1888年、ニーチェ発狂前の最後の作品「この人を見よ」を読みました。

訳は西尾幹二さんで、非常に読みやすかったです。

基本的にはニーチェが今までに書いた作品を自ら解説している本ですが、本人の解説なので非常に鮮明で、分かりやすかったです。

ただ、僕の場合元々「ツァラトゥストラはこう言った」を読んでいたので内容は普通にスラスラ入ってきましたが、ニーチェの過去の作品の予備知識が無いと読むのは困難かと思われます。

解説にも書かれていましたが、ニーチェの狂気が時折混ざっており、それでいて狂気が一層ニーチェの思想を鮮明に描いています。

ニーチェ的にはツァラトゥストラがやはり自身の最高傑作の様で、頻繁に引用されています。

神・宗教を偽りと見做し、ディオニソス的、デカダン的な物、要するにアンチクリストを擁護している思想が一貫して描かれていて、その圧倒的な表現力に目を奪われてしまうのは僕だけではないはずです。

「価値の価値転換」…物事を一つの視点からしか見られないのはニーチェの言う「病気」なのかも知れません。

宗教――特にこの場合はキリスト教ですが――に囚われるのはニーチェ的には病気であって、その呪いから解かれる事こそ人間的な精神の自由を取り戻す事ができ、超人への道の第一歩を踏み出す事ができる。

ナチスの出現をあまりにも早く予見したニーチェ。

今のガザ・イスラエルの状況を見ると、ニーチェの言う事が強ち間違いではないかも知れないと思わせられます。

ただ、皆が皆精神の自由を取り戻し、インモラリストになったとしたら、それはそれで世界が混沌へと堕ちていきそうな気がします。

何れにしてもかなり興味深く刺激的な本ですので、お時間があれば是非。