった。

10時を過ぎて日が昇ったが、未だ発見できず。

コーネリアマリー号とシーローバー号、アラスカ州警察の船も捜索に加わった。
 
「漁が始まったばかりの段階で イーパブが作動するなんてすごく不吉だよ」(CM号 フィル船長)

10時15分、エサ箱が発見される。
 
さらにもう一つ。
BV号が沈没したのは明らかである。
6名の船員は依然不明。
無事を信じ、救命ボートを探す。
クルーが救命スーツを着用していればいいのだが。
いや、この極寒のベーリング海では、救命スーツを着ていても長くはもたない。
そんな中、MR号のリック船長への無線が。
『ヘリが救命ボートを見つけた』

1月15日午前7時34分、BV号から遭難信号を受信、12時4分にヘリが救命ボートを発見。
 
画面右上の白丸部に救命ボート。
沿岸警備隊が救助に向かう。
 
 
 
確認された生存者は・・・

1名のみ。

甲板員のキャッシュ・スティール。

依然残り5名は行方不明。
生存者の情報では、転覆時2名が救命スーツを着用、2名は未着用、もう1名は不明とのこと。
船長と船員1名は救命ボートの準備中、落水。
 

 
水温3度で救命スーツなしでは10分も生きていられない。
「船長のゲーリーはもう亡くなっているはずだ
遺体が見つかることを祈ろう 鎮魂のために・・・」(LA号 ピート船長)


12時45分 沿岸警備隊が救命スーツを着たクルー1名を発見。
 
  

救助に向かうが既に死亡していた。


 

アラスカには世界中から漁師が集まります
皆 カニ漁の危険さは承知です
この日は少なくとも3名が命を落としました
捜索は続きます



1-6に続く