皆さんこんにちは、堅城一兵です。
長く應擧を研究していると、たまに「えっ?」っと驚く発見があります。
以前見た絵と同じ構図の物と出会う事があるからです。
実は、それは日本画の描き方と関係があるんです。
西洋の油絵と違って、日本画は上から塗り重ねが出来ません。
なので、襖絵などは一発勝負です。やり直しはききません。
應擧の場合、依頼者から絵の注文が来ると、
①絵の構想を練った上で、小さい半紙くらいの大きさに描きます(小下絵といいます)
②小下絵を基に実物大の絵を描きます(下絵といいます)
③そしてようやく襖に描くのです(本画といいます)
もちろん、写生を基とした應擧ですから、膨大な量のスケッチ画が残っています。
きっとそれらの中から選んで構想したのだと思います。
さて、小下絵は使うのが一度限りとは限りません。
その象徴的な例を紹介します。
應擧作の郭子儀図です。
左は東京国立博物館、三井文庫所蔵の物、右は香住大乗寺所蔵の物です。
着物の色こそ違いますが、全く同じ構図であることが分かりますね。
郭子儀(697~781)は、中国唐の時代の武将で政治家でもあります。
玄宗・粛宗・代宗・徳宗の4代に仕えたと言われています。
徳に富み、また柔和で子だくさん、孫も多くいた事から、
子孫繁栄の象徴的な武将だったのでしょうね。
大乗寺に於いては、本来ならば四天王の内の増長天の建てられる方角に
郭子儀が描かれています。
應擧は東西南北の角に四天王像を置く代わりに、
それぞれの方角に四天王を彷彿させるような絵を配置する事で、
寺全体を立体曼陀羅のように見せています。
いわば現在のインテリアデザイナーのような感じでしょうか。
という訳で今日はここまで…次回をお楽しみに…